2ー4
この日はステージでも集中できなかった。
りさっちの身になにかよくないことが起きている予感がする。
間違ってもラーメンや黒糖とは無縁のなにかがある。
僕のスマホからも電話をかけたけれど、結局繋がらなかった。
不安になると誰かのやさしさが必要となるわけで。
「ねぇ、ちょっときらりん。恋人に連絡取って。今日彼来てなかったでしょう? なにかいい推理してもらわないと、あたし、このままじゃ眠れないよ」
と言った三十秒後にまにぃたんは目を開けたままいびきをかいた。
しっかり眠ってるじゃん、とは言えない。
仕方がないから拓郎に電話をかけた。
「もしもし、拓郎?」
『もしもし? どうかした?』
拓郎の声はくぐもっているし、外にいるのか、雑踏まで聞こえてきた。
「たいしたことじゃないんだけど、今日りさっちが急に休んだんだ」
『うん』
「それなのにさっき彼女からまにぃたんに電話があった。助けてという言葉だけを残して。その後は電話がつながらないんだ」
『それは心配だね。どうする? 警察に相談する?』
やけに他人行儀な言葉が返ってきて、僕はあきれる。
「推理しないの?」
『それはきみの仕事でしょう?』
そうだった。だけど、悲しいほどなにも浮かばないし、どうすればいいのかもわからない。
『後は、そうだな。彼女の自宅に行ってみるとか?』
そうだった。りさっちは実家から通っているから、自宅に電話をかける、という方法もある。
それに、りさっちが自宅に居ないにしても、なにかヒントになることがあるかもしれない。
「ありがとう。参考になったよ」
『どういたしまして。じゃ、切るね?』
「うん。またね」
電話は拓郎から切られた。なんだか機嫌が悪そうだったのが気にかかる。もしかして、婚約者と会っているのかもしれない。
ちくり、と胸を針が刺すように痛んだ。
「なぁ〜るほど。そうやって連絡とってるんだ?」
びっ、くりしたぁ。まにぃたん、寝てたんじゃなかったのか!?
「えへへ。あたしたぬき寝入りが得意なんだ」
そうだよね、自宅に連絡するのが一番だよね、とまにぃたんは息を吐いた。
「じゃ、これからりさっちの自宅に電話するから、きらりんが話してね?」
「いいけど。自分で聞きたいんじゃないのか?」
「うん。あたし、頭のいい人苦手なんだよね。りさっちのお婆ちゃんって、校長先生やってたから苦手なのよ」
そんなわけで、まにぃたんはりさっちに電話をかけて、スマホを僕に手渡した。
つづく




