雨の中での出会い
ザーザーと雨が激しい勢いで降りしきる中、俺とリリア様は洞窟で雨宿りをしている。
獣人村での事件からもう1ヶ月が経とうとしていた。
ノノ様がいなくなってしまって大丈夫なのかと心配していたが、リリア様が言うにはもうノノ様はあの村には必要なくなったから出たのだそうだ。
新しい村を作る為や獣人を助ける活動をしているのだろうと説明された。
まあ俺が心配しなくてもマナが沢山心配するだろうから大丈夫だろうけどね。
「しかし止む気配が無いですね雨」
「仕方なかろう。この時季の雨は降りだせば1日止まんのじゃ。まあ魔法で濡れない様に歩けば行けるが、わざわざ止まない雨の中を行く事もなかろう」
「そうですね」
リリア様との旅はそう急いだものでは無いようだけど、寄り道の様な事はあまりしない。
まあ寄り道といえば寄り道っぽい事もするが、目的無くしたりはしないので、ちゃんと休むのは宿屋位だった。
野宿って意外と疲れるんだよ?
今日は洞窟だから全然ましである。
屋根あるしね。
「トーヤあまり入り口に寄ると濡れる、焚き火からあまり離れない様にするんじゃ」
「ありがとうございます」
リリア様の正面に焚き火を挟んで座る。
「どうじゃ?少しはここに慣れたか?」
「何ですか藪から棒に?」
「単純に心配しておるんじゃよ。元の世界ではこんな旅等したことの無かったのじゃろ?」
「まあそうですね。大変な事もありますけど最初会った時に言った様に楽しんでもいますし、何よりリリア様が一緒にいますからね」
「な、何を言っておるんじゃ!?誉めてもなにもでんぞ!」
リリア様があわあわし始める。
でも本当にリリア様のお陰で俺は助かっているし、素直に楽しめているのはリリア様のお陰の筈だ。
感謝してもしたりない。
「ありがとうございます」
「!!」
杖が頭に飛んできた。
「いったー!!なにするんですか!?恥ずかしいからって殴る事ないでしょ!?」
「うるさいのじゃ」
後ろを向いてしまうリリア様だが首元が赤いのは焚き火のせいではないだろう。
「でもこの世界も現実として厳しい世の中なんですね・・・」
「獣人の話かの?」
俺はリリア様を見て頷く。
「トーヤの世界でもまた人間はさほど変わらない行いをしているのかの?」
「そんなに難しい話をしたつもりでも無いですけど、変わらないかもしれないですね」
「儂も元は人間じゃ。今も人間とそう変わりはない。あまり他人を責める事も出来ないのじゃ」
「俺の国も戦争こそしてませんでしたけど、いつも何処かで人が死んでました」
お互いに炎を見つめて黙る。
「儂は人より長く世界を見てきた。トーヤはまだ若い。だからトーヤにはあまり悩まずにこの世界を見て欲しいのじゃ」
確かに暗くなるのは俺の主義とも違う。
可愛いリリア様を見てた方が建設的かもしれないな。
「お主また余計な事を考えておるな」
ジト目で見られる。
それすら可愛いと思ってしまうのは俺が最早リリア様にやられているからだろうか・・・。
「いえ可愛いなと」
「いい加減にせい」
再度頭を殴られる。
「ごめんなさい」
「ふんっ」
「「ふふ」」
何か可笑しくてお互い笑い合う。
話が暗くなりかけたのは俺のせいだから明るくするのも俺の役目。
そんな事を考えて笑い続けていた俺は、リリア様が表情を変えたのを見て顔を引き締める。
「・・・どうかしたんですか?」
「誰かが近付いて来るのじゃ」
「この雨の中をですか?」
「うむ。もうたどり着く。気を抜かずにおるのじゃぞ」
「はい」
俺は指輪を外して構える。
『あー濡れます、早く洞窟まで行きましょう』
『本当にこっちで合ってるのだろうな?近場の街に向かった方が早かったんじゃないか?』
「・・・・・・うーん」
「なんじゃその顔は、危険はなさそうなのか?」
「聞こえる限り俺達と目的は同じみたいですね」
話している内に声が聞こえた二人が到着する。
不味いと思い指輪をつけ直す。
「一応外しておくのじゃ」
「え?」
言われてすぐまた外す。
「あれ?先客がいるみたいですね」
「むっ?子供が二人じゃないか。こんな所で何おやっているんだ?」
現れたのは青い軍服らしき物を着た男と、軽装な鎧を着けた少女の二人組だった。
男は緑の髪を短く切り茶色い瞳を持った真面目そうな印象。
少女の方は赤く長い髪をポニーテールに纏め、髪に負けない程に真っ赤な瞳を持つ強気そうな印象。
対称的な二人組だが、二人共腰に剣を差していて、剣の柄には鳥と思われる紋章が刻まれている。
恐らく何処かの騎士か軍人なのかなと予想出来た。
『こ、この女の子ちっちゃくて可愛い・・』
『この辺りに村はなかった筈だが、家族とはぐれて雨宿りかな?』
『持って帰りたい』
俺はそっと指輪をする。
若干一名の少女の心の声が聞くに耐えなくなってきた。
共感出来なくないことははないが、実際に心として聞こえるとガチッぽくて恐い。
「まあ危険な人物では・・・無いですね」
「間が気にならんでも無いが信じるとしよう」
「二人は迷子かい?」
「こんな所にいるって二人は兄妹かな?黒髪はこの辺では珍しいけど」
「兄妹・・・・」
リリア様お願い抑えて下さいね。
少女は真面目に心配してる感じ出してるけど、さっきの内心を知ってるとどうしても俺の心配はしてる気はしない。
「こんなに小さな子迄こんな所にいるなんて危ないわ。雨が上がったら私達が街に送り届けてあげるからね」
「小さな子・・・・」
「ところで!!」
リリア様が爆発寸前なのを察知した俺は話題の変更を図る。
リリア様の正体を教えても良いのだが信じてくれる保証も無いし、何より子供になら事情を少しは話してくれるかもしれない。
「俺達は雨宿りですけどあなた方もですか?」
「そうなんだ、俺はこのまま街に戻るのでも良かったのだが彼女が近くに洞窟があるって言うのでな」
「前に来た時は通り過ぎただけだったんだけど、一晩雨宿りするには最適だと思ってね」
「その紋章はテベオス国の騎士と国軍の隊長じゃな?何故こんな所におるのじゃ?」
リリア様は精神状態が普通に戻った様で会話に参加する。
「あら良く分かったわね」
「ちょっと任務でな、近隣に獣の被害が出たらしいんだがどうも様子がおかしいんで調査しに足を伸ばしていたんだ」
「様子がおかしいって言うのは?」
「どうも被害が会った村からどんどん周辺の村に被害が広がってるみたいなの。普通の獣程度なら村にいる自警団で何とかなる筈なんだけど、聞き込みをすると誰も獣の鳴き声しか聞いてなくて、姿を見てないって言うのよ。しかもものの半刻で村の建造物を破壊して回ったって言うしおかしいわよね?」
「そんなにしゃべって大丈夫何ですか?任務何ですよね?」
「別に極秘任務って訳じゃ無いし、君達この辺の子だろ?何か見たりしてないか聞きたかったからな」
安易にしゃべり過ぎな気がして聞いてみたが杞憂みたいだった。
事情を聞いたリリア様は少し考える素振りを見せると一つ質問した。
「もしや村で聞いた鳴き声というのは、低い牛の鳴き声と鳥の鳴き声を合わせた様な奇妙な鳴き声ではないか?」
その質問に二人は驚き顔を見合せる。
「その通りよ。何か心当りがあるの?」
「お主達は国では腕はどれぐらいじゃ?」
「私達に敵うのは近衛の隊長ぐらいじゃないかな?」
「まあ戦闘方法が違いすぎるから一概に評価は出来ないけどね」
少し誇らしげな二人に悩んだ様子を見せたリリア様だったが、顔を二人に向けて言った。
「これは恐らくシャドーウルフの仕業じゃ」
「え?シャドーウルフってどんな獣なの?」
「俺も聞いた事無いな」
「俺もです」
とりあえず続いておく。
この前世間知らずを露呈させてリリア様に余計な苦労をかけたからな。
呆れられない様に説明される迄は黙って追従する事にしたのだ。
「シャドーウルフは山の日の当たらない所にだけに生息する特別な獣じゃ。だがこの大陸にいる筈ないのじゃ。昔全てアーデナード大陸に封じ込めたというのに」
「ねぇこの娘は何を言ってるの?」
流石におかしいと思いはじめたのか少女の方が俺に尋ねる。
まあこの外見の娘がしゃべる内容ではないよね。
「説明してもいいんじゃないですか?」
「儂を子供扱いした奴等になんぞ・・・」
まだ拗ねていらっしゃったご様子だが何とか説得し事情を説明する事にする。
なかなか信じられないだろうなぁ。
「大賢者様がここまで幼い容姿をしていたなんて・・・」
「信じられないな確かに」
まだ信じられない様な様子の二人にリリア様は、時間が勿体ないと思ったのか少女の方に声をかけた。
「そこの女」
「は、はい!」
先程迄の失礼な態度を気にしてか少女はびくりと肩を震わせてから返事をする。
「お主を見た時から実は気付いておったのじゃが、お主はダウテリオ家の者じゃな。マウリスは元気にしとるか?」
「お父様を知ってんですか!?」
「おおお主はマウリスの娘か!前に会ったのは20年近く前じゃからのう。結婚して娘迄おるとは幸せなのじゃな」
「今は私が家督を継いでいますから私が当主です。じゃあ幼い頃父に聞いた大賢者様と知り合いというのは本当だったんですね」
「マウリス様と知り合いなんですね。驚きました」
「そういえば二人はお名前は?」
「ああそういえば名乗っていなかったな。私はテイン・マークス。テベオス国軍所属の軍人だ」
「私はダウテリオ家の長女ファイリス・ダウテリオです。以後お見知り置きを」
これがこれから長い腐れ縁になる二人との出会いだった。
新キャラは色々考えているけどとりあえずこの二人からにします(^_^)
しかし話の始まりをどうしようか今回かなり悩んだ。
やはり小説は当たり前だけど難しいです。




