表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

2ー6

 目的の回でエレベーターを降りると、りさっちの部屋の前で立ち止まった。


 一見すると平和そうだが、中でなにかが起きているかもしれない。


 覚悟を決めて、インターフォンを押した。


『誰っ?』


 りさっちの声だ。なんだかとても取り乱している。


 背後では犬の声が聞こえた。


「あたしよ、まにぃ。開けてくれる?」


 短く返答があり、ドアが開いた。目の前のりさっちは、かわいそうなほどやつれて、涙で顔がぐちゃぐちゃだった。


 部屋に上がる前から、軽く息を吐く。すでに衣類が散乱していた。


「助けに来てくれたの?」

「……うん」


 なんだかとてもくだらない結末を想像して、返事をした。


「あのねっ。一人で解決できると思ってたの。でも無理っ」

「落ち着いて、りさっち。なにがあったの?」


 まにぃたんは、りさっちの肩をやさしく抱きしめた。


 こういう時のまにぃたんはとても頼りになる。さすがはトップアイドルだ。


「あのね、あんずがゴキブリを食べちゃったのっ」

「……はぁ?」


 やっぱりか。そっちか。


「殺虫剤は?」

「そんなの、持ってないけど。どうしよう。獣医に連れて行かなくちゃいけないのかな? それとも、吐かせる方法があるのかな?」

「本当に食べたの?」

 

 まにぃたんに確認されて、りさっちは、少しだけ、と答える。指先で示した先には、全人類共通の敵であるゴキブリが、むざんにもバラバラな状態になり、散乱している。


 食べたというより、やっつけてくれたのではなかろうか?


「あのね、りさっち。あたしたちすんごい心配したの。今日のステージ休むほどの事件に巻き込まれてるんじゃないかと思って、すっごくね。……はぁ、もう帰ろっかぁ、きらりん」

「待って、帰らないで。ゴキブリの死体をなんとかしてっ」


 それを片付けられないということは、一人暮らしをつづけられない、ということになるのではなかろうか。この先もおなじことがきっとたくさんあるだろう。


 なにしろあいつは、どんなに清潔にしていても、どこからかわいて出るタイプの害虫だ。


 犬を飼っていて殺虫剤が使えないのであれば、別の方法で仕留めるしかないのだ。


 まにぃたんは、黙々とゴキブリの残骸を片付けると、あんずちゃんの口の中を覗いて大丈夫みたいだよ、と言った。


「りさっちさぁ。迷惑かけてくれたおわびとして、このマンションをあたしたちの秘密基地として使わせてくれないかしら?」

「嫌よぉ」


 どの口が言うか。まったくあきれ返って声も出ないとはこのことだった。

 

     つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ