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06 After

2118/08/31 12:00

世界は歓喜に包まれた。

人々は10年ぶりに自由を手にすることができた。

これからも英雄ハナマルリョータローの名は世界中に語り継がれるだろう。


あれから1年の月日が流れた……。

RLsのアジトは内部で起こった大爆発で何一つそこにいたもの、あったものの痕跡を残していないが

外部はその衝撃に耐え切り、今も昔の脅威を感じさせるように存在感を出している。

学者や宗教団体まで、様々な検知から残すべきか壊すべきかの議論が絶えない。

なんだかんだ言って倒せるレベルにはまだ達していないのだけど

そして、今も研究者たちが途絶えることなく中に入ってはいろいろ調べている。


RLsが残した爪あとは大きく、科学的な進歩はこの10年間あまり進歩はなかった。

第一次ロケットブームを妨げた弊害は色濃く残っている。

しかし、RLsが消えた今、第二次ロケットブームとともに時代がまた動き出す。

地球の期待を背負って打ち上がった大スペースシャトル、ガウレンもつい先日地球を発った。

超高金ガウレンを発見し人類が加速的に進化をするのはもうしばらく先の話になりそうだ。


世界中にあった対RLs部隊は次々解散しているが未だ武力を放棄しない部隊も多く

新たな火種になりそうな不穏な空気をまとっている。

まだ露骨に各国の政府とやりあう自体にはなっていないが、これからはどうなるかはわからない。

ただ、リョータローが活躍していたエンゼルスは一時神のように崇められていたが、

RLsが消えたあとはまたたく間に解散宣言を行い世界の表舞台から消えた。

そのメンバーだった者たちは今もどこかで生きているのだろう。


いいところも悪いところも含めてこの世界もどうやら着々と前へ向かっているようだ。

それもこれもRLsを倒したハナマルリョータローとその仲間たちのおかげと言っていいだろう。

この世界の人間でその名を知らぬ者はいない。

もうこの世界では死んだことになっているが間違いなく君はこの世界の英雄である。

近いうちに歴史の教科書とかにもその名を載せる日が来るかもしれない。

いや絶対に来るだろう。

その日が待ち遠しい。

と同時に少し悲しいのは

きっとそれが断片的な事実のみで君が本当はどういう人だったのか、

何に悩み、何を抱え、何を克服したのか。

それを伝えるものがいないということだ。

「そこのおじいちゃん!

ロケットみたいなペットボトル持って何やってるの?」

目の前に小さな男の子が興味ありげにこっちを見ている。

「これかい?ちょうどいい。ロケット、君も飛ばすかい?」

今日はリョータローが世界を取り戻した日からの一周年記念だ。

花火とかないからこれを飛ばして祝おうと思って持ってきていたのだ。

「え!これを!」

不思議そうな顔をする。

ここにある装置が古くて驚いているのだろう。

「一緒にやろう!そんなに難しくはない。これをこうしてこうやって……。これでよし!

これで空気を入れてくれるかい?」

「うん、わかった。」

「あと飛ぶときに一緒にこう叫んでくれ!

ロケットランチャーズ!」

少年が空気を入れるとペットボトルロケットは勢いよく飛び出す!

「うあーーー!ほんとに飛んだ!すごい!」

言わないんかい!

まあでも驚くよな。

少年の目は輝いている。

「私も子供の時はびっくりしたもんだよ。」

「おじいちゃん、すごいね。いったいなにものなの?」

「私かい?私は……、何者でもないよ。

何者でもなくなったただのじじいさ。」

「なにそれ?いみわかんない。」

「そっか。

じゃあ、これだけわかってくれればいいよ。

今日君が感じたことを忘れずに誰かに教えてあげて。

どんな形でもいいからね。

そうしてくれれば私がただのじじいから

ペットボトルロケットのじじいになるからね。」

「よくわかんなかったけど今日はたのしかったよ!」

「そっか。

なんだかんだでその言葉を聞けたから私も満足だ。

じゃあね。」

「うん。じゃあね。」

少年は走り去っていった。

それと入れ替わるように車椅子に乗った男が私のところに来た。

その男の両足はなかったが明るく声をかけてきた。

「こんにちは。さっきのロケットを見てなんだか思わず息子のことを思い出してしまいまして

つい声をかけてしまいました。

少しお話しても構いませんか?」

その男は強い目をしていた。最近ではめっきり見ることはなくなった力強い目を……。

それと同時に優しい目をしていた。こんな人が上に立ってくれたらと思わせるようなそんな印象だった。

「もちろん構いませんよ。」

そう言うと男は嬉しそうに話してくれた。二人の男の話を。

「さっきの息子というのは私の実の息子ではないのですが私には出来た息子でした。

その息子実は昨年RLsの討伐部隊にいましてそこで戦っていました。

私も一緒にいたのですが途中で敵に背後を取られ絶望的な事態になりまして

そこで私がしんがりという形で息子とは別れることになりました。

そこで別れる時にいろいろ言いました。

結構落ち込んだと思いますが、それでも耐え抜いて自分なりの一歩を踏み出したのでしょうね。

結果的には息子は見事に大事をなしてくれました。

それが嬉しくて嬉しくて。本当に自慢の息子です。

そのあとから行方不明になっていて、世間では死んだとか言われているのですが、

私は今もどこかで生きていると信じています。」

「すごいお子さんですね。

自分の話は棚に上げてお子さんの話ばかり……。

まさに自慢の息子なのですね。

あのさっきから気になっていて

失礼かもしれないですけどその足の怪我は?」

「ああ。これですか。これは先ほどのしんがりの時に失っていました。

私は以前爆弾を使って戦っていましてその時後ろから迫ってくる敵は

量的に私の手持ちの武器で真っ向から戦えば倒しきれそうではありませんでした。

そこで車のガソリンや爆弾の配置などを工夫してなんとか倒すことができたと思ったのですが、

一体だけ生き残ってしまってそいつに脚をやられてしまってそれでこんなふうに。

その時その敵が迫ってきていることを報告してくれた部下の一人が助けに来ていて

それでなんとかなりました。

すぐに息子のところに戻って戦いと思っていたのですが、

私は部隊長をやっていましてあなたがいなければ隊の立て直しはできません。

今は生きることだけを考えてくださいと言われてそのまま車に乗せられて

救急隊のところに連れて行かれました。

終わった頃には息子のやることも終わってまして……。

自分のこの背中を見るというのは何とも寂しくも嬉しいものですね。」

「私からは何とも言えませんが。

あなた自身も自慢していいと思いますよ。」

「ありがとうございます。

まあ私の自慢は息子にしかできませんので。

おっとそろそろ日が暮れそうですね。

一方的に話してしまったのですが聞いていただいてありがとうございました。」

「いいえ、楽しかったですよ。

またぜひほかの話も聞かせてください。」

「ええ、また。」

車椅子の男はそう言って背を向けるとゆっくり進みだした。

その背中はなんでも背負える程大きく

なんでも耐えられる程力強く

そして、少し寂しそうに見えた。


ありがとう、リョータロー。

私に償うチャンスをくれて。

これから何をしても私がしたことは許されることはないけど

こうやって小さな幸せを前にして

私が本当にしたかったこと、

私が本当に欲していたこと、

それがなんなのかわかった気がするよ。

君が今も無事で元気にやっていること、

そしてやり残したことが無事に済ませることを

寿命が来るまでこうやって小さい幸せをこの世界に返しながら、

ここから……

この世界から……

祈っているよ。


6章-完-


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