賢者と大賢者、と俺
賢者とは・・・。
この世界『アリア』に存在する6つの大陸。
その大陸を国とは別に管理している管理者の様な存在である。
曰く神に選ばれる事により賢者となり、選ばれた時点で肉体年齢は固定され、次の賢者が選ばれるまでその責務を全うする存在であるという。
国同士の争いの調停、重大な取り決めの立ち会い、王位継承における任命や退任の決定権、大きな天災や飢饉等の救済等々様々な事で世界に関わる存在なんだとか。
現在森を出て街道を歩く道すがら賢者について説明を受けている最中である。
まあ世界の成り立ち何かも聞きつつではあるが、流石に情報量が多いので話し半分で聞いている。
「賢者については分かりましたけど大賢者って単語が出てこないんですけど?」
そう重要な役職っていうのは何となく分かった。
だが大賢者っているのか?
賢者だけで全て成り立っている気がするのだが。
「最初は大賢者というか、賢者は儂1人だけだったんじゃ」
「え?」
「少し事情があっての、各大陸に賢者が『生まれて』しまったのじゃよ」
リリア様の顔が少し陰りを見せる。
基本心が読めないと上手く会話運びが出来ない俺はこれ以上突っ込んで聞く事は出来なかった。
因みにリリア様呼びは強制決定しました。
俺に拒否権は勿論ありません。
「大賢者は大陸1つに限らず世界を見て回り、あらゆる問題に対処する存在という事じゃ」
成る程ね。
「まあ、主に見るのは件の賢者達だがな」
「どういう意味ですか?」
「・・・・奴等は基本仲が悪いのじゃ」
何となく読めてしまった。
「つまり賢者達が喧嘩しない様に見張るのがリリア様の役目って事ですか?」
「そうじゃ・・」
何それ完全に貧乏クジじゃん。
「まだ二百年も生きていない若造が調子に乗りすぎなのじゃ、自分達が特別な存在になった事でやりたい放題しおってからに」
ん?二百年?
「あの、リリア様って幾つ何ですか?」
「儂は数えるのはやめてしまったがニ千年以上は生きておる」
マジですか・・・・。
リアルロリバ「それ以上考えれば命はない」
「何の事でしょうか?」
「顔に出すぎじゃ馬鹿者が」
今後は自重しよう。
「しかし妙に落ち着いておるな、突然異世界に来て慌てるでもなくむしろ嬉しそうじゃ」
慌てていない訳では決してないのだが嬉しそうなのはそんなに間違ってはいない。
昔から他人の腹の中が見えている生活が普通だった俺は、人間関係にうんざりしていた。
楽しく笑っている様で妬み、蔑む嘲笑う。
そんな現実は意識をせずとも感じられた。
読まなければ読まないで不安に苛まれる。
そんな中で育った俺は良くファンタジー物の物語を読んだ。
物語の登場人物は勿論黒い部分や隠している事もあったけど、目的に対して真っ直ぐで、何より頑張っていた。
ただただ波風を立てない様にやってきた俺にとっては憧れる生き方だった。
そして偶然か必然か、その物語の世界に実際来ているのだから少なからず興奮するというものだ。
何よりこの隣にいる大賢者様は心が読めないのである。
不安だらけで、何も分からない相手と会話しつつコミュニケーションをとる。
怖い、けど楽しい。
こんな経験生きてきて初めてだった。
「な、何じゃこっちをじっと見るでない!?」
プイッと少し頬を赤らめつつ顔を反らす。
そこはかとなく可愛い。
・・・・いや俺はロリコンじゃないけどね?
実年齢はともかく明らかに外見は12〜14歳といった所である。
無いな、断じて無い。
そんな葛藤をしつつ歩いていると、前方でガラガラと音をたてつつ馬車が近付いて来ていた。
へぇ、この世界って馬車とかあるんだぁいよいよファンタジーっぽいな、とか考えてふと御者に意識を向けた。
そして、いつも日常で感じていたあれが、不吉な内容で聞こえてきたのだった。
『この拐ってきた女共は幾らで売れるか楽しみだぜ』




