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クラウドに置き忘れた恋

作者: rhythm

すべての記憶は、どこかに保管されるものだと信じていた。

写真、メッセージ、日々の何気ないやり取り—それらはすべて、デジタルの世界にひっそりと残り続ける。まるで時間が止まったように、そこには一瞬一瞬の感情が、無言で保存されている。


でも、デジタルの世界で永遠のように思えても、人の心はそう簡単に保存できない。どれだけデータを整理しても、感情は整理できなかった。

そのことに気づいたとき、私は過去に置き忘れた「何か」を取り戻そうと決めた。


それは、クラウドの中に残された古いメッセージのように、私の心の奥深くで忘れられた恋だった。

そして、その恋を再び手にするためには、もう一度、あの人を見つけなければならなかった。

でも、もしかしたらその人も、私と同じように何かを置き忘れているのかもしれない。

このままでは、あの恋は永遠に取り戻せないのかもしれない。


それでも、私は信じている。デジタルの世界で失われたものでも、どこかに残っている—それを掘り起こすことで、きっともう一度、心を通わせることができるのだと。


――

これは、クラウドの中に置き忘れた恋を取り戻すために、再び歩き出す物語。

過去の傷と向き合いながら、未来へと繋がる一歩を踏み出すために。

主人公は、テクノロジーが発達した近未来の都市に暮らす、若い女性エンジニア。彼女は、仕事の中で日々データの海を泳ぐような生活を送っていた。彼女には一つの悩みがある。それは、過去に大切にしていた人との記憶が、クラウドに保存されたデータの中に埋もれていることだった。


数年前、彼女は一度、突然の引っ越しで最愛の人と別れることになった。遠距離恋愛が始まったが、忙しい日々に埋もれ、やがて連絡が途絶え、ついにはその人との思い出が自分の中でも薄れていった。クラウドに保存されたメッセージや写真たちは、まるで時の流れに取り残されたように、アクセスされることなく静かに眠っている。


ある日、彼女はクラウドのデータを整理していた際、偶然にもその人とのメッセージや写真が目に入り、胸の奥にひどく痛みが走る。心の中で忘れたはずの思い出が蘇り、彼女は再びその人を探しに行こうと決心する。


しかし、デジタル空間で再び接触しようとすると、思いもよらぬ壁にぶつかる。その人もまた、クラウドの中に何かを置き忘れていたのだ。二人の間には、メッセージやデータだけでは解決できない、心の奥深くにある未解決の感情が横たわっていた。


彼女はその人が過去に何を失い、どんな選択をしたのかを知るために、データの奥に隠された秘密を掘り起こしていく。デジタル世界に残された痕跡が、現実世界の愛の形を徐々に浮かび上がらせていく。



物語が終わり、ページを閉じるとき、心に残るのは、あの人の笑顔でも、消えかけたメッセージのやり取りでもなく、ただひとつ、"忘れられないもの"があるということです。どんなに時間が経ち、距離ができ、技術が進化しても、感情というものはどこにも保存されないのだということに気づかされました。


クラウドに置き忘れた恋は、決してデータとして完全に残っているわけではありません。記憶の中で揺れ動き、時間の中で色あせ、また新しい何かに変わっていく。私たちが愛し、傷つき、成長するその過程こそが、真実なのだと思います。



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