輪廻転生
ねぇ。もしも僕が、前世の記憶があると言ったら……おかしな人だと君は笑うんだろうね。
もっと言えば……前世も君の恋人だったんだよ、と言えば君は腹を抱えて笑うのかもね。
君と僕は前世、生まれ変わってもう一度愛し合うことを約束しあったよ。
まさに、運命ってやつだね。永遠に愛するというのを、僕は守っているし、君も無意識ながら守っているわけだ。
でもね、僕はそれをバカバカしいと思ってしまう。
君は前世の話をしたら笑うだろうし、ロマンチックだなんて言うんだろうけどさ。全然違うよ。
だって僕は君を、最初から愛していたわけじゃあないんだよ。
君が、前世で愛していた君だとも思わなかった。前世の記憶はあったけれど、君に出会って、君を好きになってから前世の君だと知ったんだから。
君と、前世の君は全く違うよ。
前世の君は、控えめに笑うお淑やかな女性だったよ。今の君はどうだい?元気に笑う、明るい女性だ。言っちゃあなんだけども、お淑やかとは縁遠いね。
好きな食べ物も違うね。前世の君は、ネバっとしたものが嫌いだった。納豆とかね。
今はどうだい。納豆は普通に食べられるし、オクラなんかは好物だよ。
違うのは君ばかりでもない。
僕もだよ。前世では散々にバカにしていた読書を楽しんでいる。
もちろん、外に出るのも好きだけれど。
食べ物の嗜好も変わったよ。
だからね、魂とか言われるのは一緒でも、やっぱり前世の僕と今の僕は違うし、前世の君と今の君は違う。
何が言いたいかというとね、今の君が好きだよ。前世で僕らがどんな関係だったとしても、今の僕らには何の意味もなさないよ。
僕の妄想かもね。前世だなんてね。
そう笑わないでおくれよ。嘘だよ。笑っておくれ。
せっかく、君を笑わせるために話題を捻り出したんだから。
泣かないでくれ。ほら、言ったじゃないか。僕には前世の記憶があるって。
例え君を忘れていても、君がどんなに変わっていても、僕らはまた恋に落ちるんだ。
だから。泣かないで。
生まれ変わって、君を今度こそばあさんじいさんになるまで、愛するから。幸せにするから。