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アラフォー派遣女子 学びのルール

作者: すみほ

プロローグ

30代で派遣社員として働くことを選び、5年以上過ぎた3人の派遣女子がこれまでに経験した、就業先での様々な出来事。就業先で出会った正社員男子、正社員女子、そして派遣女子との関わりから学んだことを教訓にして、これからの厳しい雇用情勢の中で生き抜く眼力を伝えたい。


この3人の派遣女子から、ささやかだけれども、見落とすと大変なことになるメッセージがあると思うのです。皆さんの日常の職場環境、周りの人との関わりで思い当たることがあるかもしれませんよ。


第一章

新しい就業先


久保ゆり(39才)は、先月から外資アパレル企業で英文事務担当として派遣されている。外資独特の、Temp to Perm(派遣から正社員へ)の可能性もあるポジションだった。過去に派遣されたスタッフも既に3人正社員になっている。


34才で12年間正社員として働いていた日本企業の商社を退職し、派遣になって5年。新卒で入社した会社を辞めたのは、ぶっちゃけ「出会い」を求めたかったから。

そこそこ仕事も任されていたけれど、役職者になれる可能性はないし、好きだと思える男性との出会いもなかった。言い寄られたこともあったが、自分は好きにはなれなかった。


出会いだけでなく、仕事のスキルアップもしたかったことも事実。外資企業では、年齢に関係なく実力社会。成果を出せばそれ相応に、サラリーにも跳ね返るし、ポジションにもつながる。厳しいけれど、仕事が広がれば色々な出会いも広がっていく。


この5年で、もう2社就業先を変っている。2社とも日本の企業だった。

1社目は10か月期間限定で、その後2社目は契約更新に合わせて終了を申し出た。


この4年間特に嫌な思いはなく、就業先で良い人とのつながりもそこそこできた。続けようと思えば続けられた仕事だった。でもやはり外資企業に変りたいという希望がこの数か月でふつふつと湧いてきたからだ。


配属されたのは、広報部だった。

広報担当として、社内サイトの英訳を担当したり、お客様からの請求書の処理や、外部翻訳者から上がってきた翻訳のチェックや、翻訳会社との調整がメインの仕事だった。

外資系らしく、人の出入りも多い環境だ。


課長の野中真理恵は女性で45歳独身。フランス語と英語に堪能な女性だった。

「久保さんはうちが外資初めてだと思うから、色々と勝手がこれまでと違うこともあると思うけど宜しくお願いしますね。」


初日に声をかけられ、ひとまず安心。アラフォー近くなると、上司との年齢も近くなってくる。


「なんとなく嫌だな。それに女性の上司かあ・・」


憧れて入った外資でも、アパレル業界という環境もあってか、女性の活躍が多い。

野中が嫌だということではなく、これまでと違う環境が嫌だと感じたのは、ゆりにも驚きだった。

でも、このファーストインスピレーションは、心の奥底を反映したものだ。ないがしろにしてはいけない。


同じ業務をしている正社員の山田美紀子は、3歳年下だが、このポジションは既に3年こなしているとのこと。


「何か分からないことは基本的に山田さんに確認して、野中課長にも都度聞いていくようにしよう」


でも、年下の人に不明点を確認するのか・・

仕事だからと割り切っても、やはり少し抵抗がある。


「久保さん、私シングルマザーなんで、時々娘の学校のことで休まなきゃいけないこともあるんですよ。

だから、私が休んだ時に、久保さんにカバーしてもらえると助かるんです。宜しくお願いします。」


「こちらこそ宜しくお願いします。外資企業って私初めてで。色々とご迷惑おかけすることもあるかもしれませんが、頑張りますので。」


「私もここが外資初めてだったんですよ。外資って言っても、本社からの人間って社長しかいないんで。

後みんな日本人でしょ?でも半分は海外の滞在経験の人たちが多くて、やっぱり英語はペラペラの人多いんですよ。久保さんは?」


「私は学生時代に半年オーストラリアに語学留学しただけで・・」


ゆりは海外経験はほとんどなく、英語はほぼ独学で勉強してきた。


「そーなんですか?面談でやった英作文の試験、パーフェクトだって聞いてる。すごいですね!」


「そんなこと・・」


自分の性に合っているのか、語学留学以外は沢山のお金をかけずに英語を身に着けられてはいる。

その分、外資企業で英語で仕事でこなせれば、尚プラスになる。


「山田さんは英語はどちらで?」


「私は英文科だったんですよ。J大学の。」


「J大学?すごい!」


J大学はゆりが第一希望で入試で落ちた大学だった。

他に受験した4大もダメで、滑り止めで受けた短期大学に唯一合格したのだ。


「それでも、こうして同じ職場で同じ仕事はできるもんなんだ・・人生って何が良いのか分からない・・・」


学閥や年功序列の世界が当たり前だったゆりには、違和感を感じながらも、外資企業での現実を目の当たりにした気がして、心が引き締まる思いだった。

















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