第4話:ウンディーネのアクア
しばらく地底湖を進むと、水色の光を見つけた。ふわふわと漂っている。何かと思い近づいてみる。
「なんだろうこれ?」
あたしがそう呟くと、水色の光が話しかけてきた。
「あなたこそ何ですの?」
突然話しかけられたので、びっくりした。驚きつつも会話を試みる。
「こんにちは。あたしはウィル・オー・ウィスプで、名前はシトリン」
「ああ、あなたウィル・オー・ウィスプだったのですね。初めて見たから分からなかったですわ。初めまして、わたくしはウンディーネで名前はアクアですわ」
自己紹介はされたけど、こっそりと鑑定で見てみる。
【種族:ウンディーネ】
【名前:アクア】
【レベル:1】
【スキル:魔力操作】
アクアさんもレベル1だった。そして魔力操作スキルも持っている。そう言えば鑑定がレベル2に上がってからも使っていたけど、スキルが見えるとか全然気づかなかった。いや、確かに敵を鑑定してもスキルは見えなかった。
今までスキルが見れないものと思い、自分自身のスキルを鑑定して確認していなかった。私のスキルも気になるけど、それは後にしておいてアクアさんのことが優先である。レベル1なのにこんな鬼畜なレベル帯で何をしているのか疑問に思い、聞いてみる。
「ここで何をしているのですか?」
「さあ? わたくしは、先ほど生まれたばかりですから」
「生まれた?」
「ダンジョンの魔物や精霊は、突然生まれるのです。仕組みは分からないですし、わたくしがなぜこのような知識を持っているのかも不思議ですけど」
「今後はどうする予定ですか?」
とりあえず、今後の予定を聞いてみる。適正レベルの階層を目指す以外にもやれることがあるかもしれないという期待である。だが、その期待は外れた。
「特に決まっておりません。どうしようかと考えていたところです」
「じゃあ、あたしと一緒に上の階を目指しませんか? あたしたちのレベルだと、ここはかなり厳しいですから」
「ご一緒してもよろしいですか?」
「はい、よろしいですよ」
なんかアクアさんの喋り方が、お嬢様という感じであたしの喋り方もおかしくなってしまう。ともあれ、仲間が出来たのは心強い。一緒にパーティを組むことが決まった所でちょっと待ってもらい、鑑定スキルを使って自分のスキルがあるかを確認した。
【種族:ウィル・オー・ウィスプ】
【名前:シトリン】
【レベル:1】
【スキル:鑑定、隠密、オートマッピング、危機察知、瞬間移動、自動回復、物理抵抗】
うん、スキルが見えるようになっているね。でも、敵を鑑定した時はスキルが見えなかったな? 高レベルだと見えないとか鑑定を妨害するようなスキルでもあるのかな?
だが、まだ疑問がある。生まれたてのアクアが持っているスキル、『魔力操作』。私は生まれたときに持っていない。何を出来るのだろう? 興味本位でアクアに聞いてみた。
「魔力操作って何が出来るのですか?」
「魔力操作? わたくしの知識からすると魔法を操るための力ですわね」
「アクアさん、何かやってみて下さい」
「さん付けはしなくていいですわ。それと気軽にアクアと呼んで下さいませ。では、魔力操作をやってみましょう」
すると、アクアの水色の身体から水がぽたりと垂れる。
「ふぅ~、こんなものですわね」
「水が少し垂れただけ?」
「まだ魔力操作スキルのレベルが1ですからこんなものですわ」
無の所から少しだが水を出したのだから、一応は魔法だろうけど、これじゃあ戦えそうにない。もっとレベルを上げれば攻撃力として使えるのだろうか? アクアはウンディーネだから水を操ったり出来るのかもしれないけど、あたしはなんだ? それに魔力操作を手に入れる条件はなに?
うんうんと悩んでいるとアクアが質問してきた。
「シトリン様は魔力操作で何が出来るのですか?」
「いや、あたしは魔力操作スキルを持っていないんですよね。それとあたしも様はつけなくていいですから」
「わかりましたわ。ではシトリン、魔力操作を使えるようにしましょうか」
「え? そんなこと出来るの?」
驚きのあまりため口になってしまった。だがアクアは気にした様子はない。
「ええ、ではちょっと失礼しますね」
そう言うとアクアはあたしに触れてきた。青い光の玉のアクアから、金色の光の玉のあたしへと何かが流れ込んでくる。
「今、流れている物が分かりますか? それが魔力の流れです。それを自分で操作してみて下さい」
ぬぬぬっと意識を集中して、その魔力の流れを操作してみる。すると段々と自在に操れるようになってきたら、システムメッセージが表示された。
『魔力操作スキル、レベル1を取得しました』
「おお! 魔力操作スキルが手に入った! ありがとう!」
「では早速、魔力操作を使って魔法の実演をしてみて下さい」
あたしはそのまま魔力の流れをコントロールして魔法を使ってみた。小さな光の玉が自分の少し前に飛び出して僅かな光を放っただけで消えた。一瞬の出来事だった。
「あたしの魔法は光魔法か~。しかもすぐに消えちゃうし」
「シトリンのレベルとスキルのレベルが上がれば、強くなると思いますわよ? 光だから速かったですし。それが攻撃に使えるほど強くなれば、敵は回避不可能ですわ」
「そうかな~」
あまりの弱々しい光に疑問に思う。まあ、魔力スキルが手に入ったし、レベルが上がって強くなれば、アクアが言うように実用的になるかな。
ひとまず実験はこの位にして、アクアと共に上の階を目指すことになった。