精神的な負荷で筆が進む男の話
初投稿です。タイトルの通り精神的な負荷で筆が進む男の話です。続けばどんどん道を踏み外してホラーになる予定でした。
学生の頃に賞を取って数年。
俺はバイトを掛け持ちながら、細々と小説を書き続けていた。
天涯孤独の身で生きる為にバイトに向かい、誰にも評価されない小説を捻り出しながら書くそんな日々を繰り返していた。
そんな俺に変化をもたらす出来事があった。
それはバイトに向かう途中の交差点で起きた交通事故だ。
赤信号を待っている時、隣の男がフラフラと歩きだした。止めようと声をかけたのだが俺の声は届かず、その男は轢かれてしまった。
周囲の悲鳴や、悲惨な光景、香る血の匂い。
俺がもっと大きな声で止めておけばよかった。
追いかけて手を掴むくらいできたかもしれないという罪悪感の中、創作意欲が大きくなっていくことを感じた。
今この思いを書き留めなければと思い俺は自宅へと駆け出した。
そこからのことは覚えていない。
気がつくと翌朝になっていた。
携帯をチェックするとバイト先からの電話がきていた。
無断欠勤をしたことははじめてであった。
急いで店長への謝罪の電話をかけた後テーブルを見ると、机には酒と完成した原稿があった。
昨日家に帰った後、気を失うまで書き続けていたのであろう。
ペラペラとページを捲ると、ここ数年の作品にはない、学生時代の作品のような勢いがあった。
まるで、自分が書いた作品ではないかのように、次の展開に胸を膨らませ最後まで読み切った。
あの事故を目撃してからの俺はおかしい。
今まで気を失うまで小説を書き続けることはなかったし、自分で読んで面白いと思える作品を書いたのも久しぶりだ。
なぜこのような変化が起きたのか考えているうちに一つの真実に辿り着く。
俺は精神的なダメージを受けると、創作意欲が湧くのだ。思い返すと学生時代の作品は家族を事故で失い、自分だけ生き残り病院で入院していた際に書いた物であった。
久しぶりに満足のいく作品を書いた俺は、原稿を書き起こしサイトに投稿する。
充足感の中ベットに寝転がると急に昨日の事故の風景がフラッシュバックした。
目の前で飛び散る鮮血、耳に残る衝撃音、忘れられないあの匂い。
思い出すと今になって気持ち悪くなってきた。
トイレに向かい全てを吐き出す。
先ほどまでの高揚感から一転して現実に引き戻された。
あの悲惨な事故現場は、忘れようと思って忘れられる物ではないだろう。
瞼を閉じるとあの光景が思い浮かぶ。
何度も目の前で繰り返す死に精神がすり減らされる。
そんな中、急に一つのアイディアが思い浮かぶそのアイディアからまた別のアイディアが生まれ膨大なアイディアが生まれる。
このアイディアの波にのまれそうになりだから机に向かい原稿用紙に書きつける。
昨日もこんな風だったのかと考えながら走る筆を止めることができずまた一日中机に向かったのであった。
この作品続かないのですが、この後廃墟に行って幽霊拾ってこようとしたり、睡眠や食事取らないことで忍耐的にも負荷かけようとして失敗したりと少しギャグっぽい展開になったりしながら地獄変をする予定でした。