ザブ族の領域遊び【1】
「まあリリア様が言うならしょうがないか」
「あーあ。帰ったらお父様に怒られるな絶対」
「恐い人なんですか?」
「基本的に娘には優しく他に厳しい感じの人って説明すれば伝わりますか?」
肩をすくめながらテインさんは苦笑いをする。
つまりは娘にだだ甘だと言うことね。
ただここまでになると流石に怒られるらしい。
「あ、リリア様俺が先頭になります」
俺は指輪をしている方の手を見せて言った。
リリア様の探知とは違って実際的な危険に対してすぐ反応する俺の能力は、こういう場面では役に立つのである。
「ふむ。なら任せるのじゃ。充分気を付けるのじゃぞ」
俺の心配をしつつ後ろに下がり一応背後も警戒してくれるようだ。
俺は指輪を外し前に意識を集中し、一番前に出る。
間にファイリスさんとテインさんがいるという布陣になっている。
武人である二人には申し訳ない感じになってしまっているが、今回の相手はリリア様以上という事は無いがかなりの実力の魔法使いが敵なのである。
魔法が使えないらしい二人には魔法意外の所で警戒してもらうしかない。
そうこうしていると分かれ道に辿り着く。
「どっちじゃ?」
「こっちですね」
俺は迷わず左手を指差す。
右手は危険と言うよりは何か嫌な感じがする程度だが、そういう場合今までの経験から行き止まりや遠回りで罠という場合が多くあるのだ。
「何の疑問無く従ってたけど何でトーヤくんが先頭なのか聞いてもいい?」
いつの間にかくん付けですねファイリスさん。
まあ良いですけどね、多分年上だし。
「信じられないかもしれないですけど、俺の魔法らしいんですが。危険を察知する能力があるんです」
「疑問系が多いね。自分の魔法なんだよね?」
もっともな疑問ですね。俺もそう思います。
「俺は生まれた時からずっと持っている能力だから魔法って言われてもピンと来ないんだよね・・・・」
魔力とかどうなってるんだと言いたくなる。
実際習得した魔法はきちんと魔力を消費した感覚が分かるだけに謎である。
「あ、ファイリスさんそこの一段高くなってる岩踏まないで下さい。多分危ないです」
「おっと・・」
軽やかに避けるファイリスさん。
流石に身のこなしが違う。
「テインさんそこの壁触らない方がいいです。結構ヤバそうな気配がします」
「え?もう触っちゃったんですけど・・・うおぉ!?」
するとテインさんが触った壁ごと天井が崩れて生き埋めになった。
「『アナ』」
リリア様が素早く岩に触れて魔法を発動する。
一瞬で岩が液状化してなくなる。
「死んだかと思った・・・・」
咄嗟に頭を庇ったようで体は大丈夫なようだった。
「ごめんなさい言うの遅かったですね」
「まあ、助かったからいいよ」
「半信半疑だったけど本当に危険か分かるのね」
まああの説明じゃ俺も信じないよ正直。
何回か危ない場面もあったものの何とか先に進めていたのだが、ここで残念なお知らせをしなければならないようだった。
「・・・・・あー」
「どうしたのじゃトーヤ?」
「一歩も進めなくなりました・・・・・」
ここから一歩でも進んだらアウトくさいんだよなぁ。
一見して何もない通路が広がってるだけなんだけど、明らかにさっきとは比べ物にならない警報が頭の中でなりっぱなしである。
「探知には何か反応ありませんか?」
「確かに魔力らしき気配は感じるが何があるかは分からないのじゃ。危険な気配はせんのじゃが・・・・」
「でも戻る道はないんだ。進むしか無いですよ」
確かにそうするしかないんだけど俺進むのやだなぁ。
しかしリリア様に進ませるのはあまりにカッコ悪い事は出来ない。
俺は内心びくびくしながらも決意すると一歩を踏み出した。
「!?しまっ!!!」
リリア様の声は最期まで聞くことは出来ずに俺の視界は光に飲まれた。




