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 俺は刹那先輩と共に刹那先輩の家に向かっていた。


「そういえば、ハルトがうちに来るのも、久しぶりだよね」


「え?......ああ、そうですね、本当に、久しぶりです……」


 俺は思わず顔を伏せてしまう。


 刹那先輩は俺の様子に気づいたのか、こちらの顔を覗き込んでくる。


「ハルト、どうか、したの?......何かあった?」


 そうか、そうだった。


 俺が刹那先輩の家に行ったのは、俺が2度目に殺される前のことだ。


 俺の記憶には、俺をほのかの暴走から救ってくれた刹那先輩の記憶があるが、刹那先輩には、あの時の記憶はないんだよな……


 これからも、もし同じ様なことがあるならば……そう考えると、なんだか少し寂しい気分になる。


 


「……ると、はると、聞いてる?......はるとってば!!」


「うおっ!?」


 俺が考え事をしていたからだろう。刹那先輩は俺の制服のネクタイを掴むと、そのまま思いっきり引っ張ってきた。


 ちょっ、地味に苦しい……それに、顔近いし……今の状況、誰かに見られたら、絶対勘違いされる!!刹那先輩の顔が、目が、唇が、文字通り目と鼻の先だ。


「せっかくのデートなのに、私を無視とは、いい度胸……って、言おうと思ったけど、私ははるとを心配してる。何か、あったの?」


 基本的には、刹那先輩はいつも俺のことをいじってくる。


 だけど、人付き合いが苦手だというわりに、雰囲気を察する能力はかなり高いと思う。


 こういう風に、俺が少しでも悲しい気持ちになったりするとすぐにそのことに気づいて、いち早く真剣に心配してくれる。


 やっぱり刹那先輩は、優しいんだよな。


 刹那先輩は、昔からこうだ。


 いつも、俺が気を使わないでいいような雰囲気で助けの手を差し伸べてくれる。


 いつもはつい冗談で刹那先輩を子供呼ばわりしてはいるが、こういう時には年上の余裕というものを感じさせるんだから、本当に不思議な人だ。



 そうこうしているうちに、俺たちは刹那先輩の家の前にたどり着いた。


「それじゃ、話したいこともあるから、早く家にはいろ?あんまり、他の人には聞かれたくない、し」


ーーーーーーーーーー



 俺は、刹那先輩の家に入り、そのまま前と同じように刹那先輩の部屋に通された。


 以前来た時と、特に変わった様子はない。


 気になる点といえば、実質女の子の一人暮らしだというのに、ずいぶん簡素な内装だな。と思うくらいだ。


 まあ、そこも刹那先輩らしいといえばらしいのだが……



「はると、女の子の部屋をそんなにジロジロ見るなんて……ヘンタイ。だね」


「なっ!?何言ってるんですか!別にそんな、ジロジロなんて見てませんよ!」


 刹那先輩はさっきと同じように軽口を叩いてくる。まったくこの人は……



「それより、今日は話したいことがあったんですよ。刹那先輩もあるみたいですけど……俺から先に、いいですか?」


 俺がそういうと、刹那先輩は首を縦にふる。


「うん。いいよ、私の話も長くなりそうだから、はるとが先で」


 俺は、ずっと刹那先輩に聞きたかったことを口にする。


 俺は早くそれを聞いて、安心してしまいたかった。


「えっと、変なことを聞くんですけど、一応。今日はこのことについて、聞きたいことがあってきたんです。」


 俺はズボンのポケットに入れていた「ソレ」を取り出して、刹那先輩に見せる。


 しかし、刹那先輩の反応は俺が思っていたものとは違っていた。


「は、ると。なんで、それを……」


 刹那先輩は、明らかに動揺していた。


 しばらく呆然としていた刹那先輩だったが、おもむろに立ち上がると、俺の手からそれを奪い取ってしまう。


「はるとっそれ、返してっ!!私のっ!!!」


 俺から奪い取り、刹那先輩が、今大事そうに抱えている「それ」は……俺の部屋に取り付けられていた。隠しカメラの一つだった。



「刹那……先輩……」


 刹那先輩は顔を伏せていて、こちらからでは表情をうかがい知ることはできない。


「……それは、俺の部屋に取り付けられていた、隠しカメラです。これを、俺の部屋に取り付けたのは……」


「うん。よくわかったね。それを取り付けたのは、私、だよ」


 刹那先輩は、俺がそういうより早く、それが自分だと告白してきた。


 そんな……まさか、とは思っていたが、やはり俺は信じられない。今見せたのだって、俺は刹那先輩がこれを取り付けたのかもしれない、という疑念を晴らしたかったからだ。


 なんで……どうして、刹那先輩は、そんなことを……


「ばれちゃったなら、しょうがないよね。あーあ、残念だな。」


「な、なんでっ!なんでこんなことをするんですか!刹那先輩!!」


 そういうと、刹那先輩はこちらを、今まで見たことがないような妖艶な瞳で見つめてくる。


「だって、好きな人のことを、いつでも見ていたいって思うのって、普通でしょ?」



 ……は?


「わたしは、ずっと言ってたよね。私ははるとのことが、好き、なんだよ。でも、春翔はみんなのものだから。私が、私だけが独占するわけにも、いかないでしょ?」


 そういうと刹那先輩は、いたずらがばれた子供のように、てへっとしたを少し出している。


「最初はね。春翔の部屋に、一つだけだったんだ。春翔がいない時を狙って、一つつけただけ。けど、一つ付けると、部屋にいない時はどうしているんだろう、とか、どんどん気になっちゃってさ。それからは、もうどんどん増えちゃって。気付いたらトイレとか、お風呂にまでつけちゃったよ。」


 俺は、言葉を発することができないでいた。


 なんで。


 なんでこの人は、ちょっとしたいたずらがばれてしまったみたいな、なんでもない事について話している様な反応をしているんだ?



「あ、そうだ、はると。こっち来て!!」


 そのまま刹那先輩は、おれの右手をつかむと、ぐいぐいと引っ張ってくる。


 刹那先輩に連れられ、部屋の外に出ると、前回物置部屋だと言っていた部屋の前まで連れてこられる。


 すると、部屋には鍵がかかっている様で、ポケットから鍵を取り出している。


「……ここ、物置、ですよね」


 俺がそういうと、刹那先輩は首をかしげる。


「何言ってるの?はると。ここは……」


 刹那先輩が部屋のドアを開けると、そこには、異様な光景が広がっていた。



「はるとのための部屋。はると部屋、だよ?」



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