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 俺は眼が覚めると同時に、まず携帯で時間を確認した。


「今は......今は一体いつなんだ!!?」



 今は、午前七時。部屋を見回しても、いつもと違う見慣れない部屋。そうか、ここはほのかの家の中。


 つまり、まだ刹那先輩は生きている可能性が高い!!



「よかった......また、生き返ることができて......そ、そうだ!!それよりっ、いそがないとっ!!」


 俺は慌てて着替え、階段を駆け下りる。



「は、はるくん!?こんな朝早くから、どうしたの!?」


 ほのかが俺を見て慌てて呼びかけて来るが、今は悠長に説明している暇はない。



「悪い!ほのか!帰って来たら説明するから!誰か来ても、俺以外だったら、絶対にでるなよ!」


 俺はそう言って最低限の物を持つと、刹那先輩の家へと駆け出した。



ーーーーーーーーーー



 俺は走りながらも携帯を確認する。


 すると、刹那先輩からは、前回と同じように、自分が言いすぎた、間違っていた、などという文章がメールで送られていた。



「今はっ、そんなことよりっ!!」



 全力で走ったからだろうか。


 刹那先輩の住むマンションの玄関には十分もしないうちに到着する。



 俺は、震える指で、インターホンを押す。



ピンポーン



 頼むっ!!刹那先輩っ......まだ、まだ無事でいてくれっ!!



 少しすると、バタバタと慌ただしい音と共に、玄関が開けられる。


 そこには、驚いた顔の刹那先輩の姿があった。心なしか、刹那先輩の目元は赤くなっているように思える。



「は、はると!?き、来てくれたの??あの、ね?昨日はごめん......私も、ちょっとおかしかったっていうか......って、はると?」


 俺に対して必死にお詫びの言葉を考えていたのだろうか。刹那先輩は何かをひたすら俺に話しかけていたが、俺の様子を見て目を丸くしている。


 よかった、刹那先輩だ。



 刹那先輩が、生きてるんだ......



「いや、いいんだ、もうそれは。はぁーっ......安心したら疲れて、腰が抜けた......」



 俺が玄関先でへなへなと座り込んでいると、刹那先輩は何が何やらといった様子でこちらを見つめている。


「ど、どうした、の?......はると?」




ーーーーーーーーーー


「そっか、それで、心配で私のところまで、来てくれたんだね」



 俺は今まで起こったことを話した。


 と言っても、いきなりそんなことを話しても信じてもらえないだろうから、あくまで夢で見た、ということにしてだが......



 俺が今までの話を話し終えると、何故だか刹那先輩は嬉しそうにしている。


「それにしても、そんな怖い夢見たから私の元に慌てて走って来るなんて。はるとも結構、可愛いとこあるよね」


 刹那先輩は俺の様子を見てニヤニヤとしている。



「なっ!??俺は!刹那先輩のことを心配してっ......っ!!」



「ふふふふふ」



 全く......こっちは本気で心配して来たっていうのに。


「それより、はると」



 先程までけらけらと笑っていた刹那先輩だが、今度は打って変わって、真剣な顔をしている。



「カメラとか、他にも色々......ごめんなさい!!」



「刹那......先輩......」


 刹那先輩は顔を伏せたまま動かない。


「私も、今考えると、勝手にカメラをつけるとか、どうかと思う。本当に、ごめんね。でも、不安だったから......私にとって、本当に家族と呼べるのは、はるとだけ。それで暴走しちゃって......本当に、ごめんなさい」



「刹那先輩。俺は、もう気にしてないです。昨日は、その、俺もびっくりしちゃって......酷いこといって、すみませんでした!」



 俺がそう言うと、刹那先輩は今度は表情を輝かせている。


「ううん!分かってくれたならいい!それじゃあ、夢の通りになったりしたら危ないし、カメラの件はあのままでーー」



「いや、それは全部取り外して下さい。それはだめ、です」



「そ、そうだよねー」


 流石にそれは厳しいからな。でも、前回の事でも分かった。



 刹那先輩は......きっと、寂しいんだろう。


 前回の一件で、俺が思った事だ。



「刹那先輩、変なこと聞きますけど、ご両親から、連絡とかって最近きてますか?」



「......来てないよ。あの人たちは、なんていうか、すごく忙しいから」



 刹那先輩は寂しそうな目をしている。


 おそらく、刹那先輩の両親からは、もう長い間連絡はないんだろう。


 お金に困っていないところを見ると、生きては居るんだろうけど......



 小さい頃から刹那先輩はずっと一人で生活している。


 一人で居ることに慣れては居るんだろうけれど、だからと言って一人で居ることが平気である訳ではないだろう。



「刹那先輩、一緒に暮らしますか?」



「え、ええええ!!??」







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