表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/34

2.湯煙温泉騒動記-2

評価、感想、など頂ければ、モチベ維持並びに作者が喜ぶという特典が付いてきます。

切に!


 身構えていたのは、十数分であろうか?


 余震に控えていたが、結局地震は1回だけだった。

 かなりでかいのが1回だけ。


 座敷童っぽい外見のナニカの窮状を裏付けるように、でかいのが1発。


 1発だったのが逆に不安を駆り立てる。旅館の人たちの動きは止まったまま。お客さん達は、窓から外の揺れる電線を見ていた。


「はっ! これは! まさか火山性地震?」

 さっそくブルーが溜め込んだ知識を披露しだした。


「なんで分かるの?」

 妹は座敷童をしっかりと抱いている。うん、守ってやったんだね! 偉いぞ!


 ……怖がったら妹とスキンシップできる?

 よし!

「……お姉ちゃんも不安で心細くて――」


「余震がなく、本震だけが発生。典型的な火山性地震ね!」

 妹に抱きしめてもらおうとしてワザと怯えたフりのお姉ちゃんは無視かよ!


「何だあれは!」

 外を見ていた客が大声を張り上げる。おなじく外を見ていた客の間に、ざわめきが走る。


 坂の上の旅館からみると一段下になる大通り。

 直立したサイにモグラの腕。

 そんなビジュアルの巨大生物が、ゆっくりと体を起こした。


「魔獣ネクライマー……」


 素体はユンボか油圧ショベルだろう。


 それが窓越しにこっちを見ている。

 妙に現実離れした風景だった。


「あきらかにわたし達を誘ってるやん!」

「いつも通り、人の目は僕が何とかするニュ。マジカルキューティ! 出動だニュ!」


 それがスタートの合図。三人が飛び出した

 妹の背中だけを守る為、あたしも飛び出そうとして――つんのめる。

 あたしの動きを止められるほどの強い引き。


「なに?」


 スカートの端を引っ張られていた。ちょっと、パンツが見えるでしょ!


 つぶらな瞳があたしを見ていた。


 小さな口が開く。

「妾は模糊根山の神……」


 ……日本由来の神、または八百万の精霊といったところか。


「二つの異界の神。どちらも滅してはいけない。どちらも生かしてはいけない」 

 ここで言う異世界の2神とは、何を指す?


「頼むぞ、同胞よ」

 同胞と言われてモナー。


 幼女、いや模糊根山の神は、スカートを握っていた手を離した。

 非常に迷惑を被った気がして、果てしなく荷が重いが、妹の安全確保が望みにつながる事もあるかもしれない。

 頭を切り換えて、外へ飛び出した。




「でけぇな!」


 三階建ての家ほどの高さ。外輪山の外側を背景にしたビジュアルは、もう怪獣だな。

 やられる度に変形して強くなるタイプじゃないよね?


 で、妹たちは……。

 光の中でくるくる回ってるよ!


 ネクライマーは? 

 攻撃のモーションに入ってるじゃん!


 ピンチじゃん!


 だからあれほど変身のタイミングには気をつけろと!

 自分たちはドリルキックを封じたダルシムと思えと!


「変身可愛く登場キーック!」

 変身行程を省略しつつ跳び蹴りを繰り出す。


 カウンタ気味に入った蹴りで、ネクライマーを転がした。


「ん?」


 気配に気づいて、外輪山の側部分に顔を向る。そして目を凝らす。


 遙か遠方。山に入ってすぐの所。

 ショタか!?


 戦う気概は失ってなかったようだね。


「おっと!」

 また地面が揺れた。小さいが揺れている時間が長い。

 噴火が迫っている?


「レッドキューティ! 過激に登場!」

「ブルーキューティ! 華麗に登場!」

「ピンクキューティ! 可愛く登場!」


「「「マジカルキューティ! 変身完了! 悪い子は、お尻ペンペンよ!」」」


 ヤレヤレ、やっとのことで変身完了。

 妹たちを手招きする。


「こっちだこっち!」


 巨大ネクライマーを押さえつけ、延々と腹をボコっている。ちょうど抵抗と目の光りが無くなったところだ。


「とりあえずこいつ殺せ!」

「お姉ちゃんは風情が無いニュ!」


 風情で戦えないだろうが!


「まあええから! チャンスに代わりあらへんから!」

 レッドは現実主義者、と。


「理想より現実を重視しましょう。ハイパー・プリンセス・デビュー・パーティよ!」

 何かカチンと来るな。ブルーの言葉は。


「はい!」

 妹は元気が良い! そして何より可愛いのが良い!


「「「ハイパー・プリンセス・デビュー・パーティ」」」


 16色中8色使用。FM-16β並の光の洪水だ!

 三人がバトンを振り下ろす。

 目もくらむ鮮やかな光が螺旋を描きながら直進!

 ネクライマーの赤く腫れ上がって熱を持った腹部に命中!


「ゲドロギャギャラァー!」

 光の中、ネクライマーが浄化されていく。


「この時を待っていた」

 サタノダークだ!

 ハイパー・プリンセス・デビュー・パーティ発動のシークエンスを利用してサタノダークが迫る!


 マジカルキューティの変身中に次ぐ第二の弱点。それは大技を撃つモーションから攻撃終了に至る大きな隙だ。


「偶然だな。あたしもだ」


 繰り出された拳を左腕で受ける。

 わずかに身体を反らして攻撃を斜め横へ流す。サタノダークの顔面にカウンターで拳を入れる。


 それは読まれていたようだ。手応えが足りない。浮身の様な術でいなされたか。

 直感を信じて足払いを出したら、これが上手くヒット。だが軽い。


 サタノダークは縦に回転してこれをかわし、後方へ飛んで距離を稼ぐ。


「なかなかやるじゃないですか、ブラックさん」

「なに、殺気が感じられない攻撃だから気楽だ」

「殺気を出さないのはお互い様でしょう?」


 サタノダークがヒョイと肩をすぼめた。

 それきり、お互いの顔を見合わせたまま動かない。

 お互い前傾姿勢のまま固まっている。


 ――サタノダークが体を起こした。


「僕は、ブラックが欲しかった。僕の物にしたかった」


 いきなり告白ですか!

 悪の幹部らしい告白だけど、精神方面で危ない台詞だ。


「僕に従わせ、僕の側にずっと置いておきたかった。この気持ち、人間には分からないだろうなぁ」


 サタノダークは、あたしの目から視線を外さない。長い睫が小刻みに揺れている。


 この気持ちだって? 


 人類にとって、そんなに難しい感情じゃ無いだろう?

 それを単語で表せないと?

 どうも理解できない。マーゾックといえど――


 ――あ、ああ! 理解した。


 分からない気持ちを抱いているのは、サタノダークだったんだ!


「その感情を『愛』と呼ぶのよ」

「愛!?」


 驚いたのか、目を見開いたまま動きを止めた。呼吸も止まったかのようだ。


「まあその、愛されるって事は……アレだ……嬉しいね」

 告白? コクられた?


 いやー、お姉ちゃん参ったな!


 参ったついでに、シメておこうか。


「サタノダークは、あたしを幸せにした」

「僕が……、人を?」

 サタノダークの体が震えだした。目が上下左右に泳いでいる。


 これが闇の住人の光墜ちである!


「隙有りィィー!」

 あたしは、膝蹴りを鳩尾にぶち込んだ。



「げふーっ!」

 サタノダークは身も蓋もなく飛んでいった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ