僕の宿敵
僕には宿敵がいる。
それは、我が家に居続け僕が学校から帰ったら、贅沢にも
ソファーに寝そべりながら、目だけを動かし
こちらをちらりと見ている。
こいつが僕の宿敵、太郎だ。
僕はどんっと太郎の横にすわると、少しうっとうしそうにしている。
ふんっ。えらそうにしているからだ。
僕の勝ちだ、ばーか。
「ちょっと、ソファーに飛びながら座らないでって言ったでしょー?」
僕が太郎にどやっという顔をしていると、キッチンのほうから声がきこえた。
お母さんだ。
怒られて少し落ち込んでいると、太郎が僕のほうを見ながら鼻でふっと笑った。
なんだ、こいつは。腹が立つ。
しばらく太郎とにらみあっていると、お母さんがこっちに来た。
「おやつ、食べるでしょ?はい」
僕の前にはとてもおいしそうなドーナツがおいている。
「うん、ありがとう!」
太郎の耳元にいき、コソッという。
「お母さんは僕にだけ、おやつを出してくれたんだぞ」
太郎は悔しそうにしている。
「太郎も、おかし食べようね~」
そういって、お母さんは犬用のクッキーを太郎にあげた。
うれしそうにクッキーをくわえた太郎は、僕のほうを見てふっと鼻をならした。
眉間にしわがよるほど、腹が立つ。
何でお母さんは太郎にもおやつをあげるんだ!
「ちょっと、こぼしてる!」
お母さんが大きな声でそういったとき、下をみると
ドーナツがぽろぽろと落ちている。
どうやら僕がこぼしてしまったみたいだ。
お母さんはどんどん不機嫌になっていく。
怒られて、落ち込んだ僕。
まずいっ。太郎に笑われる。
そう思い、太郎のほうをみたとき、太郎は僕の手をぺろりとなめた。
まるで、僕を慰めるように。
「太郎・・・」
くりくりとしたかわいい目で僕を見つめている太郎。
ふっ。こいつはやっぱり宿敵だが
仲間だ。
「でも、なめるのはもうやめて。べたべたする」