ザブ族の領域遊び【8】
忙しい為に遅れました。
間は開くとは思いますが見続けてくれれば幸いです。
『これはちょっと予想外じゃ。上級魔法を撃ってこない所を見ると予想は当たってはおったようじゃが、ここまで高度な技術を使う事が出来るとは・・・』
「1つ聞きたいんですけど良いですか?」
『何じゃ?』
「あいつが使った展開魔法ってあくまで初級魔法を複数展開する魔法なんですよね?」
『まあもしファウラ系の上級魔法を展開されたらお主は弾け飛んでおらんとおかしいから生きているならその筈じゃ』
「下級魔法は追尾機能を追加したり出来なくて、ただ真っ直ぐ撃ってるだけなんですよね?」
一番重要なので念をおして聞いた。
『無理じゃな。そもそもそれ専用の魔法があるからわざわざそんな面倒をする必要もないからの』
それなら・・・。
「鬼に触るだけなら出来るかもしれません」
『何か根拠があるのじゃな?ならお主のしたいようにするがよい。儂はお主を信じるのじゃ』
「ありがとうございますリリア様。帰ってリリア様を愛でるんだ!」
『ななな・・なにを言っておるんじゃお主は!!!』
良しリリア様の可愛い慌てる声も聞けたし行きますか!
『聞こえとるわバカ者がーー!!』
「ふっ!!」
足に最大限魔力を集め一息に加速する。
此方が来るのを待っていた様に鬼が杖を構える。
「アルルファウラ」
先程と同じ複数展開魔法が放たれ、俺を飲み込もうと襲い掛かる。
だがさっきとは違う。
見える。
魔法に集中する事によって、魔法が着弾する場所が線となって見える様になった。
何処にいれば当たらないかも。
風は言うなれば不定形なので完全にかわすのは不可能だ。
だが魔法と魔法の穴を縫うように避け、更に避けきれない所は自分の魔法で打ち消して進む。
『後半分!』
更に速度を上げつつ魔法を連続で展開し続ける。
少しでも休んでしまえば吹き飛ばされるのがわかっているから、きつくても止める訳にはいかない。
『後少し!』
残り50メートル
「レベルを二段階上げます」
「えっ?」
そう呟きが聞こえた気がしたとたんに視界が膨大な線で埋め尽くされた。
さっきまでとは比べ物にならない程の魔法が来るのが予想出来たが、気付いても最早避ける術はなかった。
『トーヤ!!』
リリア様の叫び声が聞こえたがそれに答える余裕は無く、それは聞こえた。
「プリミリオス・ファウラ」
視界がスローモーションになった様になり、さっきまで見えていた予測も線どころでは無く真っ赤にしか見えなくなっていた。
これは・・・死んだかな?
『我が*************!!!』
良く聞き取れなかったが最後にリリア様が何か叫んでいたのが聞こえた。
視点【???】
周囲のモノは人であろうが魔法であろうが全てが白黒で、時が止まっているかの様に何の音も聞こえず静止している。
その全てが静止している空間に音もなくそれは現れた。
長い銀髪にローブを羽織り杖を持つその姿は、普段のリリアと何らかわりがないが、唯一目に見える程の緑色のオーラが全身から立ち上っているのが違いと言えた。
おもむろにコツコツと杖の音をさせながら自分と同じ姿をしている鬼に近付いていく。
先程迄あれほど魔法を放っていたのにも関わらず、リリアが近付いていくのにも無反応である。
統夜の横を通り過ぎる時に立ち止まり頬を撫でる。
『・・・・・』
統夜に微笑みを向けると再び歩き出し、鬼の前まで来た。
やはり鬼はなんの反応もせず立っているだけである。
リリアは鬼に手を伸ばしただ触れた。
『・・・・・・』
そしてやはり終始無言のままその場から消え失せた。
視点【統夜】
「っ!?」
俺は瞬間目を瞑った。
次の瞬間には訪れるであろう死を直視出来なかった為だ。
本来は最後迄生きる為に足掻くべきだろう。
しかし半ば見えすぎる程に見える様になってしまった為に、避けきれないのが解ってしまう。
故に目を瞑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・遅いな?
いつまでたっても魔法が来る気配がなかった。
恐る恐る目を開く。
「・・・・・」
鬼は肩を落として沈黙していた。
「?」
近付いて鬼の目の前まで行って、手を振ってみるがやはり反応が無い。
思い切って触ってみる。
「・・・・・・・」
『挑戦者ノ勝チニナリマシタ。元ノ場所二戻リマス』
「これで終わりか・・」
しかし突然動かなくなったけどなんだったんだろうか。
視界が光に包まれるとそのまま辺りの景色は最初のクリスタルの場所に戻っていた。
見渡すとテインさんとファイリスさんが俯いて立っていた。
表情を見た瞬間嫌な予感がした。
予知とか魔法とかは関係無いただの予感。
二人の視線を辿るとそこには・・・・・・リリア様が眠る様に横たわっていた。




