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追放悪役令嬢の旦那様【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第三部

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レグルスのおせっかい【後編】



「ウォッホーン!」


 ……扉から謎のわざとらしい咳払いが聞こえる。

 ちょうどいいから「どうぞ。あと便箋とペン貸して」と告げるとすぐに扉が開く。

 いかにも「はあ?」な顔をしたレグルスに、ラナが大慌てで駆け寄った。


「レグルス〜! 便箋とペン! 便箋ちょうだいペン貸して! 今すぐにお父様に手紙を書かなきゃいけないのよおおぉ!」

「お!? ちょ、ちょっとちょっと落ち着いテ! エ? なんでそんな事になってるのヨ? あ、ああ、ハイハイ、今あげるから落ち着きなさイ」

「うえええぇんっ」


 応接間に用意された庶務机からレターセットを取り出し、インクとペンも用意してくれるレグルス。

 接客用のテーブルで半泣きになりつつ手紙を書き始めるラナ。

 俺は入り口に戻ってレグルスの隣で待機。

 手紙を覗き見るほど、デリカシーなしではない。


「一体なんの話してたのヨ? ちゃんとさっきの件について話たのよネェ?」

「えーと、そこに持っていく流れの途中で意外な事が発覚したらしく……あのように手紙を書いておられる?」

「な、なによソレェ……」

「んー、なんか……まあ、俺にラナの護衛兼保護を依頼した大元が陛下だとは思わなかったみたいで」

「…………。へ?」


 おや?

 レグルスの方も目を丸くしたぞ?


「ちょ、ちょちょチョッ……エラーナちゃんの事をアナタが保護してたのって『青竜アルセジオス』の王様の依頼だったノ!?」

「息子の粗相で宰相様と対立させるのまずいと思ったんだろう」

「! ……そ、そうだったノ……お、王様だなんて、そんな一番偉い人が出てくるとは思わなかったわヨッ」

「そういうもの? でもラナは一応公爵家の一人娘なんだぜ?」

「……あ、アァ、マア、そ、そう言われるとネ……でも、まさかでしょウ」


 ……そういうもの、なのか?

 もしかして『青竜アルセジオス』は貴族の縦割りが強いから、王様がきちんと管理しなければ立ち行かなくなるから、か?

 そう考えるとアレファルドは本当にやらかしたなぁ。

 これからの成長を祈る。


「あの……」

「ア、そうだワ。先に紹介しておくわネ」

「ん?」


 廊下から声。

 振り返ると、花のようなお嬢さんが立っていた。

 俺と似たような髪と目の色。

 ショートボブの髪にはリリスの花の髪飾り。

 おお、なんという正統派美少女だろう。

 着ているものがオンボロ継ぎ接ぎワンピースでなければ、どこへ出しても恥ずかしくない淑女になれるのでは?


「クラナです、初めまして」


 深々とお辞儀をされた。

 ちらりとレグルスを見るといらんウインクをされる。


「施設最年長の十六歳、クラナよン」


 ……かなりどうでもいい投げキッスまでされたので避けた。

 本能的に避けた。

 こればかりは仕方ない。


「本当は十五歳で施設から出なきゃいけないんだけど、下の子がまだ小さいからって事で残ってたんですっテ」

「へえ?」

「は、はい。わたしが去年出る時に、生後半年の赤ちゃんが入ってきてしまって……それも、二人も」

「? 話では……」

「…………」


 子どもは七人。

 最年少でも六歳だと聞いていたんだけど……。

 乳幼児がいる?

 けど、この子が今十六歳で、施設卒業する歳が十五歳という事は——。

 俯いて深刻そうな顔になる彼女を見た時、息を飲む。

 しくじった……。


「……そう。……じゃあ、まあ、具体的な話をしようか」

「え? は、はい」

「今ちょっと応接間は使用中なので、他の部屋で話す?」

「そうねェ……じゃあ三階の空き部屋を使いましょうカ。エラーナちゃん、アタシたち三階にいるから、手紙書き終わったら一階の配達屋に頼めばイイからネェ?」

「うんありがとうー!」


 と、いうわけで三階に移動。

 隣の部屋からはぎゃあぎゃあと子どもの声が響いている。元気なのはいい事だ、うん。

 簡素な木製の椅子とテーブル。

 壁は木の板が打ちっ放しで壁紙もついてない。

 窓にレースカーテン。

 椅子に座って、とりあえず彼女の話を聞く事にする。


「まず紹介するわネ。この人がユーフランちゃんヨ。施設が出来るまでアナタたちを預かってくれる家の人」

「よろしく」

「よ……よろしくお願いします」


 しかし十六歳ともなると普通の淑女の年齢ではないか。

 隣のドタバタしてる子たちの方が気になるなー。


「子どもたちの健康に関してだけど、メリンナ先生には一人を除いて問題なしと言われたワ」

「! ……病気?」


 それは心配だな。

 治療費ならうちで出す、と出かかる。

 口に出す前に、クラナが俯いたのだ。


「病気というか……その、もっと深刻で……」

「『赤竜三島(ヘルディオス)』では分からなかったんだけど、メリンナ先生に診断してもらった結果、ファーラという十歳の女の子が『加護なし』と言われたノ……」

「……!? 『加護なし』!?」


 思わず立ち上がりそうになった。

 早々にとんでもない事態をぶっ込んで来てくれたものである。

『加護なし』……それは『聖なる輝き』を持つ者の真逆。

 守護竜の加護を得られない者を指す言葉だ。

 そのため、『加護なし』は竜石道具を使えない。

 なぜ加護が与えられないのか。

 一生加護が与えられないままなのか。

 その辺りは謎に満ちている。

 なぜなら、『加護なし』と分かるとみな不吉がって迫害され、いつの間にか人里から離れて消えてしまう。

 貴族の場合はより悲惨で、そもそも公表されないまま朽ちるまで監禁される。

 俺の髪や目の色がこの国で『不吉』と言われるのとはわけが違う。

 存在そのものが『不吉』と言われているのだ。


「……よく十年生き延びたね?」

「あの国は族長とその分家しか竜石道具を持っていないからネ。それが幸いしたんだワ」

「なるほど……」


『赤竜三島ヘルディオス』は神竜を信仰する国だ。

 もし『加護なし』だなんてバレていたら即刻殺されていただろう。

 まさか竜石道具がない事で生き長らえたとは……。


「……この国でも『加護なし』は歓迎されないだろうな」

「エェ……。バレると面倒そうだから、他の人間には話してないワ。メリンナ先生はそもそも興味なさそうだったケド」

「それがいいだろうなぁ」

「あの、ファーラはどうなるんでしょうか」


 不安そうなクラナ。

 この子にとってはそのファーラという女の子も妹、家族同然なんだな。

 例えば俺の弟の一人が『加護なし』だったら——。

 そう考えると、いたたまれなくなる。


「んー、まあ、それでも施設で暮らせばいいんじゃないか? これまで竜石道具なしで生きてこれたなら、難しく考えずに、さ」

「!」

「ユーフランちゃん、イイノ?」

「竜石道具は生活を豊かに、楽にさせるもの。ただそれだけのものだもん。使えないだけなら生きるのが少しだけ不便なだけだろ。うちの牧場は自給自足だし、竜石道具が使えなくても大丈夫だよ」


 周りの人間まで使えなくなる、とか近くにある竜石道具が使えなくなる、とかはさすがに困るけど。

 せっかく生き延びたのなら……本人が生きたいなら、生きればいいんじゃない?


「あ、ありがとうございます……!」

「君にお礼を言われる理由はないけど」

「ウフフフフ。ああ、けどクラナ、ユーフランちゃんは結婚してるからネ?」

「は!?」

「?」

「な、なななななんば言いよぉっとぉ! んもお! レグルスねぇちゃんはすんぐそういう事に話を持ってきたがんだからぁ!」

「……!?」


 な、なんて?


「…………あ……」

「ごめんなさいネ、うちの子ちょっと感情的になると訛っちゃうのヨ。マァ、これはこれで可愛いから許してあげてネ☆」

「はぁ……」


 絶対わざとだろ。

 やれやれ、別に訛るくらいいいけどさ。


「それで、エラーナちゃんの牧場カフェ、人手不足になりそうなようならクラナを使ってあげてくれないかしラ?」

「あー、確かに一人で切り盛り出来そうな店舗じゃないからな。そうだな、まあ、その辺は店長と直接交渉して」

「だ、そうヨ、クラナ。働き口は用意してあげたから自分で確保なさイ」

「う、うん」


 ちゃっかり者め。


「えーと、じゃあ次だな……」


 まあ、そんな感じでラナが来るまでに最年長で施設の代表者になる予定のクラナに『国民権』に関する説明をした。

 申請手続きに関する事や、今後の生活の流れ、施設の図面などで他に必要なものや気をつけるべき事などを彼女から指摘してもらいながら話は進む。

 あっという間に空が暮れそうな時間になったので、その日はお開き。

 早ければ今日連れて帰ろうと思ったんだが……。


「今日はやめておきましょうカ」

「そうだな、夕飯食いっぱぐれる」

「あの、ありがとうございました」


 明日、という事になった。

 他にも買い出した方がいいようなので、また買い物だな。

 で、ラナは……。


「ふふふ、これでお父様は大丈夫ね!」


 と、一人入り口の脇で仁王立ちし、腕を組んでドヤ顔ってるので大丈夫そうだ。

 レグルスに背中を小突かれ、振り返ると「今夜こそ話の続きしておきなさいヨ」とかなりの距離で言われる。

 この顔が数センチの距離にある圧ときたらだよ。


「わ、分かってるよ……」

「本当ニィ? アナタ、自分の恋愛感情もエラーナちゃんに告げずに結婚したんでショ? そんなの女は不安に決まってるじゃないノ〜。ちゃんと安心させてあげなきゃダメヨ」

「…………。分かったよ……がんばる」


 それでラナが安心するかどうかは別な話だと思うけどね。

 そう思いつつ、その夜はおとなしく牧場に帰った……が。


「ヨシ!」


 額を拭う令嬢。

 と、いう絵面は慣れてしまった自分がいる。

 夕食後、子ども部屋に二段ベッドを配置して、店舗二階は子どもたちの遊び場兼勉強スペースに模様替え。

「どうせ開店は先延ばしだからいいのよ!」との事だが……いや、本人がいいんならいいけどさ。


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