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電話が繋がり、もしもしと問いかける。
「僕はりささんとおなじハニガで活動している縞鳥 きらりと申します」
スピーカーホンの向こう側から、りさっちのお母さんらしき声が聞こえてくる。
『あらまぁ。こんなこと初めて。それで? どうかしましたの?』
「それが。今日のステージをりささんが突然お休みしたんですけど、具合が悪いとかでしょうか?」
『そうなの? りさは今、一人暮らしをしたいとかで、マンションに居るんだけど。どうしたのかしら?』
一人暮らし、となると状況が変わってくる。
「それでしたら、僕が様子を見に行ってもよろしいですか?」
『ええ、いいわよ』
りさっちのお母さんに住所を聞き出した僕は、しっかりとメモをしてまにぃたんに見せた。
そして、挨拶をすませると、すぐに出かける準備をする。
「スタッフの車に乗せてもらおうか?」
りさっちが住むのは、凡人が憧れるような高層階のマンションだ。そんなところに未成年の僕たち二人が乗り込んでしまって、問題にならないだろうか?
「カズヒト〜!!」
まにぃたんは、スタッフの一人を呼び出した。
「タクシー用意してもらっていい? もしくはあなたに運転を頼んでもいい?」
「僕でよければ運転しますよ。どこに行くんですか?」
「ん〜? 秘密でもいい?」
まにぃたんは魅力的な営業用スマイルでウィンクした。
スタッフのカズヒトさんは、それだけで顔を赤くしてしまう。
「そういうことで、よろしくお願いします」
僕からも丁重に頼み込んで、彼の車の後部座席に乗り込む。
まだうろついていたまにぃたんのファンの男の人たちは、まにぃたんにウィンクされて次々と撃沈されてゆく。
もはやスタッフの車に乗り込んでどこに行くのかを追跡しようとすら思わせない。さすがだ。
「ここら辺でいいわ。ありがとう、カズやん」
まにぃたんはスタッフに可愛らしいあだ名をつけてあげながら、車から降りた。
「ありがとうございました」
僕も車から降りた。
それにしても。
車が去って行くのを確認してから、りさっちが住むアパートに足を進める。
普通の地下ドルが支払えそうにない金額の家賃だろうと推測しながら、まにぃたんと足を進めた。
ふいに自動ドアが開いて、住人とおもわしき女性とすれ違った。
僕たちはその隙に自動ドアをくぐってエレベーターに乗った。
つづく




