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 驚異的な存在である2体の”友達”を撃破したつかさとナノは、いよいよ重要な資料が眠ると思われる研究室の中に辿り着いた。


 その研究室の中でつかさは、ある悲惨な通り魔事件とその犯人の証言などをまとめた資料が保管されていた。


「犯人の名前は幸福沢はぴざわ ホルもん……『1コインランチ教』という自身の脳内で創り出した宗教の教義をもとに、障碍者や老人・子供といった弱者を狙った通り魔事件を引き起こした凶悪犯罪者、ね……」


 ”幸福沢はぴざわ事変”。


 のちにそう呼ばれることになる凄惨な事件は前文明社会が滅びる10年前--つまり、今から約30年前に起きた出来事である。


 幸福沢はぴざわ ホルもんは、当時ブラック企業と呼ばれるような待遇の会社に10年以上勤めていたのだが、長年働いてきた自分が報われない、と感じる鬱屈とした感情から、自身の中で『1コインランチ教』という存在を編み出していた。


 その教義によると、『働いているという事はそれだけで偉大な行為であり、そんな労働者と比べて納税することなく働かない者達は社会から淘汰すべし』という独善的な使命感に満ちたモノであった。


 普通、このような考えを口にすれば世間的にどう捉えられるのか分かりそうなものだが、幸福沢はぴざわはお世辞的にも社交的な性格ではなかったため、愚痴を言い合ったり間違いを指摘してくれるような友人や職場の同僚といった心を開けるような存在もおらず、インターネットという閉鎖的な空間で一方的に外部へと自身の思想を発信しながら、指摘や批判に耳を傾けることなくより一層先鋭化した意思を固めていくようになる。



 そうして、悲劇は起きた。



 自身の考える最高の使命感に酔いしれた幸福沢はぴざわは、自分なりの”社会の浄化”を実現化するために行動する事を決意、街中で『労働することも出来ない弱者』を優先的に狙った通り魔という凶行に及んだのだ。


 この事件の死傷者は16名にも及び、幸福沢はぴざわは当然の如く死刑を言い渡された……と資料には記されている。


(16名……この世界の成り立ちに深い関係がある、と聞かされた場所で見つけた資料に記されている以上この事件が全くの無関係、という事はないでしょうけど……この通り魔事件が、一体”16の友達フレンズ”とどう関係しているのかしら?)


 まだ何か見つかるかもしれない、そう判断したつかさは黙々と部屋の探索を続けていく。









 シャアァァァァッ……!!


 研究室の中に備えられていたシャワー室の中で、ナノは”癒しもたらす魔の福音ヒーリングヒトデ”との戦闘でベトベトになっていた身体を、お湯で洗い流していた。


 部屋に入ってすぐにナノもすぐに資料を探そうとしていたが、シャワー室を見つけたつかさに「そんな状態で大事な資料に触れられても困るから……とにかく綺麗にしてきなさい」と言われたので、その言葉に甘えて身体を清める事にしたのだ。


 お湯がナノの健康的かつ艶めかしい身体のラインをなぞっていく。


「……それにしても、つかさちゃんも言っていたけど人がいないはずなのに、シャワーがキチンと使えてラッキーだよ~!!……それにしても、私ったらまたつかさちゃんに迷惑かけちゃうし……何とかしないと!」


 そう明るく言いながらも、敵地で不覚を取るような真似をした自分自身の言動を振り返り若干気分が落ち込む。


 だが、それと同時に思い起こすのは、自分を颯爽と助け出したつかさの姿だった。


(つかさちゃん、本当にカッコよかったな……それに、私が迷惑かけちゃったのに嫌な顔一つせずに私を気遣ってシャワーまで使わせてくれるし……)


 そんな事を考えながら、タプン……と音がしそうな自分の両胸を持ち上げながら、普段の彼女からは想像もつかないような熱に浮かされた表情でため息をつくナノ。


(き、気のせいじゃなかったらつかさちゃんヌルヌルになった私の姿を見て絶対興奮、してたよね……?も、もしも私がミルクさんくらいおっぱい大きかったら、どんな反応したんだろう……?)


 ナノの胸は同年代にしては大きい部類であり、ただ単に比較対象であるミルクさん、という存在が尋常じゃないだけである。


 だが、ナノはそんな思考を皮切りに自身の体型だけでなく、クールな印象に相応しいスレンダーな身体つきをしているであろうつかさの裸体に想いを馳せていた。


 気がつくと、自然とナノは自身の身体をまさぐり始めていた。


(だ、駄目だよ……隣でつかさちゃんが私の分まで一生懸命大事な資料を探してくれているのに……こ、こんな事してる場合じゃないのに……!!)


「ンッ……ア、アンッ……!」


 頭ではそう理解していても、一度火が点いた本能を止められそうにない。


 ナノの右手が遂に下の方にまで届こうとしていたそのときである--!!



「どうしたの、ナノ?何かあった?」



 シャワー室の外から、つかさの心配するような声が聞こえてきた。


「ひゃ、ひゃい!!……こ、こっちはすぐに上がるから大丈夫だよ、つかさちゃん!」


「……?そう、なら良いけど……貴方は”16の友達フレンズ”と接触したばかりなんだから、無理だけは本当にしないでね?」


 そう気遣う相方に、内心で「ごめんなさい……!」と謝りながら、ナノは慌ててシャワー室から退出していった。


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