ブーメランパンツ、南国の波に舞う
――そして、時は再び現在へ。
今、私は沖縄のプライベートビーチに立ってますっ!!
海の青さも、砂浜の白さも、想像してたより何倍もまぶしくって。
一瞬、息が止まっちゃうくらい、ほんとに綺麗で――しばらく、立ち尽くしてたら。
「……いい景色ですね。ゆっくりと海を眺めながら本でも読みたい気分です」
白洲さんが、隣でサングラスを外しながら、しれっとそんなことを口にする。
……んふふー。あぁ、いつもの白洲さんだなぁ。
こーんな南国リゾートで、目の前にはきらっきらの海があるっていうのに、“海が見える部屋で本読んで過ごす”とか考えちゃうんだぁ~~……。
――って、そうじゃないでしょぉ!?!?!?!?!?
青い海! 白い砂浜! はい、テンション最高潮っ!!
しかも隣には、若くてキュートな女子大生(自称)ですよ!?!?
せっかくの沖縄なのに、なんでソファで読書コースぅ!? おかしいでしょぉ!?!?
え? 自意識過剰って??
うるせーっ!! だったらこの胸で挟んでやろーかコラァ!!!(※やりません)
……と、脳内で絶叫したその瞬間、私の中の“何か”がぷつんって音を立てて切れました。
「お手を拝借っ!」
私は迷わず、白洲さんの手をぎゅっと掴んで、そのまま海へダッシュ!!!
「ちょ、ココアさん!? サングラスが――」
白洲さんがわたわた慌ててるのを尻目に、私は全力で走る!走るっ!!
「足が濡れますよ!? 本当にっ!!?」
白洲さんの声も風に乗って届くけど、私は――
「この体、全部持ってけぇぇえええぇぇぇええ!!」
某有名セリフを叫びながら、白洲さんもろとも海へ――
\ザッバーーーン!!!/
はい来たっ!! 鼻から海水直撃ッ!!!
うわあああしょっぱい!! これダメなやつ!! 絶対むせるやつーー!!!
「げほっ、ごほっ……っ、……あはははははは!!!」
ツインテールも、今日のために用意した一張羅も台無し。
でも、でも――
楽しくって、しょうがなかった。
「……初対面の時を、思い出しますね」
濡れた前髪がぺたっと垂れ下がって、白洲さんの顔がちょっとだけ幼く見える。
あ、これ――
「きゃー♡ 白洲さん、デヴィッド・ボウイみたいっ!」
今回はちゃんと、素直に褒めておきました。えらいでしょ?
「心愛さんも髪が濡れて……蟹みたいになってます」
……え?なにそれ、どういう意味???
蟹って何!? 私、今褒めたよね!?!?!?!?
「ひどっ!!」
ぷくーって頬を膨らませて、仕返しに両手でピースしておいてやった。
はい、蟹ポーズ返しっ!!
白洲さんは、びしょ濡れのまま、ゆっくりと立ち上がると。
私に、手を差し出してくれる。
その手を――私は、チョキで挟んでおきました♡
* * *
ずぶ濡れでヴィラに着いた私たちは、テラス側にある簡易シャワーと更衣室を発見っ!
白洲さんと一緒に急いで着替えを引っ張り出して、ちゃちゃっとシャワーを浴びて、お部屋の中へ……。
「見てください白洲さん!! 天井に、手が届きませんっ!!」
私は片手をにゅ〜んと伸ばして、全力アピールっ。
え? 普段から届かないだろって??152cmですけど、なにかっ!?(ぷんすこ)
「冷暖房費の面では難がありますが、憧れる気持ちは分かりますよ」
うぅ〜ん、さすが白洲さん。言い方が優しすぎる。
そんなわけで私、いま豪華なヴィラにテラスから突入しちゃってます!!
普通は玄関から入るんですよね!? でもね、私、ついテンション上がっちゃって……。
海を見た瞬間、ぽけー……ってなってる間に、白洲さんと運転手さんが荷物を全部運び入れてくれて……。
気づけばこうなってましたっ!(開き直り!)
ほんと、ごめんなさいっ! すみませんっ!! 許してくださいっ!!!
ちなみに今いるのは、このヴィラの目玉である大きなリビング!
吹き抜けの天井に、大きな窓、振り返れば空と海! エアコンの風がふわ~って……。
「涼し〜〜〜……♡」
私はそのままソファにごろんっ。
すると白洲さんも、ふぅと息を吐いて、隣のソファへゆっくり腰を下ろす。
「喜んでもらえて、何よりです」
んん~~もう! こういうとこ、ずるいんですよ白洲さんっ。
その柔らかい微笑、ほんと反則っ。
……なんて、ふたりで南国の景色に癒されること数分。
「じゃあ白洲さんっ! 海、行きましょうか!!」
ぴょんっ! と私は勢いよく起き上がる。白洲さんも、言葉の代わりに静かに立ち上がってくれた。
「じゃあ、私……水着に着替えてきますねっ♡」
よりどりみどりの水着、いっぱい用意してきたけど……。
最初の一着は……とりあえず、アレ、かな……ふふっ♡
* * *
私は、自信満々で一押しの清楚系ワンピース水着に着替えて、リビングへ戻る。
え? それって露出少ないやつじゃないの?って??
……あま〜〜〜い!!甘すぎるぞそこの男子ぃぃっ!!!
いいですか!? 乳は!! 2日目からなんですよ!!!
どこかの有名な軍師がそう言ってたって、雑誌に書いてあったんです!!!(たぶん)
体型が分かりにくいこの水着だからこそ、逆に想像力を刺激して――
「清楚」かつ「ちょっと気になる」って印象を残す!
それが、大人女子のテクニックなのです!!!
……って、雑誌に書いてあったんです!!!(2回目)
ちなみに私の胸は……全然隠れてない気がするけど大丈夫だよね!?
バレてないよね!?!? ね!?(無理だと思う)
そんな不安を抱えつつ、私は窓の向こうに広がる海を背に、白洲さんの反応を待つ……!
そして彼は――。
「……よくお似合いですよ」
しれっと、いつものシラスマイル(※白洲スマイルの略)で、さら〜っと褒めてきた……。
……ん?んんんん?????
「白洲さん、水着は……???」
「……ああ。私は泳ぎませんので、持ってきていません」
「えええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?」
リビングに、私の絶叫がこだまする!!!
だ、だって、こっちはこの日のために全力コーデで挑んでるのに!?
この色、肌が綺麗に見えるとか、目立ちすぎないカットで男子ウケ抜群とか、全部計算したのに!?!?!?
なのに!!
なのに白洲さんは!!
まさかの!!!
「泳ぎません」宣言っっっ!?!?!?!
「え……ちょ、ちょっと待って!?」
慌てる白洲さんが口を開くより早く、私はくるりとターン!
バサァッとビーチバッグから、ある“モノ”を取り出して掲げた!!
「――そんなこともあろうかと! 白洲さんの水着も、用意しておきましたぁ!!」
自信満々に掲げたソレは……。
\真っ赤なブーメランパンツ!!/
パァンッ☆(効果音:精神にクリティカル)
白洲さんの動きが止まった。顔が……固まった。
え、これもしかしてバグった!?!?
「……罰ゲームですか?」
無の表情で、そう言われました。
* * *
二人、テラスに並んで立つ。
その視線の先には、青くきらめく海――
私は、風に揺れるワンピース水着の裾をそっと押さえて。
そして、隣にいる白洲さんは――
真っ赤なブーメランパンツ一枚という、まさかの出で立ちである。
…………。
いや、ほんと、ごめんなさい。
この水着、ちょっと前に友達と盛り上がって「ネタで買お〜♡」とか言ってたやつなんですよ!?
まさか実戦投入するとは思ってなくて……でも!
……でもね!?
白洲さんのスラリとした、しなやか細マッチョ体型に意外と似合ってて、思わず口から出ちゃったんです。
「……す、素敵……♡」
「……恥ずかしいことこの上ないのですが」
白洲さんは今日も“無”である。
はい、怒ってる? 嫌、ですよね??
――って思ったら、
「しかし、この格好だと……肌で、空気を感じられて。良いですね」
……うん??
えっ、ちょっと待って、もしかして……ハマってます?ブーメランパンツ白洲さん???
さすが“理性の申し子”……逆に全部受け入れちゃうとか何なのこの人ぉぉ!!
そんなことを考えていたら――。
「先に、日焼け止めを塗っても良いですか?」
白洲さんが、さっと容器を取り出した。
はい出たぁーーー!!!!
お待ちかね、日焼け止めイベントーーー!!!!
これぞ夏の合法スキンシップっ!
神様ありがとう!!(海の神様とか太陽神とか全方位に感謝っ)
「あ、私も塗りたいので……その、互いに塗り合いっこ……しませんか?」
ちょっとだけ勇気を出して、そう言ってみたら――
「良いですよ」
白洲さんは、腹筋にきらりと光る汗をまといながら、いつものしれっと顔で、うなずいてくれた。
――え?えっっ!?
なにそのさらっとOK!?!?もうちょっと動揺とか……ないんですか!?!?
いやでも、まあ、いいか。
今、白洲さんの身体は……完全に、私の“合法領域”です♡♡♡




