序話1「平話」
いつも通りの朝。母に起こされてダイニングのテーブルに着き、用意された朝食を食べる。今日は目玉焼きと食パン、そしてアサリの味噌汁。
何というか、ここは食パンではなくお米がよかった———…
「率始、何してんの? 早く食べなさい」
「はい……」
…———なんて、母には言える訳もなく。
「あむ、もぐもぐ、あむあむ」
隣に座る弟は面白いくらい口にソースを付け、朝食を貪り食っている。
「あぁっ索、食べ方汚いぞ」
俺は言って、弟の口をティッシュで拭う。
——毎朝、学校の支度を終えると、弟の支度も手伝う。
自分でも弟を溺愛しているとは思うが、なかなか離れる機会が掴めない。
——玄関で靴を履き終えた弟が母に向かって元気に言う。
「行ってきまーす! 兄ちゃんも言うんだよ!」
「はいはい……行ってきます」
弟とは真逆のテンションでそっけなく言うと、母はそれをくすくすと笑う。
「はいっ行ってらっしゃい。二人とも気をつけてね」
——登校時の日課は自由奔放な弟と手を繋ぐこと。危なっかしいったらありゃしない。
「あっ、廻空ちゃんだ。おはよー! ——あうっ」
案の定、知り合いを見つけ次第走り出すので、繋いだ手をギュッと引き寄せた。
「ふふっ、おはよう索ちゃん。それと……りっちゃん、も」
廻空……彼女は俺の幼馴染で、容姿端麗——立てばうんたら、座ればかんたら、歩く姿はうんたらかんたらのアレだ。
「ん、おはよう……」
俺はこちら様にもそっけない挨拶。
何というか、最近目を合わせられない。嫌いな訳ではない。というか……うん。おそらくはこれが第二次性徴……思春期に発症するアレなのだろう。
彼女もこちらに目をチラチラと、手を後ろに回してモジモジと……
気まずい空気。しかしこの場面を壊すシーンブレイカーこそ、俺の秘密兵器……
「兄ちゃん廻空ちゃん行こっー!」
わんぱくな弟が廻空とも手を繋ぐと、小さな身体で引っ張って走り出し、釣られるように俺たちも走り出す——
これが俺の日常だ。幸せな日常だ。弟の走る背中が愛おしくて、微笑む幼馴染の隣にいれることが幸せで……こんな日常が好きだった。
これぽっちも「非」がない日常。繰り返される平和で平凡な日々。俺の物語はずっと平話が綴られる。それが当然なことなのだと……そう、勝手に思っていた。
誰もが疑いもせず明日も明後日も、来週も来月も、来年だって……変わらぬ自分の日常が来るのだと。
——星が、大きな星が……落ちてくる。
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