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1ー1 なぜそうなったのか?

「なぁ、きらり。今日時間があったら遊びに来ないか?」


 幼馴染みの桜花(おうか) 拓郎(たくろう)に誘われて、僕は胸がきゅんとなった。


 いけない。今は恋愛なんかに心ときめかせている暇はないっ。


 それに、相手は拓郎だぞ。


「美味しいケーキもあるんだけど」

「行く」

 

 即答してから後悔した。


 祖父の遺言のためとはいえ、こう見えても僕は現役のアイドルタレントだ。いわゆる地下ドルだけど。


 拓郎と睦まじいところを見られたりしたら、ネットの中でどんなことを書かれるかわかったものじゃない。


 いや、人気は下から数えてトップなんだけど。


 だけど、本来出不精の(ボク)が地下ドルなんてものに興味を持ったのには理由がある。


 祖父は大のアイドル好きだった。


 その趣味は多岐にわたり、最終的に地下ドルを作ってプロデュースするまでに至った。


 一方、孫娘である(ボク)の趣味は本を読むこと。


 特にミステリーが大好きで、一日中だって読んでいられるくらいだ。


 祖父の遺産を相続するためには、彼がプロデュースしていた地下ドル『Honey(ハニー) Meets(・ミーツ) Girls(・ガールズ)』略してハニガでトップアイドルにならなければならないのだ。


 祖父の遺産は莫大で、自堕落な(ボク)が一生自堕落な生活をするために充分な金額である。


 そのためにはハニガでトップにならなければならないわけで。


 それで、拓郎なんかと一緒にいちゃいけないんだけど、ケーキがあるから。


 だから行くと言ってしまった。


 拓郎は子供時代に近所に住んでいて、物好きな彼はよく(ボク)をかまって遊んでくれたのだった。


 十八歳の彼は高校生で、ものすごく背が高い。


 だから、ハニガのショーで拓郎が観に来てくれるとすぐにわかるのだ。


 ちなみに、律儀な彼は(ボク)縞鳥(しまどり) きらり推しだったりする。


 本来なら、これは重大な契約違反とされるところだが、残念ながら拓郎には婚約者がいる。誰とは教えてくれないけれど、そういうことだから、(ボク)が入り込む隙間はない。


 電話を切った後、急いで拓郎が住むアパートへと歩みを進める。


 彼がケーキを用意しているということは、きっと推理してほしい事件があるからだ。


 そう、拓郎は学校の部活で『探偵クラブ』に所属しているのだ。


 二重の意味でわくわくしながら、小走りからあっという間にドアの前についた。


     つづく

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