第一話 ネコフキツ
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この物語は、全くストーリーを考えていません。
感動皆無の作品なので、あらかじめご了承ください。
私はその少女に腕ひしぎを決めた。
「助けて!ロロ!!」
痛みに叫ぶ少女。
「今いくよ!ララ」
剣をもって迫ってくる少年。
私は少女の腕を脇腹の方に押し込み完全にへし折ると、少女を投げながら立ち上がる。
一気に間合いを詰めて、剣を水平に振るう少年の攻撃を頭を下げてかわし、少年の胸ぐらを掴み、足を引っ掛けてこかし、床にその頭を叩きつけた。
「グワァ」
「ロローー!!クゥゥゥゥ」
少女が怒りのままに殴ってきた。
少女の右拳とすれ違うように、私は左に避け、そのまま、少女のみぞおちに腰のきいたグーパンを入れた。
「ハゥ……」
ズルリと少女が倒れる。
ブザーが鳴った。
戦闘終了の合図だ。
高さ、幅、奥行、50メートルの箱型のこの仮想空間は試験場で、実戦はこの5倍の広さの場所で戦う。実戦で何と戦うのかは長くなるから追って話そう。
ブザーが鳴り止むと私は目を覚まし現実へ戻って来る。
清潔感のあるカプセル状ベッド、その中に私は寝ている。ベッドにはいくつもの管が繋がれ、私の上には透明なプラスチック製のカバーがされている。
カバーを開き、試験官の奈良 逸男副支部長は試験書に成績か何かを書きながらこちらを見もせずに言った。
「訓練なしとは思えない成績だ。戦闘技術・精神力・仮想空間への適性、すべて水準以上だ、さすがは元軍人と言ったところだな」
私はベッドから出て賞賛への返事をした。
「お褒めに預かり光栄です」
「合格だ。戦闘所には私から話を通しておこう」
奈良さんはまだ私を見ない。
冷たく、冷静沈着はその瞳はメガネを通しても鋭さ薄れることはなく、もう50を過ぎていると思うが、そのルックスと冷ややかな目は衰えを感じさせない。
「はい、ありがとうございます」
「それと、成績表の写しだ。この成績は女性では藤高とお前だけだ。自慢するなり、記念にするなりするといい」
そう言ってようやく私を若干睨むように見ると、奈良さんは多忙を理由に何処かへ行ってしまった。
「帰れってことか……?」
時代は産業敗北の真っ只中、機械が生産性という面で優位に立ち、職場を守ろうとする人々が必死に働き疲弊する社会。
人の興奮はロボットの格闘技やアニメ、アクション映画などにすら反応が鈍くなり始めていた。
そんな中で絶大な人気を博していたのが歴史上最大の異種格闘技「ピーナッツ」である。
ピーナッツの戦士は、視聴者、団体から送られてきた対戦相手と仮想空間にて条件付きで戦う。
勝てば、視聴者、団体には金一封が贈られ、戦士たちが勝利した場合には給料以外のボーナスが与えられる。
送られてきた手紙やメールを元に仮想空間で対戦相手を召喚、戦闘のレベルをコンピューターもしくはマスター(仮想空間での戦闘の責任者)が判断し、そのレベルに応じて戦士たちに条件が課せられる。
さて、私がやってきたのはピーナッツ日本支部、綾木戦闘所。
仮想空間へはこの前のカプセル状のベッド(通称 転送機(正式名称は知らない))とそのシステムがなければいけない。それらが整った場所がこの戦闘所である。
世界に活動地域を広げるピーナッツの戦闘所は各地にあり、日本にもこの綾木戦闘所の他に六つほどある。
清潔感のある三階建ての小さなビル?に私は足を運んだ。
所長に挨拶をして実戦の説明を受け、晴れて私は戦闘所所属の戦士となれる。
少し厚めの引き戸を開けば中はほぼ倉庫のような、物置のような。階段を上ると、小綺麗なオフィスのような。
「おはようございます。新しくこの戦闘所に配属になります。頑 願子です。所長はおられますか?」
オフィスにいたのは二人。
一人はコーヒー片手にパソコンで作業をしていた、かなりふくよかな優しそうなお姉さん。もう一人は書類を見ていた、バッチリスーツでガタイのいい中年男性。
「ああ、話は聞いてますよ。私が所長の満島 薫です」
中年の男性が所長だった。おそらく体格的に元戦士だろう。
私はその所長のデスクまで行くと一つ頭を下げた。
「この新米、命をかけて戦い抜きます!これからよろしくお願いします!」
頭をあげれば引き気味の所長。
「頑さん、ここは別に軍隊じゃないので命をかける必要はありませんよ」
「はい!」
私の返事に微笑する満島所長は私を三階へと案内した。
三階には巨大なコンピューターボックスと転送機がいくつか置いてあった。
その設備を点検しているまだあどけなさの残る成人前ほどの女の子に、満島所長は私を紹介した。
「藤高さん、この人がこの前話した新人の頑 願子さん」
「よろしくお願いします」
どこかボーッとしたような女の子は私に握手を求め、私が手を握ると微笑み言った。
「こちらこそ〜、マスターの藤高 荵です」
奈良副支部長の言っていた藤高とはこの人のことだ。
手を握ればわかる、この子がただ者ではないくらい。
「さて、早速始めてもらいますよ。いいですか藤高さん」
「は〜い、所長。説明ですよね」
穏やかでゆったりした印象を受ける所長より、藤高さんの口調は圧倒的にゆったりしていて、この二人の会話はとても遅い。
「じゃあ、ネコさん。どうぞ〜、こちらへ」
藤高さんに案内された転送機へ入る。
本部の転送機と比べると少し寝心地が悪い。
プラスチックの透明な蓋がされ、私はゆっくりと沈んでいく。
ゆっくりと、戦いだけの世界へ。
「どうですか〜。体調に異常がなければ実戦の説明を開始します」
どこからともなく藤高さんの声がする。
試験の時とは比べものにならない広さの仮想空間、白く清潔感しかない場所だ。
私は自分の体を見回した。特に異常はないが。
「大丈夫です。けど、なんですか、この服は」
紺のジャージ、左胸には綾木の白文字。
「綾木戦闘所専用戦闘服です」
「この戦闘所の人はみんなこれを着て戦うんですか?」
「はい、そうです。始めていいですか?」
「……はい、お願いします」
何か中学生のようでダサい気はしたが黙っておいた。
突如として私の目の前に白字で敵と書かれている自立する赤いサンドバックが出現した。
「殴ってください」
「はい」
バシイッ!
結構な力で殴ったが倒れかけたサンドバックは起き上がってきた。
「これがレベル1の状態です。では、続いていきま〜す」
ほのぼのとした声がすると次は私の背後すぐに、工具箱のような青い箱が出現した。
「開けて中のもので先ほどの的を攻撃してください」
工具箱を開けると中には短刀と回転式拳銃が入っていた。
この場合、拳銃には弾を装填する必要があり、とっさの判断として有効なのは……。
私は短刀を手に取ると、サンドバックに投げつけた。
ザスッ!
「うまい具合に刺さったな」
「これがレベル2です。ではどんどんいきましょ〜」
もう一つ、黒い工具箱が出現した。
「先ほどと同様です」
黒い工具箱の中には黒い手袋と黒い長靴のようなもの。
「ここ、綾木戦闘所の特殊武器、パワーグローブとパワーブーツです。両方装備し、それぞれについた輪っかを引っ張って攻撃してください」
私は両方装備し、右手のグローブの手首あたりについた、指輪より少し大きい程度の輪っかを引っ張り、短刀の刺さったサンドバックを殴った。
ブァスイィィン!
サンドバックは30メートルほど吹っ飛んだ。
「ブーツの輪っかを引っ張り、跳躍してください」
言われたように輪っかを引っ張り、ジャンプ。
15メートルほど私は飛び上がった。
足から着地したがブーツのおかげか痛くない。
「制限付きの装備なので〜、輪っかを引っ張ってから15秒間だけですが、起動中に引っ張ればまた15秒なので覚えておいてくださいね〜」
「なるほど、これは大したパワーアップだ」
「これがレベル3です。あとわあしの戦術指南が可能になります。次はレベル4です」
次に現れたのは味方と書かれたサンドバック。
「レベル4からは大幅に変更されます。まず、一人では戦闘が開始できなくなります。運営としても負け戦をされると不利益なので〜。それから〜先ほどのパワーグローブとパワーブーツは輪っかを引かずに機能するようになります」
ズゥブァスィィィン!
「ほんとだ」
味方と書かれたサンドバックは先ほどのサンドバックと同様に吹き飛んだ。
「それと〜。まだネコさんはまだ未勝利なのでありませんが、今まで勝利したレベル3以下の敵のデータを使用して戦うことが可能です」
「データ?」
「その敵に変身できるってことです。あと何か欲しいものを言ってください。既存の物じゃなくても結構です」
欲しい物?
「じゃあ、UFO」
するとさっきのサンドバックがあったところに、セダン車ほどの見るからになUFOが転がった。
「要望があれば、搭乗、滞空、攻撃、ワープ可能なUFOも支給できます」
「そんなのありなんですか?」
「はい。二つまでですがそれくらいしないとレベル4の敵には勝てないので〜」
レベル4は確か、現実世界では間違いなく猛威を振るうであろうモノ。だったか。
「過去、綾木戦闘所が倒したレベル4の例をあげるとですね〜。瞬間移動する30メートルくらいの龍とか、弾道が変更できるガトリングガンとかです」
なるほど、弾道が変更できるガトリングか、確かに現実では猛威を振るうだろうな。
「さて、最後はレベル5です。レベル4では一人の戦闘が禁止ですが、最大人数はその戦闘所所属の戦士全員です。が、レベル5は全世界の戦闘所から戦士を集います。それはもう賑やかですよ〜」
「そんな大勢で戦うんですか?」
レベル5は勝つことが最難の敵だったはずだけど、世界レベルで戦えば勝てるのでは。
「なかなか難しいんですよ〜。一番最近のレベル5だと毒を操る男ですね、毒ガス、毒雨、近づけば致死量の毒で即退場、銃弾や剣などの金属もさびて粉々、それで惨敗でした」
「確かにそれは数、関係ないですね」
「あとはレベル4の敵のデータも使えるようになります。ちなみにレベル5は誤作動なんかで乱入などされると厄介なので、戦闘が終わり次第プログラムを解体します。ですので〜レベル5の敵のデータは使えません」
「なるほど」
「以上で実戦の説明を終わります」
ブザーが鳴った。
「これはどこも共通なんだな」
頑 願子がその他の戦士たちに自己紹介を終え帰った後。
所長と藤高は新人について話していた。
「藤高さん、どうでした?頑さんは見込みありそうですか?」
ホットコーヒーをすすりながら藤高は言った。
「まだわからないですね〜。飲み込みは早そうです」
「そうですか。元軍人なのは知ってます?」
「はい。軍曹だったみたいですね〜」
「さすが、藤高さん。そこまで知ってるとは。じゃあ、不吉のネコっていうのは?」
「不吉のネコ?」
「はい、彼女は戦場で成績を残してのし上がっていった人らしいんですが、彼女の作戦が終わる頃には戦場には彼女しか立っておらず、敵も味方も全滅しているということが何度かあったようで」
「それで不吉のネコ。ですか」
「指揮能力が乏しいというだけで、彼女は相当優秀なはずですよ」
「まあ、これからに期待ということで〜……」
次から、最終話までずっと戦うので、「全然バトルじゃねぇじゃん」とか、勘弁してください。
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