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「な、なんなんだよ!!これは!!!」


 俺はあまりの光景に、唖然とする。


 その部屋は、あたり一面、もちろん天井や床まで、俺の写真で埋め尽くされていた。


「えっとね、ここまではるとの写真を集めるの、大変だった。はるとは、普段は鈍感そうに見えて、周りのことはよく見ていたりする、からね。」


 こんな……こんなことって……


「お風呂とかの画像は、18禁だから、ここには貼ってないんだ。っていうか、それは映像でしか、残してないし……そうそう、ちなみにこれが一番お気に入りの写真、だよ。はるとが高校に入って初めての体育祭で、走ってるとこ。必死そうなんだけど、そこがまた、かっこかわいくて、一番好き。それで、これが二番目のーー」


 刹那先輩は俺に写真を持って走り寄ってくる。


 だが、俺は、刹那先輩が伸ばしてくる手を、思わず払いのけてしまう。


「……え?」


「え?じゃねえよ!!なんなんだよこれはっ!!」


 俺が大声をあげると、刹那先輩は驚いた顔で俺を見ている。


「ど、どうしたの?はると。そんな急に大声あげて、変だよ?」


「変って……刹那先輩の方が、よっぽど変でしょう!!こんな、こんなことされたら、普通嫌だと思うでしょうが!!」


 俺がそう言っても、刹那先輩はまだ、腑に落ちない様子でいる。


「嫌……なの?なんで?私は、別に嫌じゃないよ?」


「わ、私は、って……」


 だめだ、おかしくなりそうだ。

 

 俺が……俺がおかしい、のか?

 だって、普通いくら仲のいい先輩でも、部屋の中隅々まで監視カメラで監視されているなんて、気味が悪いと思うのは普通だよな……?


 刹那先輩はなんで……なんでそんな、本当に何が悪いのか分からないみたいな顔をして……


「そ、そりゃ普通嫌でしょう。逆に、刹那先輩が俺、部屋も、トイレも、風呂場までずっと俺に監視されてたら、どう思うんですか」


「どうって……そんなの……」


 流石に、刹那先輩も、わかってーー


「うれしい、よ?」


「……え?」


 俺がそう言うと、刹那先輩は突然笑い出した。


「な、何が、おかしいんですか……」


 俺は刹那先輩の様子に若干の恐怖を覚えながら、思わず質問をしてしまう。


「だって……ふふふ、はると変なの。私は、はるとにずっと見ていてもらえるなら、大喜びだよ?だって、いつでもはるとを感じられるんでしょ?そんなの、喜ぶに決まってるよ?はるとは、違う……の?」


「あ、当たり前だっ!!」


 分からない。


 俺は、刹那先輩のことが……彼女のことが、分からない。


 今まで、親しく思えていた笑みが、大切な親友だと、家族だと思っていた、優しい笑顔が、今では酷く歪で、とても気味が悪く思える。


「はると?何言って……」


「あんたには分からないかもしれないけどっ……普通、『赤の他人』にそんなことされてたら、気持ち悪いと思うでしょうがっ!!!!」



 俺がそういうと、刹那先輩は酷く動揺している。


「赤の……他人……?」


「そうですよ……っ!普通、他人に四六時中見られてるなんてことが分かったら、気持ち悪いと思うのが普通でしょうが!!」


 刹那先輩はひたすら何かをつぶやいている。くそ……っ!


「そっか、分からないんですね……わからないなら、もういいです。俺、帰りますから」


 俺はそういうと、荷物を取って刹那先輩の家から飛び出した。



「……私のこと、家族って……言ってたのに……」




ーーーーーーーーーー



「くそ……っ、刹那先輩、どうしちゃったんだよ……」


 俺は、刹那先輩の家を出た後、呆然としたまま街の中を歩いていた。



 結果から言って、俺の家に大量のカメラを仕掛けていたのは、刹那先輩だった。


 さっきは、気が動転して理解が追いついていなかったが、冷静になって考えてみても、やはり刹那先輩はおかしいように思える。


 もちろん、刹那先輩が俺に好意を寄せていることはなんとなく気づいてはいたけれど、ここまでだとは、思っていなかった。


 何より一番ひどいのは、本人がそれを『悪い事』だと分かっていないという事だろう。


 確かに刹那先輩は、多少世間の常識とズレていたり、変わった人だとは思っていたけど、今までその倫理観を疑うようなことは一度もなかった……


「なのに、なんでこんなこと……くそっ、考えれば考えるほど、思考がごちゃごちゃしてくる」



 俺が街の中を歩いていると、後ろから、車の近づいてくる音、そして、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「……あら?春翔さん?こんなところで、何をしているんですか?」


「……あ、風莉、さん?」


 俺の様子がおかしいと気づいたんだろう。風莉さんは俺に車の中に乗る様に促した。


 俺がそれに従い乗ると、風莉さんが何があったのか聞いてくる。


 風莉さんの乗っていた車は、いわゆる小さめのリムジンの様な車で、運転席と後部座席が防音の板で仕切れらている仕様になっている。


 昔何度か乗ったことがあり知っているのだが、普段は映像で運転席から後部座席の様子を確認できる様になっているのだとか。


 本来は安全のために、映像や音声を切ることはないんだろうが、今回は話が話なだけに、話の内容は他の人には聞かれたくない。


 俺は音声だけでもと、その回線を切ってもらえる様に、風莉さんにお願いした。


「堺、春翔さんと少し話がしたいので、ここら辺を少しの間ドライブしていただけますか?それと、あまり聞かれたくない話のようなので、音声を切ってもらえますか?」


 そういうと、老年の執事がこちらを一目見た後、風莉さんの言葉に応える。


「はい、お嬢様。お相手が春翔様なら安心でございます。それではこちらからの映像、音声は切らせていただきます。ごゆっくりおくつろぎください」




 そういうと、風莉さんはふふふ、と微笑んでいる。


「まあまあ、堺は一言余計なのですから……それで春翔さん、どうなされましたか?」



 俺は、風莉さんに、今日あった刹那先輩についてのことについて話した。


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