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1ー3

 気を取り直して咳払いをすると、オレンジ革命について思考を巡らせる。


「中世の呪い、なんてどうかな?」

「中世のヨーロッパ? なんで?」

「オレンジってやっぱり、日本のイメージじゃないんだよ。だから、中世でヨーロッパ。そこで、オレンジが大好きな女の子がいたとする」

「うん」


 (ボク)は思考を巡らせて話を進める。


「彼女は当時の結核で、もう長くなかった。最後にオレンジを食べたいと言い残して息を引き取る。すると、兄の目の前にオレンジがひとつあらわれた」


 ここまで順調。だと思う。


「オレンジは、彼女の世話をしてくれた兄にしか見えないし、触ることができないため、兄は両親から隠れてオレンジを食べていた。ある時、父親にオレンジを食べているところを見つけられて、横取りされてしまう。父親がオレンジを口の中に放り込んだ途端、オレンジだったそれは、ネズミの死骸へと姿を変え、父親はペストにかかり死んでしまった。これがオレンジ革命。呪いの話」

 

 ほぅ、と拓郎がひとつ息を吐く。


「今回は推理と言うより、小話みたいだったな。おもしろかったよ。さっそく明日、みんなに話してみる。ありがとう」

「どう、いたしまして」


 そう答えたけれど、なんだか納得できない。全然推理してない。こんなのただの推測だ。


 いや、なに言ってるんだろう(ボク)


「拓郎」

「なに? きらり」

「好き」

「……?」

「って言ったらどうする?」

 

 ああって、拓郎は手を打った。


「びっくりした。そんなどぎついこときらりが言うなんて、思ってなかったから」

「思ってたら言っても平気なの?」

「平気じゃないよ。俺、婚約者がいるんだし」

「その人に会いたい」

「無理。俺でもめったに会えないんだから」

「会えないのに婚約者なの? 都合つけることもできないなんて、おかしいよ」


 おかしいかな、なんて答えながら、拓郎は長い腕を頭の後ろで組んだ。


「とにかく。今回はそれで妥協しておくよ、オレンジ革命」

「やっぱり妥協してるじゃん」


 妥協されるのは嫌だ。子供扱いされるのはもっと嫌だし、(ボク)だって女の子なんだぞ。


「とにかく、まぁそれで。今回はこれでいいよ。ほら、遅くなる前に帰ろう? 送っていくから」


 拓郎は変わった。


 でも、それを言えるほど深い仲じゃないのが悲しい。


     つづく

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