第2話:危機です
やがて、魔物を見つけた。思わず通路の曲がり角に隠れる。そして、魔物の姿を確認する。人型をしているが、頭が牛のようになっている。ミノタウロスだろうね。鑑定をしてみる。
【種族:半人半獣】
【名前:なし】
【レベル:984】
レ、レベル984とか勝てるわけないよ。気配を消すようにこっそりと逃げ出す。それでも移動がふわふわとした感じなので、なかなか遠くまで進まない。やっとのことで逃げ出すと突然システムメッセージが現れた。
『隠密スキル、レベル1を取得しました』
おお! スキルが増えたよ! 早速、隠密スキルを使ってみる。
……何も変化がわからないけど、多分かかってるよね……。
自分の今の姿すらわかっていない。隠密で消えているかも確認できない。とりあえず自分の姿を確認したいな~と思い、鏡でもないかな? と考えるが、こんなダンジョンのような所にあるとは思えない。あ! 水場があれば見れるかも? そう考えて地底湖を探してみることにした。
彷徨うこと何時間くらい経ったのだろう。未だに水場が見当たらない。広大と思われるダンジョン。いや、あたしの歩みが遅いだけか? 途中で見かけたものは魔物ぐらいだよ。しかも全部がレベル900代とか、まるで鬼畜ゲーやってるみたいだよ!
鑑定スキルと隠密スキルのレベルが2に上がったことはありがたいけど、キャラクターレベルが1のままなんだよね……。キャラクターレベルを上げて無双をしたいよ。
そこでふと気づく。ひょっとしてここはダンジョンの奥深くなのではないかと。それだとつじつまが合うかもしれない。あたしは水場と共に、上に登る階段を探すことにした。
さらに彷徨うこと数時間。数時間といっても体感なので正確な時間は分からない。
「あれ? なんかここさっきも通った気がするな? ダンジョンだから、通路が同じような作りになっているだけかな?」
そう疑問に思っているとシステムメッセージが表示された。
『オートマッピングスキル、レベル1を取得しました』
おお! これで迷子にならずに済むよ。どれどれ、地図の状態は……。同じフロアをぐるりと一周していた。どうやらオートマッピングの取得となる条件が、『迷子になる』ということらしい。同じ所に辿り着いたから迷子認定されたのだろうな。
「まあ、地図で場所が分かるようになったことだし、まだ黒塗りの部分でもマッピングしますか」
そう呟いてポジティブに考える。
そんなわけで、自分が一周描いた内部のまだ黒塗り部分を進んで行く。進んで行ったら、大きな扉が見えてきた。その扉は装飾が細かく彫られている。
(上に行く階段の扉だろうか? それとも更に下に行ってしまう?)
扉を開けようにも手がなかったので、これも念じてみる。すると扉はゆっくりと開く。途中まで開けると、おどおどしながら中を除く。階段ではなかった。どうやら部屋になっているらしい。
先ほどの宝箱があった部屋は、扉がなかった。しかしこの部屋は扉がある。え? まさかボスとか? もしも、ここが最下層だとしたら、ラスボスじゃないの?
危機を感じたあたしは、音をたてないようにゆっくりと扉を閉めた。
そして、またシステムメッセージが表示される。
『危機察知スキル、レベル1を取得しました』
おお! ありがたいよ! この鬼畜なフロアで危機察知が出来るのは嬉しい!
他の未踏破部分も進んで行き、ようやく上の階に登る階段を見つけた。