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俺と可愛い大賢者  作者: Lain
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獣人村騒動【7】

リリア様と別れた後、道中何度となく言い合いを続けながらも俺とマナはノノ様がいなくなったと思われる辺りに到着した。


「で、具体的に匂いが途切れてるってのはどの辺りなんですか『マナさん』?」


さっきの皮肉も込めて名前の部分を殊更強調して言ってやる。

すると気持ち悪いものを見る様な目をこちらに向けて、「うぇ」っと言うように舌を出した。


「気色悪から呼び捨てにしろよ。後敬語もつけるなどうせ大して歳も変わらないだろ?お前に敬語を使われると何故か気持ち悪い」


はっきり気持ち悪いって言っちゃったよこいつ。


「じゃあマナって呼ぶからな文句言うなよ」


「ふんっ敬語よりかは何倍かましだよ」


お互い相容れないながらも目的は忘れておらずマナは樹の根元辺りを指差した。


「こんな何にもないところで途切れてるのか?」


「最初からそう言ってんだろ?記憶力大丈夫なの?」


「ああもう一々突っ掛からなきゃ喋れないのかよマナは!?」


「いや私は本当にそう思っただけたしー」


更に嫌みたらしく口笛まで吹いてやがる。

くそ、絶対手掛かりを見付けてやるからな。


樹の根元辺りを探ってみるが、匂い何か分からない俺は地面や草影を見る位しか出来ない。

辺りを見渡す。

一面に木々が生い茂り、草が風に揺れている。

他に生物の気配は感じられず、風がなかったら何も無い森と勘違いしそうだった。


動物の気配がまるで感じられない・・・。


「もしかしてこの森は動物が生息してないとか?」


「はぁ?んなわけないでしょ?」


「これでも野宿や森歩きは一月位続けてる。動物の気配位なら俺なんかでも少しは分かるつもりだけど、全く気配が感じられないのは何で?」


「まさか、そんな事があるわけ・・・・」


マナは周囲を見渡しながら気配を探りつつ鼻をひくつかせる。


「動物の気配は無いけど匂いは確かにある。でも何でかこの近く一帯だけ全く近寄って来てない。避けてるみたいに」


「俺はこの状況に似た状況をつい最近体験したばかりなんだが・・・」


嫌な予感って往々にして当たりがちだからな・・・・・。


「魔物がいるかもしれない」


「魔物がいるわけないわよ有り得ない!?」


そう、確かに魔物がいるにしては空気が淀んだあの感覚が感じられない。

もう一度、更に注意して辺りを見渡す。

やはり何の異常もみられない森が広がっている様に見える。


何か手掛かりはないかと必死に目を凝らしていたその時、物凄い突風が吹き抜けた。

辺りの木々が揺れて葉を、草を風が巻き上げる。


『目の前にある木を除いて』


「え?」


俺はその木に近寄って良く観察する。

他の木との違いは全く感じられない。

でも今の風で葉が一枚も落ちないなんて有り得るのか?


『・・・・・・・・・・・・・・』


「ん?」


『・・・・・・・・ぅ・・ょ』


まさかそんなことあるのか?


「マナ!ちょっとこっちに来てこの樹の匂いを嗅いでみてくれないか?」


「はぁ?樹の匂い?」


マナはかなり困惑した表情をしつつも樹に近寄って匂いを嗅ぐ。


「どうだ?ノノ様の匂いがしたりしないか?」


「・・・・・・!!」


すると驚いた様に飛び退いた。


「なっ『何の匂いもしない』!!」


「え?」


「樹の匂いも葉の匂いも土の匂いも何もかも匂わない!?」


ばっ、と振り返り樹に触れてもう一度意識を集中する。

するとひたすら呟く様な独り言が聞こえてきた。


『あーあーどうしてこうなのかな?私が何したっていうのかなー。これ迄一族の為を思って一生懸命やってたきたのにどうしてこうなっちゃうのかなぁ』


これは!


「トーヤ上!!」


「え?」


後ろを向くとマナは俺の方に手を伸ばしている最中だったが、それは途中までしか見ることが出来なかった。





「いい加減起きなさいよ!」


ドカっ、という音と痛みと共にゴロゴロ転がった。


「いってぇ!?」


腹を抱えて転げ回る。


「何するんだよ!?」


「この状況でいつまでもグースカ眠ってる方が悪い」


「この状況?」


言われて辺りを見渡す。

そこは薄暗い洞窟の様な場所だった。


「え?俺達どうなったんだっけ?」


「端的に言えば食べられたんだよ私達」


「何に?」


「樹だね」


「樹?」


「あんたなんかほっとけば今頃解決してたかもな」


「あ、そういえば助けてくれようとしてたな。ありがとう」


「・・・・・」


彼女が真顔になる。

何だよ何か変な事言ったか俺?


「ふんっ、まあいいさ。お礼は助かったら貰うから」


「ああ。しかし樹の中にとわれたんじゃどうすればいいんだ?」


「それはノノ様に聞いた方が早いね」


マナは俺の後ろを顎で示した。

そこには猫娘らしき人物が膝を抱えて眠っていた。


「寝てるんですけど?」


「ああノノ様一人きりでずっといたから気が抜けたらしくて、一通り話を聞いたら眠ってしまわれた」


「まあ俺達と同じように捕まったんだろうけど」


「ここは魔獣の中なんだってさ」


「魔獣?樹の中にいるんじゃなかったのか?」


「私達が見たときは樹だったのさ」


マナは魔獣についてノノ様から聞いたという話を俺にも教えてくれた。


「つまり中からはどうしようも無いって事じゃないの?」


「いや。何でもあんたがしてた指輪があればどうにか出来るらしいよ」


「この指輪が?」


ポケットから指輪を取り出す。

これはリリア様に作って貰ったものだが、端的に言えばリリア様の魔力と魔法式が込められている。

それが作用して干渉魔法、ひいては魔法力全般を抑え込む物となっている。

しかし持っているだけでは作用せず、指輪を嵌めなければ意味がないと教わったのだが・・・。


「何でもその指輪は作った人とパスを繋いで、常に魔力を提供する事で作用するんだって」


「つまりパスが切れた事に気付いたリリア様が助けてくれるのを待つと」


「そういう事になるんじゃない?」


カッコ悪くないかそれ?

俺にも任せてくれたリリア様の顔を潰してないか?

おまけに見返そうとした相手に助けて貰うし、足も引っ張ってますよ。


「情けないな。リリア様の力になれないなんて」


「ここを、樹を見付けたのはトーヤだったじゃないか。ノノ様も無事とは言えないが見付かったし良かったじゃないか」


意外な所からフォローがきたのでびっくりして顔を上げた。


「なんだよその顔。最初の態度は悪かったよ。ノノ様が見付かったのはトーヤのお陰だ、感謝してる。あんたもきちんと礼をしたんだ、私がここで嫌味な態度を続けたら獣人としてカッコ悪いよ」


少し照れ臭かったのかそっぽを向くマナ。

そうしてればちょっとは可愛いのに。

俺は何故だか可笑しくて笑った。

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