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拓郎に家まで送ってもらう道すがら。長い影を見て思う。
「拓郎、また背が伸びた?」
「ん? そうかもな。あんまり考えたことないけど、なんで?」
「いや、べつに」
また身長差が開いたとかぼやきたくない。
全体、どうして僕の身長は伸びないのだろう?
「きらりはちっさくて可愛いな」
「そっ、そんなこと言うなよっ」
驚いて顔が熱くなる。背が低いのは、コンプレックスなのに。
「いいじゃん。きらりはアイドルなんだし。小さいことも魅力の一つにしておけば?」
「そ、そうだな」
答えておいて、小さいの意味を身長ではなく、別のパーツと受け取ってまた赤面した。
(言えない。胸ですらまったく成長していないなんてこと、口が裂けても言えない)
あと、どのくらいこうして歩いて行けるのだろうか?
「拓郎。大学は東京に行くの?」
「うん。そんで、卒業と同時に結婚って感じかな」
結婚、というワードがやけに生々しく感じる。だから、嫌いなんだ。わざと見せつけるみたいに言うから。
「どうした? 急に黙り込んで。俺と離れるのがさみしいとか?」
「そりゃさみしいよ」
「そうだよな。きらりの一番最初のファンは俺で、握手会も何回も通ってるもんな。大学入ったらそれもできなくなる、か」
別れが現実味を帯びてくる。まだあと一年残っているのに。
「親父一人でも充分住めるってさ」
力なくあははと笑った拓郎。両親は昨年離婚して、拓郎は父親について近所のアパートを借りている。
僕が女の子じゃなかったら、いっしょに住むか聞けたかもしれない。うちの両親とおじさん、仲良かったから。
なのに、悲壮感なんて漂うこともなく、拓郎はすごしている。
ご飯作って、とか。洗濯手伝って、とか。そういうお願いをされたことは一度もない。
それでも家庭が回っているのだからたいしたものだと思う。
おばさんがどこに行ったのか知らないけれど、あの人は自由人だったから、それでいいんじゃないかと思っている。
「時にきらりさあ」
頭の位置をわざわざ下げて話しかけられると赤面してしまうじゃないか。
「なに?」
「アイドル辞めて、俺といっしょに東京行かない?」
はっと息を呑んだ。なにを言っているのか、さっぱりわからない。
つづく




