5.
ゴールデンウィーク最終日の午後、自宅に帰ってきた。
哉を見る家族の視線と言えば、
「…TSっ娘いい!現実は小説より奇なり!ハッハハ!」と父。
「柊哉が哉か…よかったわ、女一人は悲しいですもの」と母。
「柊兄さん……じゃなかった、姉さんよろしく」と透。
「わぁ、ビックリだね、お姉ちゃんができるというのは不思議な感覚だけどよろしくね~」と健。
何故、我が家の連中はこうもあっさり受け入れているのだろうか。
それについて哉も不審に思ており、
「ほ、本当に私がここにいていいのかな?」
と言ってしまう始末。
「あたりまえだボケ。3年間は父さん母さんにろくに会えてなかったのは俺も同じなんだよ、家族にそんなことを聞くんじゃねえよ」
で泣いてしまう始末。
こいつが泣いたのを最後に見たのは確か院長さんの葬式の時以来だと思う。
それでもやっぱり自分が何かやらないと気が済まないというので家事を任せることにした。
正直言ってものすごく助かった。俺と哉が祖父母の家にいたころはほとんど弁当とかだったらしいし、栄養管理もおそらく哉の方が上手いと思う。
で、家に哉が来て一つ重要なことが起きた。部屋の数が足りないのである。
そこでリビングに家族全員で集まり緊急会議。
哉があっちから持って来た荷物を見ると段ボール1つと旅行用のような鞄一つ。
ビックリするほど少ない。
そんな中親父が一つの案を出した。
「なぁ、哉よ。非常に申し訳ないが部屋が足りないのだが、そこで孝久と同じ部屋で暮らすというのはどうだ?孝久の部屋は無駄にでかいし、小6までは同じ部屋にいただろ?」
とのことだ。
もちろん俺は異議を唱えた。
年頃の男女が同じ部屋で暮らすということはあれな感じがするからだ。いくら元男で義理の妹だからと言って緊張しないわけでもないんだ。哉は美少女だし、着替えがあーだこーだ、寝るのにもいろいろ云々、何よりの俺の理性がいつまでもつかわからないということを。
「――といい訳だ。俺も思春期真っ盛りの少年なんだ、問題は起きてからでは遅いから、よって母さんの部屋に移すことを要求する」
俺が抗議を終える頃には哉は顔を真っ赤に染め上げ、親父お袋は目を光ららせ、健と透はニヤニヤしていた。
「ふーん。愚息はそんなことを思っている訳か……」
「孝久は乙女心と言うものを分かっておらんな。まったく怪しからん」
「「父さんの言う通りだと思う」」
なんともひどい言われようである。
クラスメートの黒柳ほどではないはずだ。
……あれ?義妹って黒柳とキャラが少しかぶってないか?
「なあ、哉。俺って乙女心が分かっていない部類の人間に入るのか?」
唯一の見方である哉に助け船をだす。
「……そうとは限らないんだと思う、なんせ私はまだ女の子になって一ヶ月もたってないんだから私もわからないよ、孝久が判らないのも無理ないと思う」
見事なフォロー。
やっぱり見方はお前だけだ哉。
「それとも、男女の私が同室は嫌かな?」
――ブルータス(かな)お前もか。
しかも泣きそうな顔とかやめてくれ、すごく可愛らしいから。
「別に哉がいいんだったらかまわないんだが、でもな…」
俺が渋ると親父が唐突に、
「と、まぁ話をしていた訳なんだが実はすでに選択肢が無かったりする。いったん哉と自分の部屋を見てこい」
親父が変なことを言うので急いでかなと俺の部屋に行く。
そこには見知った自分の部屋と少し違った。
違うのは大きく分けて2点。
ベットのサイズがダブルくらいになっているのと箪笥1つ追加され勉強机も1つおまけに増えていた。
勉強ずく机が増えているのは分かる。小6の時まで家で哉が使っていたものだ。箪笥は祖父母の家に持っていたのもがここにあるのもなんとなく分かった。
けれども、
「なんでベットが知らぬ間にダブルサイズになってるの!?」
「そりゃ、俺のお袋からのプレゼントだよ」
婆ちゃんー!?
何やってくれてんですか!?シングルなら隣に布団でも敷くという回避方法があったはずなんですけど!寝たりする分のペースがぴったりベットに占領されつるんですが!
「こんな感じで二人仲良くシておいてくれ」
なんか変なニュアンスで言われた気がするんでございますが、お父様?
父さんは1階から上がってくる際に持って来た哉の荷物を置いて部屋を出て行った。
現在、二人っきりである。
婆ちゃんの家でも完全に二人っきりになったのは1時間もなかったんですけど。
「とりあえずこんな感じでいいのか?」
少ない荷物を片付けた俺たちは愚だらないことをしゃべったりしていた。
「ありがとう孝久」
「兄妹なんだこれくらいあたりまえだ」
「……兄妹か……」
「ん?何か言ったか」
「何でもない」
なんか拗ねたように視線と横にそらす。
哉の後ろの時計を見てふと思い出した。
「これから晩飯の材料買に行くが一緒に行くか?」
「うん、行くよ。お店の位置覚えたいし」
そしてこの後めんどくさいことになるとは思わなかった。