3ー3
チョコフォンデュのチョコが無くなりそうな頃になって、りさっちのスマホが振動した。
「あら? おじさんだわ」
りさっちは立ち上がり、ほいほいと電話に出た。
「もしもし? うん。わたし。どうしたの? 急に。え? 今? こっち? ええ、そう。もう十七歳。え? 待って、よくわかんない」
りさっちは電話を切ると、急に顔を赤くした。
「悪いけど、今日でこの秘密基地は解散でいい?」
いいけど、とまにぃたんが口をにごす。
「なになに? なにがあったの?」
「おじさん、これからここに来るって。電話越しにプロポーズされちゃった。まにぃたんには悪いけど、わたし、今日でハニガを辞めます」
ゴキブリ事件では号泣していたりさっちが、今はしあわせそうに微笑んでいる。いつものクールなまなざしは、もう見ることはできないだろう。
「おめでとう、りさっち」
「おめでとう」
僕たちは口々に祝福の言葉を贈る。
ハニガるんのみんなは、さぞかし悔しがるのだろうな。
僕は少し勘違いをしていたようだ。
恋人と勘違いをさせて課金させる職業だと思い込んでいたけど、本当はしあわせを与える職業なのだ。
ひょっとしたらハニガるんのみんなも祝福してくれるかもしれない。だったら素敵だと思う。
でも、僕の場合は……。拓郎には婚約者、幸子さんがいる。横恋慕しようとしている僕は、なんて汚いのだろう。
だから、あきらめることに決めた。
あえて誰とは言わなかったけれど。
「僕、彼のことはあきらめようと思う。りさっちがしあわせなのに、なんかごめん」
「わたしはかまわないけど」
そう言うと、りさっちとまにぃたんに抱きしめられた。
「いつか、きらりんも、素敵な恋ができるといいね」
「ありがとう」
泣いたけど、うれしかった。そんなふうに言ってもらえるなんて思わなかったから。
それから片付けると、まにぃたんに引きずられるようにしてりさっちのマンションを後にした。
僕たちがこの部屋にあがることはもうないだろう。
りさっちが男の人を招くことも、未成年の飲酒喫煙もなく、健康的な恋バナで締めくくることになる。
だが、ちょっと待て。
推理が足りない気がする。
推理するとすれば、バニラんの順位がビリになった理由くらいだが、僕がそこに口を挟むのはおかしいような気がする。
なぜならまにぃたんは絶対不動のトップアイドルなままだし、二位はりさっちが抜けることになるから順位が繰り上がるくらいの方が話題としては大きいからだ。
それに、なんだか僕の実力があったわけじゃなさそうな予感もある。
アイドルって、むずかしい。
つづく




