獣人村騒動【3】
当たり前だがめちゃくちゃ呆れられているようだった。
「あ、あんたどうやってここまで来たわけ?」
俺を連れて来た当人であるマナはとても驚いた様子で叫んでいた。
そりゃそうだろう、全速力かは分からないけどかなりのスピードで走ってきたのだ。
普通の人間に、ましてやリリア様の様な子供が追い付いて来れる筈が無いからだ。
「魔法でやって来たのじゃ、詳しくは長くなるので省くがの」
「無断で境界線を越えた事に変わりはないんだな?」
三人いた狼男の内赤い毛に覆われたひときは大きな奴がリリア様に問いかける。
「アカツキハタソガレニキエユキタイカイハゲッカニカガヤク」
「っ!」
リリア様がそう口にすると四人とも驚いた。
「合言葉を全部言うことは人間には出来ない筈なのに!?」
「種族の合言葉はこれじゃろ?後はノノを呼んで欲しいのじゃ」
「ノノ様に何の用なの!?境界線違反は私達が処理する決まりになっているんだ!!こいつは1日拘束する」
断固として譲らないマナさんはリリア様を睨み威嚇する。
「いつからここはこんなに頑固な村になったんじゃ?リリアが来たと伝えるだけじゃ。こ奴の無礼も儂の無礼も詫びる、まずはノノに伝言を伝えて欲しいのじゃ」
リリア様が頭を下げると四人共困惑顔になり顔を見合わせると、先ほどの男が頷き瞬時に姿を消した。
「今ノノ様に伝言を届けに行った。それまでここを動くんじゃないよ?」
「動かん。約束するのじゃ」
「あの・・・」
話すとややこしくなりそうだったのでずっと黙っていたが、落ち着いてきた様なので静かに声をかける。
「あんた面倒な奴を連れてきたみたいだね?」
マナさんはこちらを怪訝な目で見る。
「トーヤ」
ん?今のリリア様か?
リリア様が初めて俺の名前を呼んでくれたのに俺はこんな状況か・・・。
自分の体たらくに落ち込みつつリリア様に目を向けた。
「はい」
するとリリア様が指の間に輪を作り抜き取る様なジェスチャーをしていた。
「え?いいんですか?」
「良いからさっさとやらんか」
呆れられているのは継続中の様だが、俺は指示された通り『指輪を抜き取った』。
『今ノノ様の事を聞きに来るなんてタイミングが良すぎる!絶対おかしい!』
気付いていた方もいたかもしれないが、俺はずっと心の声は聞こえていなかった。
前リリア様が露天で買おうとしていた宝飾品は、俺の能力が魔法縁の物だと推察し、魔法を抑える作用のある装備品を作る為だったのだ。
リリア様の予想は正しく、指輪をする事で俺はここ一ヶ月ばかり心の声が聞こえない生活をしていた。
まあ指輪をしていると自分も通常魔法を使えなくなっちゃうけどね。
因みに許可なく外す事も禁止されていて、命の危険がない限り外してはならない事になっていた。
弟子ならそれに頼らずやってみよとの事。
まあ心が読めたら戦闘に限らずこと人とのやりとり無敵だからね。
『怪しい事に変わりはない!!応援を呼び終わったら魔法使いでも捕らえられる筈だ!!』
あれ?マナって子の声は聞こえないな。
二人の狼男の心しか聞こえない。
魔法耐性が強いのかな?
『トーヤ、村の様子がどうもおかしいのじゃ。今お主の魔力に儂の魔法を繋げて伝えておる。村に何かあるなら頷き、ノノという人物に何かあるなら「はい」と言い、何も無ければ首を振るのじゃ』
普段絶対聞こえないリリア様の心が聞こえる。
「はい」
俺は両方の意味を込めて小さく頷く。
「そうか」
『ノノを呼びに行ったのでは無く応援を呼びに行ったのじゃな?』
今度は無言で頷く。
『合図をしたら女の方に拘束の干渉魔法を使うのじゃ』
再び頷く。
「のうそこの男」
「なんだ?静かに待っていろ」
『今じゃ!』
「「バイフォルモ!!」」
リリア様と俺が同時に叫ぶと、ここにいた三人は光の輪に全身を拘束された。
「な、何すんだてめえら!!」
「すまんが応援を呼ばれる前に事情を聞く必要があるみたいなんでの」
リリア様がマナさんに近付く。
他二人の実際の声が聞こえないと思っていたらリリア様は口まで拘束していた。
「悪い様にはせんから話すんじゃ、ノノが心配なのじゃ」
リリア様はマナさんの目をまっすぐ見て訴えかける。
他の二人はさっきから拘束を解こうともがきつつ心でマナさんを止めている。
「・・・・・」
「・・・・・」
数秒にらみ合いが続いき、諦めたのか「ちっ」と舌打ちをした後マナさんは吐き捨てる様に言った。
「ノノ様が昨日拐われた」




