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第五話 長谷川未理緒は急に都合が……

 加納の資料づくりの手伝いは長くなりそうだった。自販機コーナーで缶コーヒーでも買ってじっくり取り組もうと9階に降りる。廊下で偶然見かけたのは、その活発で面倒見のよい美人、長谷川未理緒だった。同期の男子の間でも人気が高い。実は彼女と飲みに行くことを同期の棚木に自慢していた。


「あ、ねえ、長谷川さん、今度の金曜日の話しだけど」

「うあっ、出河っ」彼女は驚いた顔をした。


「待ち合わせとかどうしようか」

「あ、ああ。……出河君、それなんだけどさ…… ごっめ~ん、金曜日、急に都合悪くなっちゃってさあ」


 ツゴウガワルクナッタ……? 言葉の意味が頭の中に入ってこない。

「ごめんね~。そういうことで飲み会なしだから」

「うえええっ!!!」


「そ、そんな驚かないでも……」

「なっ、なんで? なんで都合悪くなったの」

「え、え~と、その、あ、そうそう、小岩井真奈ちゃん、なんか、おじいちゃんの従兄弟だかなんだか、親戚に不幸があったみたくって」


「な、なんか、その微妙に遠い親戚に関するフレーズ、ちょいちょい聞いてるような気がするけど、そうなの? あ、で、でもさ、小岩井ちゃんだけ欠席ってことで飲み会の方は予定通りってことに……」


「い、いや~、あ、そうだ、佐野えれんちゃんもさ、体調不良で来れないかもって」

「体調不良って? 昼休み32階のカフェテリアでハジけてたような気もしたけど…… どこが具合悪いの?」


「たしか、靴擦れがひどいとかなんとか」

「く、靴擦れ!?」


 なんか変だ。

「じゃ、長谷川さんは? 三人同士が無理なら、いっそ僕ら二人だけで飲みに行くってのも」


「わ、わたしっ!? い、いやあ、わたしは、ほらドラマ見ないといけないし。あの、怒りん坊将軍」

「え、時代劇なんて観るんだ? でも、それ木曜日じゃなかったっけ」

「あ、録画してあるのよ」

「ろ、録画っ?だ、だったら金曜日じゃなくても」

「い、いや~、そ、そうよねえ、あはは」


 猜疑心にまみれた視線に居心地の悪さを感じたのか、彼女が宙を見つめた。


「そう、あれだ、ほら、UFOだわ、UFO。金曜日なんかに夜遅く出歩いているとUFOに連れ去られちゃうかもしれないでしょ」

 ぽんと手のひらを打つ。それってグッドアイデアってポーズだよね?


「いや、だって、あんたUFOの話ししてたじゃない。そうだっ、星座占いで不思議なものに出会う可能性大ってあったのよ。わたし射手座だから」


「俺だって射手座だよ」

「うえっ。いっしょ? キモっ」

「キモってどういうことだよ」


「あーもうダメだわ、ぜったいみんなでUFOにさらわれるわ。こりゃ、やめといたほうがいい」

「いや、UFOとコンパはぜんぜんっ関係ないしっ」

「いい、キレイどころの女子三人が消えちゃったら会社の好感度にとって多大な損失でしょ。これは中止ね、中止」


「なんか、嘘っぽい……」

「な、なに言ってんのよ」

「今、思いついたような言い訳じゃないか」


 このヤオヨロズふぉれすと近辺でここ何年かUFO騒ぎがある。彼女の視線の先には町おこしのための市役所のUFO写真コンテスト募集ポスターがあった。

 くっ、ほんとに今思いついたんじゃねーか。


「いつもUFOとか言ってんじゃん。なに? 今度は書庫にスパイが出たんだって。ぷっ」

「とにかく、コンパしよっ! 店の予約のメールだって加納に出してたじゃん」


「えっ、み、見たの! ちっ……」

 彼女は横を向いて舌打ちした。なんだ、この態度?

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