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気を取り直して咳払いをすると、オレンジ革命について思考を巡らせる。
「中世の呪い、なんてどうかな?」
「中世のヨーロッパ? なんで?」
「オレンジってやっぱり、日本のイメージじゃないんだよ。だから、中世でヨーロッパ。そこで、オレンジが大好きな女の子がいたとする」
「うん」
僕は思考を巡らせて話を進める。
「彼女は当時の結核で、もう長くなかった。最後にオレンジを食べたいと言い残して息を引き取る。すると、兄の目の前にオレンジがひとつあらわれた」
ここまで順調。だと思う。
「オレンジは、彼女の世話をしてくれた兄にしか見えないし、触ることができないため、兄は両親から隠れてオレンジを食べていた。ある時、父親にオレンジを食べているところを見つけられて、横取りされてしまう。父親がオレンジを口の中に放り込んだ途端、オレンジだったそれは、ネズミの死骸へと姿を変え、父親はペストにかかり死んでしまった。これがオレンジ革命。呪いの話」
ほぅ、と拓郎がひとつ息を吐く。
「今回は推理と言うより、小話みたいだったな。おもしろかったよ。さっそく明日、みんなに話してみる。ありがとう」
「どう、いたしまして」
そう答えたけれど、なんだか納得できない。全然推理してない。こんなのただの推測だ。
いや、なに言ってるんだろう僕。
「拓郎」
「なに? きらり」
「好き」
「……?」
「って言ったらどうする?」
ああって、拓郎は手を打った。
「びっくりした。そんなどぎついこときらりが言うなんて、思ってなかったから」
「思ってたら言っても平気なの?」
「平気じゃないよ。俺、婚約者がいるんだし」
「その人に会いたい」
「無理。俺でもめったに会えないんだから」
「会えないのに婚約者なの? 都合つけることもできないなんて、おかしいよ」
おかしいかな、なんて答えながら、拓郎は長い腕を頭の後ろで組んだ。
「とにかく。今回はそれで妥協しておくよ、オレンジ革命」
「やっぱり妥協してるじゃん」
妥協されるのは嫌だ。子供扱いされるのはもっと嫌だし、僕だって女の子なんだぞ。
「とにかく、まぁそれで。今回はこれでいいよ。ほら、遅くなる前に帰ろう? 送っていくから」
拓郎は変わった。
でも、それを言えるほど深い仲じゃないのが悲しい。
つづく




