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御使い様伝説  作者: 七節蒸
幕開
1/5

始点

列車がトンネルを抜けると、薄曇りの空から射す光が車内を照らす。ガタンゴトンとレイルを走る音を聞きながら、窓の外へと意識を向ける。深い緑色で覆われた光景は、随分と遠くまで来たことを感じさせる。

何故自分―――加治達也(かじたつや)が、こんな山中で列車に揺られているかというと事の発端は数日前に入った親父の訃報(ふほう)であった。それは、久しく会っていない叔母から。親父が亡くなったため、遺品整理などのために一度実家まで戻ってきて欲しいとのことだった。

……その時、自分はその訃報を聞いてもどこか他人事のように感じていた。両親は自分が幼い頃に離婚し、自分は母方に引き取られた。それ以降、親父とは一度も顔を合わせておらず、どう反応すれば良いのかわからないというのが正直なところだ。そういった理由もあって断ってしまってもよかったのだが……叔母さんには昔、色々と世話になった。ならば、せめて最後の恩返しとして身内の不始末ぐらいは面倒をみよう。過去の自分はそう考え、久々の帰郷を決めたのであった。

……

回想に浸っていると、窓外の光景に変化が生じていることに気がつく。緑林の中にコンクリートの灰色がちらほらと混じり始めている。視線を列車の先に移すと、そこには山麓に多数の建造物が並んでいるのが見て取れる。

帰ってきた……その懐かしい光景に情緒に浸っていると、ふと違和感を感じる。確かに自分は、望郷の念とは別に、何やら言葉で言い表せない胸のざわめきを感じとっていた。

―――しかしこの時、自分はまだ知らなかったのである。この胸のざわめきが一体何を伝えようとしていたかということを……

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