3ー2
「ところでりさっち。あんたどうしてこんな高級マンションに住めるのかをそろそろ教えてくれない?」
まにぃたんがついにりさっちの深層心理を聞き出した。
一方のりさっちは、あらそんなこと、とばかりにクールに微笑む。
「わたしのおじさんがお金持ちだから、とりあえずこの部屋に住んでいて欲しいって頼まれたの。あんずも彼のよ」
「しかし、人選をミスしたのね。りさっちまるで片付けできてないもん」
「まぁ、それもあと一ヶ月ちょっとのことだけどね」
おじさんは海外出張に出かけたから、その間だけ居てくれって、と答えながら、冷蔵庫をのぞき込む。
「これでもわたしが部屋を片付けた方なのよ。前はもっとひどかったもの」
なにがどうすごかったよかは聞かない方が身のためだなと思っていたら。
「へぇ〜? 海外。どこ?」
「シンガポール。お土産買ってきてくれるって。男の人を連れ込まないという条件付きよ」
シンガポールか。いずれ行ってみたいな。
「まさかとは思わないが、そのおじさんと恋人同士ってわけじゃないよね?」
「うん。今は違うわね。でも近い将来、アイドルを卒業したら、本格的にお付き合いしようかと思っているの」
「年上は大変だよ。泣かされないようにね」
「もちろんよ」
不思議。普通にハニガの最下層な僕が、トップと二位の彼女たちと話をしているなんて。
「ところできらりん。ちょっと耳寄りな情報があるの」
「なんだい?」
まにぃたんは、ニヤニヤしながら僕を突っついた。
「昨日のステージと握手会の結果、最下層だったきらりんが、ビリから二番目に昇格するみたいなのよ」
昇格? それって本当に?
「本当よ。どうやら虹川 バニラことバニラんがビリで決着がついたの。よかったわね、ビリじゃなくなって」
「それでもたいして違わないんでしょうけども」
まにぃたんとりさっちに口々に祝福されて、恥ずかしくなる。
それで、ついでとばかりに相談に乗ってもらうことにした。
「まにぃたんたちは、アイドルやってるってことを恥ずかしいと思ったりしない?」
「ヤブから棒に。あたしはむしろ誇りに思ってるわよ。地下ドルだけど、一瞬でもアイドルでいられるのって、すごいことだもの」
たしかに。普通は通らない世界だもの。
僕がアイドルを恥ずかしいと思った理由は、もしかしたら遺言のせいかもしれなかった。
アイドルでいることは限られた時間との戦いだ。それを外から眺めるだけなら、こんなに恥ずかしいと思わなかったが、アイドルをやることの動機が、僕の場合は不純すぎるのだ。
「バニラんは、なんて?」
ふいにバニラんのことが心配になった。母親がイギリス人のバニラんは、とても庇護欲をくすぐる可愛らしい子だからだ。
「そりゃやっぱり、落ち込むよね」
そうなのか、と僕は肩を落とす。
僕みたいなのがアイドルをやっていても許されるのだろうか? わからないんだ。
つづく




