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 俺が今日あったことを話し終えると、風莉さんは複雑そうな顔をしている。


「確かに、春翔さんの話を聞くと、気がめいってしまう気持ちもわかります……」


 よかった。ほのかや刹那先輩のこともあるし、風莉さんまでおかしなことになっていたらどうしようかと考えたが、風莉さんは普通みたいだ。


 俺はその様子に一安心する。


「よかった、風莉さんはわかってくれるよね……刹那先輩、一体、どうしちゃったんだろう......それに、俺はどうすれば......」


 俺は思わず頭を抱えて考え込んでしまう。


 すると、風莉さんは俺の頭そっと抱きしめると、ゆっくりと優しく撫でてくれた。


「落ち着いてください、春翔さん。確かに、急なことで、混乱する気持ちもわかります。その、梅野さんの事件もありますしね………ですが、今重要なのは、春翔さんが刹那さんをどう思っているかということでしょう?......春翔さんは、今刹那さんのことをどう思ってるんですか?」


 刹那先輩をどう思っているか……か。


「ごめん、今は……正直わからない。やっぱり、盗撮されてたなんて知ったら少し、その、気味が悪いし、どうしたらいいのか……」


 そうすると、風莉さんはいつも俺に向けてくれる、優しい笑顔で俺のことを見ている。


「まあまあ、春翔さんなら、すぐに答えを出せちゃいます!なんたって、春翔さんは私のヒーローですから!!」


 なんだか、風莉さんと話すと安心するな。


 昔あったある一件以来、風莉さんは俺が落ち込んだり困ったりしてしていると、いつもこの言葉をかけて、俺を励ましてくれる。


 こういう非現実的なことが連続で怒っている時に、こういう普段通りのものに接することができると、とても心が落ち着く。


「なんか、風莉さんと話してると落ち着くな……ありがとう。風莉さん。ちょっと、元気が出たよ」


 俺がそういうと、風莉さんは優しくこちらを微笑みかけてくれる。


「いえいえ、ですが……春翔さんの家がそんな状況というのも困ったことですね。かなり不便でしょうし……そうです!うちの者に頼めば、そういうカメラを見つける専用の機械もありますし、明日の朝までにはそういったカメラなどを取り除くこともできると思いますが……いかがですか?」


「ふ、風莉さんの家って、そんなものまであるんだね……そうだね、頼めるのならお願いしようかな。いつまでもほのかの家に、居候いそうろうするってわけにもいかないしね」


「うちに泊まってもよろしいですよ?あいにく空いている部屋はたくさんありますし……」


「いや、盗撮カメラを取り除いてくれるだけでもありがたいよ。とりあえずこの後は家に戻って、刹那先輩のこともゆっくり考えてみるね。ありがとう、風莉さん」


 俺がそういって精一杯感謝を伝えると、風莉さんは少し顔が赤くなっている。


「い、いえ……そんなことは……わ、私はただ、春翔さんの……その……」


「うん?どうかした?」


「い、いえ……なんでもありません。それでは、暗い話はここまで、この後は少し、面白い話をいたしましょう」



 その後、俺たちはたわいない話をした後、俺はほのかの家の近く送ってもらって、車を降ろしてもらった。


 今の所、風莉さんに変わった様子はなかったな......


 なんだか、みんなのことを疑っていると、騙しているみたいでなんだか嫌な気分になる。早くみんなの無実を証明して、いつも通りの日々に戻りたい......



 ほのかの家のインターホンを押すと、中から「はーい!」という声とともにほのかが出てくる。


「はるくんっ!!!お疲れ様です!大丈夫ですか?怪我はないですか?せっちゃんに、何かされたりしていませんか??」



「あ、ああ、大丈夫だよ、ほのか。ありがとうな」


「そ、それならよかったです……とりあえず、中に入りましょ。夕飯も作って待ってたんですから!」


 ふう、ほのかは俺と刹那先輩に会ったことはまだ知らないか、よかった。


 俺は、ほのかにはさっきの刹那先輩とのことは、ほのかには言わないことにした。


 前回俺が死んでしまう前の、ほのかの暴走は俺の記憶にも新しい。刹那先輩が盗撮カメラの犯人だということはわかったが、梅野さん殺しの犯人だと決まったわけではない。


 ほのかのことだから、さっきの一件を話しただけで刹那先輩を殺人犯だと決めつけかねないし、カメラのことだけでも、何らかの凶行に及ぶ危険性は、十分にある。


 風莉さんに打ち明けて少し気が晴れたということもあってか、ほのかに打ち明けなくても、自分の精神衛生的になんとかなりそうだ。



 テーブルに着くと、ほのかが鍋を持ってくる。


「あれ?もしかして、またカレーなのか?俺は大好物だから嬉しいんだけど、こんなに短いスパンで同じメニューってほのかにしては珍しいな」


 すると、ほのかはこちらに申し訳なさそうな顔を向けてくる。


「えっと、一昨日ののカレーは、その、ちゃんとしたものではなかったので……今度はちゃんとした方を食べてもらいたいなって、思ってさ……」


 ああ、そういうことか。


 この前ほのかが作ったカレーはhのかが作った、催眠薬入りのカレーだった。多分あの時のことを気にしているんだろう。


「あの時は、本当にごめんね。はるくんが私のこと疑ってる、嫌いになっちゃうって、思ったら、なんか、私暴走しちゃって……今度からは、ちゃんとはるくんにも相談するから!!」


「いいや、こっちこそ、心配させちゃってごめんな。それより、あんま長々と喋ってると、せっかくのカレーが覚めちゃうぜ、早く食べよう!」



 前回のほのかの一件は、犯人がほのかの暴走を誘発したことで起きた一件だろう。



 ……待てよ?



 だとしたら、今回の刹那先輩の一件。


 あれも、梅野さん殺しの、そして、二回も俺を殺した犯人の思惑が関わっている……?


 もちろん、まだ刹那先輩が犯人だという可能性もあるから断言できないが……


 ……いや、とりあえず、今は考えるのはやめておこう。


 せっかくほのかが作ってくれたカレーが不味くなる。刹那先輩へのこれからのことなんかは、とりあえず夕飯を食べ終わってから考えよう。


 ほのかに気づかれてもまずいしな。



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