清洲
山崎の戦いが終わってからすぐに清洲城で明智光秀の遺領分割会議、後の『清洲会議』である。参加したのは、織田家重臣の柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興であった。本当は滝川一益も参加予定だったが、後北条氏との戦に大敗し間に合わなかったとも大敗し関東における織田の勢いを失わせたから参加を拒否されたとも言われている。
「羽柴殿、此度の勝利おめでとうござる。」
「はっ、有難う存じまする。あの丹羽殿に褒めていただくなど勿体のうございます。」
「ふんっ、猿めが図に乗るでないわ!」
「はっ、申し訳のうございます。しかし、柴田殿は此度の戦で手柄を立てておりましたかな?」
「なんじゃと? 猿の分際で儂を愚弄しおって」
「まあまあ、羽柴殿も柴田殿もやめて下され。池田殿も何か言うてくだされ。」
「羽柴殿も柴田殿もやめてくだされ。」
「ふんっ、丹波の言うことを聞いたまでではないか。池田のくせに儂に説教をするとはな、今に見ておれ必ずや後悔させてくれるわ!」
そう言って柴田勝家は出て行ってしまった。この時の言い争いが引き金となり、秀吉と勝家は争う事になってしまう。
「まあまあ、羽柴殿落ち着いてくだされ。そうじゃ、茶会でも開こう」
そう丹羽長秀が言うと秀吉の顔がみるみる明るくなっていった。
「本当に羽柴殿は茶会が好きでございますな〜」
「お恥ずかしながらこれは亡き上様の影響でごさいます。」
「上様は大変に茶の湯を好んでおられましたからなぁ」
「ははっ」
「何かおかしなことでも言いましたかな?」
「いや、丹羽殿は何もおかしいことは申されておりませぬ。ただ、上様のことを思い出し、笑ってしまっただけにございます。」
「本当に羽柴殿は上様をお慕い申し上げておるのですな」
「もちろんにございます。今の某がおりますのは、上様のおかげでございますゆえ」
「確かにそうでございますな。ところで、羽柴殿は織田家の次期殿にどなたを押されるおつもりか?」
「某は三法師様を押し奉るつもりでございます。」
「なんと! まだ幼い三法師様をでございますか?」
「いかにも」
「本気でございまするか?」
「はっ、本気でございまする。」
「… 何か考えでも有ると申すか?」
「考えはございまする。」
「わかり申した。それがしは羽柴殿を信じまする。」
「丹羽殿… かたじけのうございまする。」
こうして丹羽長秀は羽柴秀吉に味方することを決めた。そして、池田恒興も秀吉に味方する意向を示した。この羽柴秀吉と柴田勝家の対立は織田家の家中をも揺れ動かす騒動となるとは秀吉は考えてもいなかった。




