お茶会。
馬車がお城についたところでお嬢様、
「お前はわたくしの後ろにちゃんと控えてるのよ。ドジなんだから気をつけて。粗相なんかしてわたくしの評判を下げないでよね」
そうツンとした顔で仰って。
ドアが開き宮廷侍従のエスコートで赤い絨毯の上におり、お嬢様に手を差し伸べる。
「お気をつけて」
ふん、とした顔でお嬢様が優雅に絨毯に降りた。真っ赤なドレスに身を包みそれなりに綺麗なんだよね。もっと笑みを浮かべればいいのに勿体無い。
そう思いつつお嬢様の後ろ三歩遅れて付いていく。
大きな扉が開き、中庭の様子が見えると其処には大勢の貴族の子女がもう集まっていた。
「やあクローディア。久しぶりだね。君も今日から社交界デビューかい?」
そう、ちょっと気障ったらしい男の子から声がかかる。
「ガッシュさま。お久しぶりでございます。おじさまの快気祝いでお招き頂いて以来かしら。本日はよろしくお願いしますね」
そう笑顔で挨拶するお嬢様。ああ、聞いた事がある。クロノ伯爵家の長男か。
うん。こういう風に笑顔でいればそれなりにかわいいんだから。
結局。
メイド長の呼び出しはわたしにお嬢様のお付きでお城に行くように、との通達だった。
「ええ? いいんですか? お嬢様わたしのこと嫌ってらっしゃるから……」
そう思わず言っちゃって後からしまった、って思っているとメイド長様、
「わたくしたちはこの由緒あるアジャン家にお仕えしているのですよ? お嬢様の一時の感情でわたくしたちが態度を変えることは有り得ません。それはお嬢様にとっても良くありませんからね。貴女は自信を持って、お嬢様の侍女として恥ずかしくない行動を取りなさい」
ああ。メイド長様が押し切ったのね。
わたしははいかしこまりましたとその場を離れ、今日はこうしてお嬢様の後ろに待機しているのだった。
まだ王子様は現れていないみたい。
貴族の子女はもうたいがい揃ったのかな?
綺麗な庭園での立食パーティーみたいな様子。
お茶会って言ったら室内想像してたけどそうでもないみたい。
中央に舞台がしつらえてありそこから抑揚のある術式の調が聞こえてくる。
宮廷術師の余興かな。
マシン=マスターの素養が無くても術式を謳うことで力を発動させる事は可能だしそんな研究をしてきているのが彼ら宮廷術師なのだった。
調べに合わせ舞台の前の噴水の周りに光が生まれ、色鮮やかな舞が踊る。
……タノシイヨ。
……ウレシイヨ。
……モットオドロウ。
そう、アーク達の声も聞こえてくる。
よかった。楽しそうだ。