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「りさっちが突然休んだ理由は、突然北海道でラーメンを食べたくなったから。で、どうだろう?」
「意外と普通だね。それなら沖縄で黒糖食べたくなった、の方が依存性高くない? どっちにしても太るのは別として」
なるほど。まにぃたんの推理もありえるな。
黒糖の独特の旨味は癖になるし、同年代の女の子としては、ラーメンより黒糖だろうか。
身内に不幸があった、というのはあまり考えたくない。無難だから、というより、悲しいことだから。
「りさっちは黒糖を求めて沖縄に行きたくなった。だけど、立ちふさがるは気象の壁。発達した台風。飛べない飛行機。どうよ? あたしとしちゃあ、合格ラインじゃない?」
「まにぃたんすごいね。引き込まれるよ」
「じゃあ、あたしも高身長のイケメンくんときらりんと一緒に推理仲間に入れるかな?」
「そ、それは……」
困る。けど、困るなんて言えない。
「嘘だよ。あたしたち、今が正念場だもん。下手打って男と一緒のところを写真撮られたりしたら、これまでの苦労が水の泡だもんね」
だからさぁ、とまにぃたんは営業用スマイルに切り替える。
「一緒に盛り上げよう。突然休みになったりさっちの分まで。ね?」
「うん」
「ってか、本気で焦ったでしょう? やっぱり彼のことが好きなんだね」
「ち、違うっ」
「いいよ、誰にも言わないし。みんななんとなく言わないでいるし」
そうきたか。でも、彼には婚約者が。
それをまにぃたんに言えない僕はふぬけだな。
いつか、こんな日の推理を懐かしく思えることがあるのだろうか?
その時僕は、拓郎をあきらめて笑っていられるだろうか?
とにかく。今はできるだけのことに集中しよう。
そしてこれからステージへ向かうというまさにその時、まにぃたんのスマホが激しく振動した。
「嘘、りさっちからだ」
まにぃたんはスマホを取り上げると、通話ボタンを押す。
「もしもし? りさっち?」
『助けて!! まにぃたん』
悲鳴に近い声が聞こえて、体を硬くするまにぃたん。
「落ち着いて。なにがあったの?」
『あたし、もうステージには立てない』
それだけ告げると、電話が切れてしまった。
「嘘、やだ。変なところで電話切らないでよ!!」
その後、何回もりさっちに電話をかけるまにぃたんだったが、結局通話すらできない状態で、最終的には――。
『おかけになった電話番号は、電源が入っていないか、使われておりません』
つづく




