第六話 ぶっちゃけ女子はイケメンとコンパしたいの!
「ちょっと、待て…… ひょっとして加納とは行くとか?」
「うっ……」
そ、そうなのか!?
「バレちゃったか…… そうよ、加納君と行くのよ。女子がひとり減ったから。人数の関係でね。すまんっ」
「おかしいだろ。最初は俺に声かけたんだろ。たまには同期でって」
「だって、加納くんと間下くんと坂本くんも来るんだよ。そりゃ、あんたが抜けるでしょ」
「どういう意味だよ」
「聞かない方がいいと思うな~」
「言えよ」
「イケメン順ってことよ」
「な、なにそれ!?」
「だいたい、あんた、飢えてる感があるのよ。ちょっとキモいし」
「キ、キモいって、それがコンパに誘っておいた奴に言う言葉かっ!」
「いや、親切心で言ってあげてんじゃない。この3人にあんたじゃ、どう考えても、そこだけハズレくじ的な感じになっちゃうでしょ」
「ハズレくじ的な感じってどういうことだよ! ひでーよ。失礼過ぎるだろっ。幹事の俺を外すって」
「あーウザいウザいウザい。いっそ、あんたが宇宙人に連れ去られちゃいなさいよ」
「なっ、なに、その言いぐさ」
「長谷川、俺と仲良くなりたくなかったんじゃねーのかよっ?」
「はあ? バカじゃない。1ミリもないわ」
「じゃあ、誰が俺と仲良くなりたかったんだよ」
「いやいやいや、そんな女の子いないし」
「ダシに使われただけかよ」
「そこのところは私の口からは言わないでおくわ。最低限のマナーとしてね」
「ひっ、ひでえよ。だいたい加納なんて顔だけじゃないか!」
「顔だけじゃないわよ。背も高いし、スタイルいいし、それに、やさしいし。笑顔がいいし。全部いいわよ」
「俺だって、人のいやがる仕事引き受けてるし、意外に物知りだし、だいたい中身があるよっ」
「うわ~」
「俺がモテないのは俺が悪いんじゃないっ。俺を好きにならないうちの会社の女が間違ってるんだ!」
「あー、もう、はいはい、こいつ完全病気だわ」
「そんななら、俺に言わず直接、あいつだけ誘えばよかったろ」
「それができないのが女心じゃない~」
人の気持ちを踏みにじっておいてなんにが女心だよっ。
「金曜日のために新しいスーツとシャツとネクタイだって買ったんだっ。投資した分返せっ!」
「あんたの、その気合いの入れようがキモいわっ! あんたね、女の子が嫌いなタイプってわかってる。ダサいこ、空気読めないこ、めんどくさいこ。あんた、全部当てはまってんじゃないっ! ズバリ言わせてもらうけど、あんたはねえ、非モテなの。たしかに、最初に声をかけたあんたに黙って三人同士で飲むのは罪悪感がないでもないわ。でも、それも、あんたを傷つけないための配慮でしょーがっ!」
「さんざんダサいだのなんだのって、とっくに傷ついちゃってるんですけど!」
「いい夢見られたんでしょ。それで満足しておきなさいよ」
「くそっ、絶対、俺もコンパに行く。行かせてもらう!」
「あんたねっ、三人のイケメンに一人だけブサイクが混じってどうなるってーの?」
「だったら俺が加納のお面かぶって参加してやるよっ! 顔写真を拡大コピーして」
「バカなんじゃないっ! 死ねっ!」
「くうううっ」
「いいっ。ぶっちゃけ女子はイケメンが好きなの。イケメンとコンパしたいの!」
救いようのない事実を言うんじゃねえよっ!
「ひ、開き直りやがったな。くそ、金曜、加納に残業させてやるよ。奴はぜえったいっにコンパには行かせんっ! 非モテの呪いを思い知らせてやるっ」
パンッ!
「ひっ、たっ叩きやがった」
「はっ、初めて女子に頬をぶたれるのは彼女にヤキモチ焼かれてって決めてたのにっ……」
「哀れね…… もっと自分のこと理解しなさいよ。あんたはねえ、モ・テ・な・い・のっ!」
き、きっぱり言いやがった。
「あの、もう行っていいかな。あたし、とってもいそがしーんですけど」
彼女はきびすを返して肩で風を切って去っていった。
く、くそお、俺がイケメンじゃないってことくらい分かってるよ。そうだよ、非モテだよ。でも、分相応に「楽しくやってこいよ」っていい人を演じたらよかったのか? そういう時だってあったさ。でも、それじゃ、いつまでたっても彼女なんてできないじゃん。
「あは、あはは…… あれれ、ビルの中なのに雨が降ってる。前が霞んでなにも見えないや……」