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past of Dark  作者: 10月猫っこ
1/5

 以前から温めていたお話しで、重要人物の一人である少女の視点から話しを書いてみたくて作り出した小説です。

 結構スプラッタ要素が強くなっていますが、まぁ、裏方作業はこんなもんだよねー、的な造りになってしまいました。

 本編では無く、あくまでもこれはサブ的要素の強い作品です。本編は……いつか書きます、多分、的なノリです。

 ホームページあげていた作品ですが、加筆修正はバリバリに入っておりますので、昔あげていたよりも分かりやすく仕上げたつもりです。昔の作品は余りにも本筋などをはしょってしまい、本人が恥ずかしさで転げ回ってしまうほど自分勝手な話しで、これではいかんと思いながら書きあげました。


 兎にも角にも気に入ってくだされば幸いです。

 あー、どちくしょー。すっげぇ、耳障りだわー。

 耳の奥底から聞こえてくる音に対してそう考えた途端、思わず苦笑じみたモノがあたしの唇の端からこぼれ落ちてしまう。

 自分の吐き出す息が五月蠅く感じるなんて、こりゃ相当にヤバイよなー……。

 なんてことを呑気に考えながら、全身へとまとわりつくように感じる嫌悪感に、自然と眉根を寄せていた。

「あー、くっそー、もぉー、さいってぇー」

 ついつい呟いてから、あたしは側にあったかなり年代物の大樹に背中を預けた。

 背筋に硬い感触が伝わると同時に、いっそ見事なまでにズルズルと足から力が抜け落ちてしまうと、そのままドサンと大地に座り込んでしまう。

 らしくないのは分かってはいても、それでも身体中を支配する倦怠感からは逃げられそうもないのは、この場合、仕方ないのかな、って気もするのだが……。

 再び、大仰な溜息が唇から突いて出ていた。

 余りありがたくも無い結論を下してしまえった後、とりあえずなんとか呼吸だけでも調えようと、あたしは大きく息をすってから同じような形でそれを吐き出してみる。

 瞬間、あちこちから上がった凄まじいまでの痛みに、思いっきり自分の顔が歪んでしまった。

 ……うーむ、これは本格的にまずいかもしれん。

 なにせ近頃は『痛覚』なんぞというものには無縁であったからこそ、痛みがある状況というのは、それなりにヤバイやらマズイやらという事は自覚はしているつもりではあったのだが……。

 っつうよりも、戦闘中は致命傷一歩手前か、許容量越えた痛みしか分からなくなっている自分の身体なのだから、いい加減に自覚を持たなきゃいけないということは、周囲からの耳にたこができるほど言われまくっているおかげと、自分自身がきちんと理解してるという自負はあったつもりだったのだ。一応は。

 再度溜息ににたものを吐き出した後、視線だけで自分の身体をじっと見回して、べったりとした感触の上着を指先で軽く引っ張ってみると、あたしは再度長く深い吐息を漏らしてしまった。

「あー、本っ当に、さいってぇーのさいってぇーじゃないかー」

 先程から同じような台詞しか口にしていないが、それはまぁ、どうしようも無いことだと思いたい。

 心底嫌々ながらも、もう一度じっくりと自分の身体を見下ろしてみる。身に着けている着衣や露出している肌には、様々な色合いの液体がベトベトと身体中に張り付いているだけではなく、今だにあちこちからそれらが滴り落ちて濡れまくっているという状態は、見事なまでに何色かに染めようとしているとしか思えない。

 切り裂かれた自分の身体から流れ続けているモノは紅いけど、時間がたちすぎて固まって黒くなったしまった血痕やら、どう説明したらいいのか分からない色の返り血らしいモノには、辟易どころの騒ぎではない思いが内心で生まれてしまう。

 もう二度と着れないよなー、これ。

 ちょっとだけ、元はスカートだった布地を引っ張ってみる。が、べしゃりという不快感が指先に伝わってくるだけではなく、その役目を放棄しているだけの布と呼ぶのもおこがましい代物になっていたりする。

 とりあえずそこらにあるモノから肌を守り、外気に含まれている寒暖を防ぐため身を包む、という最低限の服としての役割だけは、なんとかかんとか果たしてはいる。けれど、もしもこの場に第三者がいれば、あたしを見た途端にそんな考えを突っ込まれる事請負な姿なのだ。

 付け加えて言うのならば、洗っても決して落ちない汚れどころか、あっちこっちが見事に切り裂かれているのだから、服とは言いがたい代物へと転がり落ちている事は、事実なのだから仕方が無い。

 何というか……こんな事になるとは、思わなかったんだけどなー。とはいえあの状況なら仕方が無いと思いたいけど、そんなのは言い訳であるのだし……この場合致し方の無いことだと言いたい訳だし……。

 ブチブチと小さく口の中でそれらを唱えながら、あたしの現実逃避は始まっていた。

 なんだか、思考がマイナス方向へと坂道をジェットコースターなみの勢いで下がりこんでいる状況なのは、当たり前と言えば当たり前だと声を大にして言いたい。

 まぁ、でも、こんな事を自分が納得できるか否かは別次元の問題だし、この場合は納得は絶対にしたくないと言うのが本音であったりもするんだけどねー。

 内診で突っ込んだ後、思いっきり肩が下に落ちてしまった。

 あぁ、自分は何してんだろ……。

 とりあえず、現実をみよう。うん。

 そう考え直し、あたしは緩く頭を横に振った。

 それから、痛む右腕をそろそろと鼻先に押しつけるように持ち上げたあと、自分のとった行動に小さく失笑がこぼれ落ちた。

 嗅覚なんてのはとっくの昔に効かなくなっているんだから、染みついているであろう臭いなんて分かるわけがない。

 考えようによっては、それはそれで良かったんだろうな。

 もう一度溜息をついて、今度は自分の身体の内側に意識を向ける。

「……これといってってのは、ナシ、か」

 この場合は、ほんっきで有り難いんだろう。

 内臓にも骨にも、特に異常はない。

 切り裂かれた部位は急速に治癒しているから、もうしばらくすれば全て塞がり傷も残ることもなく元通りの身体になる。

 ただ、出血が多すぎたのはまずかった。

 まさか貧血起こして動けなくなるなんて、こんな大ポカ踏むとは考えてもいなかったんだけど。

 まぁ、この場合はあたしらしくていいんだろうな、きっと、と自分に言い聞かせてしまう。

 ふとそこまでの思考を振り返り、あたしは思わず皮肉と自嘲の混じった笑みを外に流していた。

「アホか、あたしは……」

 本当に、阿呆だ。

 今更ながら、何を言ってるんだと自分へ向けて呟いてみる。

 と同時に、バケモノじみた身体に慣れてしまったんだな、と思う。

 ……それも、違う、か。

 慣らされた、って言い方のほうが正しいんだろうな、きっと。

 ふと気が付いて、今だに利き手である左の掌が握りしめている自分の太刀を見下ろす。

 これは、自分の生命を守るモノ。

 自分が自分であることを選んだ時に、自分の手に戻ってきた、武器。

 チラリ、と、それに視線を落とす。

 バサリ、と耳に届いた大きな音に、勝手に身体が反応する。

 自分の気配を殺して、周囲の気配を探るために感覚が鋭さを増していた。

 重さのまるで感じられない太刀、『ファルク』を握りしめる左の手の平に、じっとりと汗が浮き上がってくる。

 そういえば、数まで数えてなかったけど、先程の戦闘でひっじょーにマズイのを逃したような気がちらほらと……。

「って、ヤバイじゃんか」

 一人突っ込みを小さく入れてしまう。

 死体を一つ一つ確認したわけでもないし、確認するほど原形をとどめてるヤツはいなかったけど、確かに『ヤツ』らしいのはいなかった気がする。

 乱戦初期の時点で、斬りつけたのは覚えている。

 手応えはあったし、それなりの深手を負わせたのも分かっている。

 だけど、肝心の死体は……。

 たらーり、と額から一筋分だけ汗が伝い落ちていた。

 見て、ないよなぁ……。

 ひっくり返した記憶の中には、それらしいモノは見あたらない。

 『ヤツ』のことだ。

 どうでもいい雑魚にこちらを任せて自分の体勢を立て直すために、あの場から退いたのは間違いない。

 さすがはランクが違っている、と言うべきなんだろう。

 無論、それが充分すぎるほどに分かってたから、こっちも最初に『ヤツ』を潰そうとしたんだけど……。

 結果的には、見事に殺りそこねてしまった。

 はぁぁ、と思いっきり盛大に溜息を吐き出す。

 まぁ、一対多数、は慣れてるけど、さすがに、一対六十強、という人数では、いちいち確認なんぞ取れるわけもないし、いったい何時どこで何を殺したのか、なんてのも分かっちゃいないんだから、しょうがないと言えばしょうがないんだろうな。たぶん。

 にしても、だ。

「持久戦、か……」

 傷の治癒速度によって、どうとでも転ぶ状況、というのは避けたかったんだけど、これは仕方がない。

 とにかく今は、身体を休め、怪我を完治させることが第一優先だ。

 自分の身体よりも大きな造りをしたファルクを柔らかな草の上に寝かせ、あたしは汗ばんだ手を大地に押しつけた。

 ひんやりとした感触に、自然とホッとしてしまう。

 預けていた背中を一度放して、痛まない程度に身体を動かしながら、あたしはそうっと細い息を吐き出した。

 いつでも動けるような体勢だけは作り上げておくこと。

 これは、まぁ、常識の範囲内であろう。

 血の匂いを辿って、確実に相手がここに来るのが分かってるのだから、必要以上の注意を要するのも、この場合は当然のこと。

 痛む節々を騙しつつ、あたしはそっと両膝を立てて身体に寄せる。

 身体を丸め込むようにしてしまうと、あたしは再び背後の大木に背を預けてゆっくりと眼を閉じた。

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