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1ー2

 好きな人のドアの前でドアベルを押す。


 ただそれだけのことなのに、顔が熱くなる。


「いらっしゃい、きらり」

「お邪魔します」

 

 玄関先で靴を脱ぐと、すぐに紅茶とケーキが用意された。


「わぁ……」


 (ボク)の大好きなフルーツケーキだ!!


 しばらくの間、ケーキと紅茶に思考をまかせて、ひたすら集中する。


 紅茶のお代わりをする頃には、拓郎がプリントされた紙を(ボク)に渡す。


「今度の事件はこれ。オレンジ革命」


 うん? オレンジと革命って、どんな繋がりなんだろう?


 (ボク)はしばらく紙を睨みながら、紅茶を飲む。


 推理には糖分が必須、っていうことで、拓郎はいつもあまいケーキを用意してくれているのだ。


 ちなみに、毎回出される推理は拓郎が部長の『推理クラブ』を通じて、文芸部員が書いたものに決着をもたらすというもの。


 だから、現実の事件じゃないんだ。


「オレンジ革命。まさか、それだけで文章を作れってこと? まさかの(ボク)に丸投げ?」


 文芸部員なのに、タイトルだけなんて、ちょっとぬるくないか?


 (ボク)はただ、推理するのが好きなだけなのに。


「今回は、そんな感じ。悪い。いつも書いてくれてる部員が風邪引いたとかで、熱で頭が回らないんだってさ。これだけで推理できる?」


 きらり、頭いいもんな、なんて褒められると調子に乗りたくなってしまう。


 そうでもないんだけどね。


「じゃあ、そうだな」


 言いかけた頭に、拓郎の大きな手のひらが(ボク)をなでる。


「なに?」

「いや。(ボク)っ子ってかわいいなと思って」

「今言わなくてもいいんじゃない?」

「今じゃないと。ハニガでトップになったら、こんなことできなくなるし」

「そ、そんなの。いつになるやらわからない。それに、本当にトップになんかかれるわけないし」

「なら、遺産はあきらめるの? トップになって、武道館でライブするんだろう?」


 そう、だけど。


 手。離してくれないから。


 恥ずかしくて頬が熱くなる。


 ハニガに入ってから伸ばし始めた髪が、今では胸に届くほど伸びたのに。


 まだトップになっていないからって、婚約者がいるのにこんなことしちゃいけない。

 

「離して。せっかくオレンジ革命の話を捏造しようとしてるんだから」

「ははっ。まぁいいか」


 最後に両手でわしゃわしゃとなでられて、まるで犬が猫にでもなったような気持ちになったのは、ここだけの話にしておこうと思う。


     つづく

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