表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/189

.


「美咲ちゃんに嫌われると思ったから引いたんだよ」


「だから話しをっ」


「どうだかな。ただ怖かっただけなんじゃないか?」


 一向に話を聞いてくれない二人。次第に話しかけることをやめ、私は無言になっていった。


「どーでもいいだろう? 今はどっちが美咲ちゃんといるかって話しなんだけど?」


「なら、お前が手を引け」


 この後どちらが私と過ごすか、みたいな話の流れ。相変わらず、私のことなど無視して話が進んでる。


「彼女を誘惑されたら迷惑だ」


「だから、アンタには関係ないって言ってるだろう?――“オレのモノ”に、手出しするなよ」


 別に、私は誰のものでもないんですけど……。


「勝手な事を言うな。これ以上の行いは――報告させてもらうぞ?」


「ははっ、告げ口? でもさ、美咲ちゃんがイヤがってなければ問題ないだろう?」


「お前の行動事態が問題だ。大方、無理やり迫ってるんだろう」


 うん、それは確かに合ってる。心の中だけでその言葉に頷いていれば、


「――彼女を渡せ」


 と、叶夜君から意外な言葉が飛び出した。


「渡せと言われて渡すヤツ、いないよ? これからもっと楽しむんだから、早く用事済ませて消えてくれない?」


「楽しむって……お前が言うと、別な意味に聞こえるが?」


「そんなつもりは――あるけどね」


 笑顔全開で答える雅さんに、叶夜君は不満をあらわにする。


「それが本気なら、実力行使に出る」


「そっちこそ迷惑。ジャマせず帰ってよ」


 もうダメだ……ここで言わなきゃ、気が済まない!

 静かに。そして深く息を吸うと、




「…………いい加減にして」




 両手に力を込め、ゆっくりと、怒りを含んだ声を口にした。


「今の……美咲ちゃん?」


「……だろうな」


 雰囲気が違うと感じたのか、二人は口論をやめ、私に視線を向ける。


「美咲ちゃん……ごめんね?」


「俺も……悪かった」


 二人の口調が、次第に汗を帯び始める。ほったらかしにしたのを、今更のように気が付いたらしい。肩から手を離し、謝ってくる二人。それに私は、笑顔で二人の顔を見るなり、


「――ほっといて下さい」


 そう言って、一人家へと歩き始めた。


 慌てて後を追いかけ話しかけてくる二人。でも今は、正直話す気になんてなれない。だから私は、無言を貫くことにした。


「アンタのせいだからね!?」


「俺だけじゃないだろう!?」


「ふんっ。王華おうかだから、その辺の空気が読めないんだよ!」


「っ!……そういうところが、雑華ざっかの悪い癖だな!」


 後ろで二人は、また口論をしている。


聞きなれない言葉が聞こえてくるけど、今はどうでもいい。呆れながら歩いていると、もう自宅が間近に見える位置まで来ていた。


「……今日は帰って下さい」


 振り返り、二人にこれ以上付いて来ないよう言う。笑顔ではあるが、もちろんまだ内心、怒りは消えていない。


「分かった。俺たち二人はもう帰る」


「ちょっと、勝手に決めないでくれる?」


「いいから来い! それじゃあ、気を付けて」


「ちょっ、わかったわかった! 帰るって!!」


 首根っこをつかまれながら、雅さんは叶夜君に連れられ(どちらかと言えば引きずられ)ながら、二人は立ち去って行った。


「まったく。二人は何がしたかったんだろう」


 家に上がるなり、私は私服に着替えた。

 今日から三日間、おじいちゃんは地域の旅行でいない。一人でご飯を食べていると、広い家に私だけなんだと、なんだか淋しい気持ちになってくる。

 ――こんな時は、テレビでも見て気を紛らわそう。お気に入りのハーブティーをいれソファーに腰掛けた。

 しばらくそうしていると……薬が効いてきたせいもあってか、少しずつ、睡魔が襲ってくる。この時の感覚は、ふわふわと浮いているようで好き。




 寝ているような。


 起きてるような。




 意識が曖昧になる心地に、このまま身を委ねてもいいかな、なんて気になってくる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ