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「......あのさ、はるくん。カメラの件がどうにかなったからはるくんが自分の家にいるっていうのは分かるんだけど......なんで、せっちゃんがはるくんの家に居るの?呼ばれて来て見たら、びっくりなんですけど」


「どうしたの?ほのか。別に、私が居ても、おかしなことじゃないでしょ?私ははるとの、家族なんだから」


「か、家族!??はるくん!どういう事!?それって、せっちゃんがはるくんとこの家に一緒に住むって事じゃ......」


「そ、そんな事あるわけないだろ!?刹那先輩も紛らわしい事言わないで下さいよ!!」


「なんで、はるくんは目が泳いでるのかな?ねえ、なんでかな?」


 う、ほのかめ、こういう時勘がいいから誤魔化すのに困るな......


 さっき刹那先輩の家で話したのは、こういう事だ。


 刹那先輩が俺の家にカメラを仕掛けるなんて凶行に及んでいたのは、おそらく、寂しさというのも1つの大きな理由だろう。


 それに、犯人が刹那先輩のことを次のターゲットに狙っているという可能性も、前回俺が死ぬ前に刹那先輩が殺されたことからも分かるように、高いと思う。


 なので、俺は犯人が分かるまで、そして、刹那先輩が暴走しない様に、先輩には基本的に俺の家にいてもらうことに決めたのだ。



 さっきまで刹那先輩の家に居たが、風莉さんから俺の家のカメラは全て取り除かれたという連絡が来たので、俺も今やっと我が家に戻ってこれたという訳だ。


「ねえ、はるくん、どういうこと?私にも説明してくれないかな?」



 ま、まずい、ほのかの目が怖い。これはどうにか説明して刹那先輩がうちにいる事を認めさせないと......


 俺が考えていると、刹那先輩がほのかに向かって話し出した。



「しょうがない、ね。ほのかを巻き込みたくなかったけど、説明しない訳には行かないね」


 そういうと、刹那先輩が制服の右腕の袖を捲り始めた。



「ひゃっ......!?」


 ほのかが先輩の腕を見て驚きの声を上げている。


 それはそうだろう、俺だって......今初めて見たんだ、驚きを隠せない。



「これが私が、たぶん梅野さん殺しの犯人からつけられた、傷だよ」


 刹那先輩が巻かれていた包帯を取るとその生々しい傷跡が嫌でも目に入る。


 歪な傷跡だった。


 ナイフのような鋭い刃物では、このような傷跡はつかないだろう。


 まるで何かの動物か何かに噛み付かれたかのような、そんな傷。



「せ、せっちゃん、それって......?」


 ほのかが刹那先輩に質問を投げかけると、刹那先輩はその傷について説明を開始する。


「うん、実はねーー」


 刹那先輩の話によると、一昨日一人で帰っていると、突然野犬に襲われたのだという。


「何かあったときのために、スタンガンを持ち歩いていたからなんとか撃退できたけど、大型犬で、持っていなかったら危なかったかも」


「でも、野犬に襲われるって、いくら神凪町が田舎だからってそんなこと聞いたことないよ。本当だとしても、事故なんじゃ?第一そんなことができるのは......」


 ほのかが話の途中で口を噤んでしまった。


 犬に襲われたーーそんなことは、にわかには信じがたい。


 けれど、刹那先輩の腕の傷は本物だし、もしそれが、誰かの意思のもとに起こったのだとしたら、そんなことができるのは......



「二人とも、分かったみたいだね。私が怪しいと思っているのはーー杏里だよ」



「あんちゃんが、犯人......」


 刹那先輩の言葉を聞いて、ほのかが顔を険しくして何かをブツブツと呟いている。


「ちょ、ちょっと待て!二人ともいきなり話が飛躍しすぎだって!!刹那先輩も、流石にそれは根拠が薄すぎるよ」


 俺の言葉を聞いて、ほのかも刹那先輩もハッとしている。


 それはそうだろう。


 確かに、杏里は動物と仲がいい。


 まるで、本当に会話出来ているのではないかと錯覚するほどに、普段から、近所で飼われている犬から、そこらへんを飛んでいる鳥まで。


 杏里がいると様々な動物が近くに寄ってくる。


 だが、所詮それだけだ。


 確かに、普通に生活をしていて、田舎とはいえ、野犬に襲われるなんていうことは、殆どの人は経験したことがないことだと思う。


 けれど、刹那先輩は自分が野犬に襲われたのは杏里が原因だと言うのは、流石に話が飛躍しすぎだと俺は思う。


「でもはるくん。最近あんちゃんに連絡がつかないのも、事実なんです。ちょっと不審かなって......」


 俺も、それには思うところがある。


 刹那先輩が殺された時も、杏里だけ、連絡がつかないことがあったしな。


「まあ、それは確かに心配にはなるけど......それより、怪我は大丈夫なんですよね?感染症とかも」


 俺が強引に話を変えると、刹那先輩は首を縦に振っている。


「さっきも言ったでしょ?はると。病院にもちゃんと行って問題ないって言われたよ。それなのに、はるとが心配だからうちに来てっていったんだよ?忘れたの?」


 刹那先輩がほのかに見えないように俺にウインクをして来る。


 なるほど、そういう理由づけなのか。


「だから、ほのかもいいでしょ?これははるとの優しさからのお泊りなんだよ」


 刹那先輩が勝った、という顔でその言葉を聞いてぷるぷると震えているほのかの方を見ている。


「そ、それならっ、私もせっちゃんが心配なので、今日ははるくんの家に泊まります!」

 


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