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家に帰ると、おじい様に電話をして、ハニガを辞めることを伝えた。
遺産関係なく、もったいないとこぼされたけれど、もう決めたことだから、と何度もあやまった。
そもそもハニガはおじい様の趣味がこうじて作られたプロジェクトだ。
そこに直系の孫であるわたしがいることがバレたとしたら、やっぱり面倒な騒ぎに発展しそうな予感がずっとあった。
だからこそ、本気を出せていなかったのかもしれない。
つづいてまにぃたんにはメールで連絡した。すぐに返信がきて、ちょっと会わない? と誘われたけれど、お断りした。
わたしにとってのまにぃたんはとてもまぶしい憧れのアイドルだ。本当だったら地下ドルなんかじゃなく、本物のテレビに頻繁に出るような人なのだ。
だから、これでいい。
明日になったらまた騒ぎになるかもしれないけれど、ひと通り泣いたらすっきりした。
それから、まぶたが腫れてしまわないよう、氷で冷やすことにした。
ついでにたくさん泣いたせいで頭が痛くなりそうだった。
両親にも、メールでその旨を丁重に伝えた。どちらも早く辞めてくれてよかったと喜ばれてしまったことが心に引っかかったけれど、アイドルなんて柄じゃないのだから、仕方のないことだ。
「お嬢様、夕飯の支度ができました」
お手伝いさんの霧島さんに言われて部屋を出る。
「ありがとう」
本当はあまり食欲がないのだけれど、食べなければ明日の公演中に倒れてしまいそうな気がする。
そのくらいたくさん泣いたのだ。
夕飯は鮭の塩焼きとほうれん草の胡麻和え、お吸い物とご飯が規則正しく並べられていた。
普通の高校生に戻るのだから、家庭のことも少しずつおぼえなければな。
「霧島さん。今度お料理を教えてもらえませんか?」
「あら、お嬢様。もしやお屋敷の外で一人暮らしなどされる計画がおわりなのですか?」
霧島はとても驚いて目を丸くしている。
「そうだね。いつかはここを出ていかなくちゃならないから」
そう答えているかたわらで、幸子さんの姿が目に浮かんだ。
普通はきっと、幸子さんのような人のことを言うのだろう。
わたしはもう、拓郎に会うつもりはない。
できれば明日の公演で最後にしたい。
それなのに、普通を求める自分の心がどこか矛盾しているような気がして、また少しもやもやしてきた。
つづく




