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「もしかしたら、俺の部屋に監視カメラを仕掛けたやつが、今回の事件の犯人なんじゃないかって俺は思ってるんだ」
俺がそういうと、皇は曖昧な表情をしていた。
「そうだな......そのことだけど......」
皇はそう言うと、俺から目をそらし、目を伏せる。
「確証もないし、俺にはその盗撮犯が誰かはわからないけど......俺が思うに、その盗撮の犯人は、今回の事件とは関係ないと思うぜ?」
「なんだ?それ、どういうことだ?」
俺がそう言うと、皇は真剣な顔で考え込んでいる。
「ほのかちゃんの言う通り、お前の家に、そこまで大量の監視カメラを仕込んでるなら、お前のことを四六時中監視してた......そう言いことであってるよな?」
「......あ、ああ、まあそうなるな」
流石にちょっと、気味が悪い。
だが、確かに皇の言う通りだろう。
「お前が梅野さんと話したのは、一昨日が初めて。それで、彼女が殺されたのが、その日の夕方から夜。つまり、犯人は自殺に見せかけるだけの頭はあるが、思い立ったらすぐ実行、直情的って訳だ」
なるほど、確かにな。皇の言う通りだ。
「そんなやつが、映像が見えなくなった事に気付いたら、もう何かしら事件を起こしてんだろ?」
「皇の言うことは一理あるけど、だからってそうとも限らないだろ?」
俺がそう言うと、皇も肩をすくませる。
「まあ、絶対そうだって訳でもないし、まだそんなに日にちも経ってないからさ。その事件がが起こってないだけって可能性もあるから、確定ではないんだけど」
皇がいろいろと言うと同時に、朝のホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴った。
「まあ、俺も危なくない範囲で調べといてやるから」
「ああ、ありがとな、皇」
監視カメラを仕込んだやつと、今回の事件の犯人が別人か......
確かに、その可能性もありえるな。これからはなんでも決めつけて行動することは控えよう。
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放課後、ケータイを確認すると、刹那先輩からメールが来ている。
なにやら、俺に話があると言うことで、今日は部活も休みの日なので放課後付き合って欲しいとのことだ。
「本当に1人で行くんですか?」
ほのかは、やはり心配そうな顔で見つめてくる。
「心配しないで、大丈夫だよ。それに、何かあったらすぐにほのかに連絡するからさ」
俺は、ほのかをどうにかなだめる。やっぱり、ほのかはみんなのうちの誰かが犯人だと思ってるんだな......
だけど、俺も刹那先輩には聞きたいことがいくつかある。
俺は、刹那先輩の待つ校門へと向かった。
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「刹那先輩、お待たせしました!」
俺が校門へ行くと、どうやら刹那先輩が先に待っていてくれていた様だった。
「ううん。私も今来たところ、だよ。はると、来てくれてありがとね」
刹那先輩はいつもとなんら変わらない様子だった。俺は少し安心する。
「それで、先輩話って......?」
俺がそう質問すると、刹那先輩はにっこり微笑んでいる。
「うん。ここだとなんだから、ちょっと場所、移そうか?」
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「......で、なんでこうなってるんだっけ?」
俺は刹那先輩に連れられるまま、なぜかカラオケまで来ていた。
「〜〜〜〜〜〜♪」
刹那先輩、熱唱してるし......
俺は刹那先輩が歌い終えたのを見計らって話をし始めた。
「驚きです、刹那先輩。結構歌上手かったんですね......って、そんなことよりあの、先輩?なんでカラオケに?」
俺が質問すると、「ふぅ〜」と息をついた後答えてくれる。
「ふふふ。どうだ、惚れ直したか。......って、はるとは何を言ってるの?今日は一日中、私とデートって、メールに書いといたでしょ?」
......あ、本当だ、最後のところに、デートだって書いてあった。
「あー、ほんとだ。書いてありますね......って、それはいいんだ!!刹那先輩、話があるんですよ!!」
俺がそう言うと、ジト目でこっちを見ていた刹那先輩は、ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
「なに。はると、もしかして、告白?私ははるとの告白なら、いつでもオーケーだけど。できればもう少し雰囲気のある......」
「......刹那先輩」
俺が真剣な顔をしていると、俺の雰囲気に気づいたのか、刹那先輩も真面目な表情になり、軽口を辞めてくれた。
「今日は聞きたいことがあって来たんです。先輩は............っ!?」
ビリリリリリリリ!!!!
「なんだ!?」
なにやら外で大きな音がしている。
外で警報みたいなものがなっているみたいだ。
すると、音がしたすぐ後、カラオケ店の店員が部屋の中に入ってくる。
「お客様っ!申し訳ありませんが、外に避難いただけますか!?」
「はると、なんかやばい、かも?とりあえず外に、出よ?」
俺たちが外に出ると、中から出て来た店員さんが説明してくれた。
なんでも、誰かが火災報知器を間違えて押してしまったらしく、危険確認のためにこんなことになってしまったんだとか。
「びっくりしましたね......」
俺がそう言うと、刹那先輩は何やらブツブツとつぶやいている。
「まさか......こんなところまで追ってくるのは......」
「刹那先輩?なんて言ったんですか?」
俺が再度質問すると刹那先輩は意を決したような顔をしている。
「ん、ああ、はるとごめん。さっきの話だけど、ちょっと用事を思い出した。だから、私のうちに帰りながらで、いいかな?」




