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第百四話 廃鉱山跡と黒い石

 ガラスケースの横には青いファイルがあった。ケースのシールの番号とファイルの背表紙に書いてある番号が同じだった。

『番号が一致するわ。ファイルの中を見て』ととおん。


 ファイルを開くが、文書にはびっしりとデータが並んでいたり、難しい言葉や聞いたこともないカタカナが並んでて意味は全く分からない。パラパラとめくると地図のページがあった。

『……位置図ね。ケースの番号と同じ番号がプロットされているわ』ととおん。


『墜落した破片じゃないだろうか?』俺は自分の考えを言った。

『実験に失敗したってことですの?』と美々さん。

『何回か実験を繰り返している可能性はある。初期の実験段階であるいは墜落したものかも』ととおん。


『場所は…… あれ、ここって、あの廃鉱山だ』

 もうひとつプロットされた位置には違う番号がついていて、その位置はこのふぉれすとビルだった。

『あんたがUFOを目撃したっていうあそこ?』ととおん。

『うん……』


 なおも、ファイルのページをめくっていくと、今度は写真のページになった。

 見覚えのある森に赤土の地面。やはりそうだ。あの廃鉱山跡だった。写真は地面を掘り返している様子が写っていた。


『あれ?』変だ。

 それは墜落した部品を回収している風景ではなかった。地層に埋まったなにかを地面ごと掘り出していたのだ。

『これって発掘現場の写真のよう……』と美々さん。

 次のページに埋まっていた黒い石を掘り出す様子がアップで撮影されていた。

『掘り出した位置が深いわね。相当、古い年代のものよ。ここ二、三ヶ月に空から落ちたってものじゃないですわ』と美々さん。


『どういうこと? この施設でなにをしてるの? 機械を開発しているんじゃなくて、なんで土から掘り出されたものを分析しているの?』とおんが口にした疑問の答えは誰にもわからなかった。


 クリーンルームを見渡す。研究員は五人いた。それぞれに作業をしていて、こちらの方など気にした様子はない。

 あの日、このクリーンルームを壁にぶら下がってのぞいていたのだ。のぞき込んだ光景が蘇ってくる。


 ものが減ってる? ずいぶんと片づいている印象があった。あの大きな黒い板もない。怪物のマスクのようなものもない。替わりにか段ボールがたくさん部屋の片隅に積んである。大掃除でもしたのか?


『これ以上は、この部屋にはなにもなさそうね』ととおん

『そうね。この部屋には文書のたぐいはなさそうですわね。もう一度オフィスを探した方がいいかもしれませんわ』と美々さん。


 俺はクリーンルームの扉をくぐった。出るときは指紋認証はなくって、ボタンを押したらスッと自動扉が開いた。


 入り口のところで靴を取ろうとしたときに、オフィスの電話がなった。

「はい。あ、おつかれさまです」電話を取った研究員は最初丁寧な言葉遣いをしたが、目を見開いて驚き俺を見た。


 ん? なんだ、この幽霊でも見るような動揺した表情は?

 ひょっとして……  マズいかも。

 研究員は電話の受話器と俺を何度も見比べた。

「あ、亜門様? じゃないのか? お、おまえ、誰だっ?」そいつが俺に言葉を投げかけた。


 しまったバレた。あの電話は八木亜門本人からかかってきたんだ。

 いや、ここはあれだ。俺が本物だと言い張るんだ。よくこの手のシーンであるじゃん。どっちも本物と言い張って相手が混乱するシーンがさ。


「私が本物の八木亜門だ」俺は口調を真似た。

「…… 」

 自分でも似ていないことが痛いほどよく分かった。


「おまえ偽物だなっ。なんか背だってちっちゃいし」

「ぐあっ」

 バレた。

『だから、似てない物真似はするなって言ってんでしょ!!』 ととおん。


 雰囲気はとらえてると思うんだけど……

 俺は靴下のままで入り口に走った。靴を履くタイミングもなかった。


「ちっちゃい亜門様を追え。そいつ偽物だ!」

「ちっちゃくないわあっ!!」

『なにしてんの。早く逃げなさいっ!』とおんがインカムで怒鳴る。


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