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俺と可愛い大賢者  作者: Lain
33/35

賭けと勝負

お待たせしました。

拙いですがどうぞ。

「リリア様!!!!」


普段は出さないかなりの焦りを含んだ大声を上げ、リリア様に駆け寄る。


「トーヤくん帰って来たのね」


ファイリスさんが駆け寄って来た俺に心配そうに声をかける。


「リリア様はどうしたんですか?」


「私達がここに戻って来たのもついさっきなんだけど、それからずっとこの状態よ」


「俺達も状態が分からない。しかし息はあるから死んでいるのではなく眠っているのだろう」


俺はリリア様の手を握り側に膝まずいた。

さっきまで会話していたのに一体どうしてしまったのだろうか・・・・。

確かに上下する胸はリリア様が生きている事を伝えてはくれているが、意識が無いのがとても不安になる。


そこに唐突に声が響いた。


『少し時間がかかるが意識も戻るからそう心配そうな顔をするでない』


はっ、としてリリア様を見る。


『肉体意識がない様だったので魔力体を作ったのじゃ。お主は見えないじゃろうがお主の魔力にまた干渉して念話しておる』


ちょっと泣きそうになりつつ心で答える。


『死んでるかと思いましたよ最初!!』


『少し無理をしたのでな、もう一度言うが心配無い。ゲームは終わったんじゃ、後三十分程待てと二ーリスにも伝えておいてくれ』


「リリア様が魔法で心配無いと伝えてきてくれました」


「本当か!」


「良かった・・・貴方に何て説明しようか不安で仕方なかったのよ?」


今リリア様に聞いた話を二人にも話す。

二ーリスも程無く姿を表しゲームに多大な問題があった事を謝罪してきた。


「ごめんなさい。こんな仕込みをされている事を見抜けなかったなんて管理者失格です。ですがあんなに不利な条件を覆すなんて素晴らしいです、流石リリア様が弟子にするだけはありますね」


『おいトーヤそいつを黙らせるのじゃ!?』


「え?」


何をそんなに慌てているのだろうか?


「だってリリア様は私達を助けてくれる事はあっても、どんなに頼まれたって何かを伝授することは無いって有名なんですから」


『~~~~~!!!』


リリア様が声にならない叫び声を上げている。

そっかー俺は特別なんだ・・・。

じわじわ嬉しくなってくる。


『さっきも言ったが今は考えが筒抜けじゃと言っておるだろうが馬鹿者が~!!!!』


リリア様の慌てた声が実に耳に心地好い。

今リリア様は意識なく目の前に横たわっているが俺には見える、顔を真っ赤にして恥ずかしがっているリリア様の顔が!!


『後で覚えておれよ・・・』


ちょっと冷や汗が止まらないけど気にしてはいけない。

この後リリア様本人が言った通りに目を冷ました。

蛇足だが杖でしこたま叩かれたのは言うまでもなかった。




「これで領域遊びは終了となります。特定の都市等には出口を繋げてありますので、何処の出口に行かれますか?」


「ならテベオスに繋げてもらえると助かるわ」


「任務帰投の途中だったから心配されてるだろうしな」


ファイリスさんとテインさんが直通があると聞いて安堵していた。


「二ーリス」


リリア様が二ーリスに声をかける。


「悪いが領域を閉じる前に1つ頼みがある。遊び『獣人遊戯』をトーヤにやらせてやって欲しいのじゃ」


「え?設定はこの領域の近くで良いんですか?」


「ああ構わん」


「まだ何かするんですか?」


「トーヤは最初こ奴等から聞いた話を忘れてしもうたのか?」


色々あったから気が抜けているようでいまいち頭が話についてこない。


「私達が追っていたシャドーウルフって獣の事件ですね」


テインさんが代わりに答える。

そのお陰で思い出す事が出来た。


「思い出しましたけどそれとこの領域遊びと何の関係があるんですか?」


「『獣人遊戯』は設定した領域周辺の一番強い獣と人間を選び、此方の代表と戦う戦闘遊戯の1つです。強いって言うのは此方の基準なので一概にどんな者が来るか分かりませんがね」


「それってシャドーウルフを呼び出して倒そうって事ですか?でもそれなら人間まで呼んじゃ駄目なんじゃ無いですか?」


リリア様はやれやれという様に溜め息をつくと話してくれた。


「お主は気付いておらんかったようじゃが、少し前からとある奴が儂等についてきておった」


「え?俺声が聞こえてませんでしたよ?」


リリア様がある程度結界を張っているが、俺も寝る時は指輪を外して警戒しながら眠っている。

周囲に人間がいれば気付かない筈は無いのだが・・・。


「ああそれは仕方ないのじゃ。儂やノノ達の様な例外だと思うておれ」


成る程そういう事か。

つまり顔見知りな訳だな。

俺が内心納得しているとリリア様が爆弾を投下した。


「ああそれとシャドーウルフは倒すのでは無く、お主の使役獣にしてもらう為じゃから殺してはならんぞ」


「え!?」


「そろそろ使役魔法で相棒を与えようと思っていたんじゃが、思いもよらず最上の犬分類が見付かったのでな。ちょうど良いからこのまま使役獣にしてしまうのじゃ。なに心配するな、お主の実力をきちんと発揮すれば負けはせん。それと・・・」


俺は強いと聞いていたシャドーウルフと戦う事になりかなり焦るなか、リリア様はテインさんとファイリスさんに声をかける。


「お主等悪いが伝授する事が出来る『特性-スキル-』があったらトーヤにやってはくれんかの?何らかの『スキル』を持たせてやりたかったのじゃが儂の『スキル』は特別での、伝授出来る特性を持っておらんのじゃ」


「構いませんよ」


「私はあまり伝授出来る『スキル』は持っていませんが協力はさせてもらいます」


1つ頷くとリリア様が此方に向き直る。


「これでやっと修行の第二工程を同時に進行出来るのじゃ」


「それで俺は使役魔法だけでも大変なのに何をやらされるんですか?」


若干怖じ気付きながらリリア様に尋ねる。


「まずは『スキル』に関する説明じゃな」




特性『スキル』

・ある一定の修練や特殊な伝達、あるいは先天的又は後天的に発生する魔法にも似た能力

常時特性『フィズ』

常時発動し肉体や精神に影響を及ぼす。

オンオフは可能であるが特性を持つ自覚と理解がなければ不可能。

任意特性『レイズ』

文字どおり任意に使う事が可能な特性。

条件特性『メイシズ』

とある条件下でのみ発動する任意特性の一種。

条件下であれば無類の強さを発揮するが、勿論任意に条件を作る事はは厳しい

特殊特性『ミリオン』

任意特性と条件特性の複合型。

任意に発動した特性を使って条件特性の条件を満たした時のみ使うことが出来る特性。

勿論条件は更に厳しい物になるが、その特性は大魔法すら凌ぐ力をもたらす事もある。



「お主は事情が事情なので先天的なスキルは持っておらん。後天的なスキルもスキルがどういうものか理解し、実際に伝授されるか目にしなければ発現する可能性すらないから今まで進められなかったのじゃ」


「伝授出来るスキルは効果は魔法には及ばないが、魔力を消費しないのが魔法使いには大きいだろう。修得が大変な一方修得してしまえばデメリットらしいデメリットは無いからね」


リリア様とテインさんの説明を聞きながら頭に落とし込んでいく。

魔法の次はスキルか・・・、まるでゲームの中の世界の様だがここは現実異世界なのだ。

何度も命の危機にもあっているし、皆さん忘れてるかもしれないけど皆日本語で話している訳ではない。

魔法か神の意思かわからないけど言語が本当は違うので、魔法やスキルと俺には聞こえていても、近い意味だからそう聞こえているだけで本当は全然違う概念かもしれないのだ。


「じゃあ一通り説明した所で実際にやってみよう。まあとは言っても伝授出来るスキルは2つだけだけどね」


テインさんは俺をその場に正座させると、俺の額に指をあてた。


「『テリーズ』(修得伝授)」



暫くするとスキルであろうという知識や経験としてのイメージが流れ込んできた。

俺の知識に置換されているらしく、判定魔法と同じ様に分かりやすい単語で理解出来た。


常時スキル『視界拡大』

・視界が約360度に拡大される


常時スキル『行動消音』

・自分がたてる音を消す事が出来る

・自分が肉眼で認識されていると、認識している相手には解除される

・自分が間接的にでも触れていないとその行動が自分の行動であっても消音出来ない


任意スキル『索敵』

・自分が認識出来た範囲にいる敵意を持った相手を見付けるスキル

・認識出来た範囲とは視界におさめた位置と自分の位置間の空間である


任意スキル『テリーズ』

・他人にスキルを伝授するスキル

・自分に馴染んでいないスキル、肉体的精神的に無理なスキルや本人が先天的に持っているスキルは伝授出来ない

・また特殊特性も伝授出来ない


「やはり伝授出来るのはこの辺りだね」


テインさんは俺から離れるとそう言って苦笑した。


「テインさんのスキル凄いんですけど、何か隠密行動限定のスキルみたいなのか多いですね」


忍や暗殺者でもするのかというスキルばかりだった。

苦笑いの原因の一端はそこだろう。


「元々剣以外でも任務に役立てる様に、調べたり修練していたら勝手に身に付いたスキルで、取りたくて取ったスキルじゃ無いんだがな。妙に私にはこういうスキルが合っているようなんだ」


その人の資質も影響するのがスキルの性質らしい。

だから必ずしも欲しい系統のスキルが修得出来るとは限らない様だ。


「さて、でははじめるとするかの」


リリア様がニーリスに合図すると、場所が四角く区切られただけの空間になった。

中央には円形な白線に囲まれた場所があり、そこで戦うのだろうというのが見てとれた。


「円形の中に入れば相手が呼び出されて試合が始まります。どちらかが戦闘不能になるまで続き、それまで円の中から出る事は出来ないので気を付けて下さい」


ニーリスの説明に頷くと、円の中に足を踏み入れた。

目の前に光の柱が立ち上ると、それは姿を現した。


「・・・・グゥゥ」


明らかにシルエットは狼だが、体全体は真っ黒で、体毛らしきものもまるで炎を纏っている様に揺らめいている。

これがシャドーウルフか。


『・・・こんな所で捕まってしまうなんて我ながら不甲斐ないわ』


!!!!?

突如若い女性の物と思われる声が響いてきた。


「え!?喋れんの!」


『ん?人間、私の言葉が解るのか?これは面白い』


やはり気のせいではなく喋っていた。

その事に驚いた俺を面白いものを見るような目で見ると、ニヤリと口角を吊り上げる。


『使役魔法の気配・・・なるほどそういう事か。この魔法はザブ族の連中の結界という奴だね』


こいつはかなり頭がいいように感じるのは気のせいじゃないだろう。


「どうやら強い者としばりをしいたから群の統率者を捕まえた様だな」


リリア様が俺の考えを読んでいたのか、雰囲気で分かるのか補足をしてきた。

リリア様でも俺がこいつと会話しているのには気付いて無い様だ。


『私を使役獣にしようとは面白い人間だな。大陸から移動してきて退屈していた所だ。脆弱な人間が私に魔法をかけられたらなら従ってやっても良いわ』


シャドーウルフは前傾姿勢姿勢を取り、いつでも良いと言いたげに此方を見つめている。


「やっぱり一筋縄じゃいかなそうだな」


俺は溜め息をつきつつ構えをとった。

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