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 俺はそんなとりとめのない思考から頭を切り替えて、壁にかかっている時計を確認する。


 見ると時計の針は丁度7時半を指したところだった。



「まだ、学校には間に合う時間だな。ほのか、準備しよう」


「え?はるくん、今日学校行くの?」


「正直、行きたいって思えるような状態じゃないけど、気になることもあってな。それに、杏里にはいつもと同じ様に振舞ってた訳だし、体調が悪い訳でもないのに学校へ行かないって言うのもおかしいだろ?」


 俺がそういうと、ほのかはふっと顔を伏せてしまう。


「はるくんは、あの人たちを疑ってるのに......私と一緒に、犯人を調べてるのに......あの人たちと一緒に登校するんだ?仲良くしちゃうんだ......私はこんなに心配してるのに......」



 ほ、ほのかさーん?あれ?なんか、さっきと様子が......


 俺はほのかの様子を見て、慌てて説明を始める。


「いや、ほら、手紙には10時にって待ち合わせの場所が書いてあっただろ?なら俺がいつも通りに登校してるのに、皆のうちの誰かに会わなかったら、それこそそいつが怪しいってことになる。本当は、待ち合わせ場所に行ってもいいんだろうけど、相手の指定した待ち合わせ場所なんて、何か罠でもあるかもしれないしさ。これが犯人探しのための一番効率が良い手段なんだよ」



 そもそも相手は拳銃を持っているから、対策のしょうがないのだが、それを言うと何故そんなことを知っているのかと流石にほのかも不安に思うだろうし、心配されて余計学校に行けなくなってしまう。


 もちろん、俺は心の底では、みんなの中に犯人はいないと思っている。


 確かに、うちの幼馴染達は琴線に触れると怖いこともある怖いが、基本的に根は優しい奴らなんだ。


 いくらなんでも、人なんて殺せるはずがない。


 だから、早くこんな疑念を捨ててしまいたかった。


 そのためにも、今日は普通に学校に通って、いつもと同じみんなの顔を見て安心したい。


「まだ、遅刻するような時間でもないけど、取り敢えず学校に行く準備をしよう」



 俺の説明を聞くと、ほのかはしぶしぶ俺と学校へいくことを了承してくれた。


ーーーーーーーーーー



「あれ、はると。おはよ。今日は、何でほのかの家から?」


 準備を整えてほのかの家を出ると、俺の家の前で、刹那先輩がいつものように待っていた。



「あ、あー、なんか、うちのガスコンロ壊れちゃって、ほのかの家のを借りることになったから、朝ごはんもそのまま食べようってことになって......」


 俺はほのかとあらかじめ考えておいた理由を刹那先輩に伝える。


「......ん。そっか、なら納得、だよ。ほのかも、おはよう」


「うんっ、せっちゃん、おはようございます!」


 ほのかはいつもと変わらない様子で刹那先輩に接してくれるようだ。


 内心どう思っているのかは分からない。


 だが、俺に迷惑がかからないように行動します、とさっき言ってくれていたのは本当のようだ。



「さ、2人とも、早く行こうぜ。杏里達を待たせちゃいけないしさ」



ーーーーーーーーーー



 その後、俺の幼馴染2人、つまり、杏里と風莉さんも特に変わった様子はなく、いつも通りに登校して来ていた。


 とりあえず、よかった。


 ここで刹那先輩、杏里、風莉さんの内誰かが登校して来ていなかったら、俺の中ではその人が犯人なのではないかという疑念が強まってしまう。


 ただでさえ仲の良い四人を疑うのは精神的に辛いんだ。

 

 そんなことにはなってほしくない。



「よう!神宮寺!ほのかちゃんもおーはよっ!」


「皇くん、おはようございます」


「ああ、皇か、おはよう......」


 朝みんなと別れ、教室に着くと皇が声をかけてくる。


「何だよー、神宮寺、元気ないじゃないかーっ!!



 .........どうか、したのか?」


 こいつは勘が良いからな。できるだけ表には出さないようにしてたんだが、何かあったのかもしれないと気づかれてしまったようだ。



 皇は、実はかなりハイスペックな男だ。頭脳も明晰、運動神経は抜群。


 特に、いわゆる武道と名の付くものは天才と聞いている。


 何でも幼い頃から古流武術を習っているとかで、本人曰く


「いや、銃弾くらいなら銃口と指の動きを感じながら、相手の目を見れば避けられるんだぜ?」


 とか何とか。


 そんな話、漫画以外では聞いたことがないので、流石に冗談だと信じたいが、目が本気だったので本当なのかもしれない。


 友達ながら、こいつは敵に回したらまずいとわかる。



 俺はほのかにアイコンタクトを送る。


 ほのかも俺の意図に気付いてくれたのか目で肯定の意を伝えてくる。


 実際、俺はただの高校生で、特に何の取り柄もない。俺はいつもの日常を取り戻すためには、出来る限りみんなの力を借りるしかない。


 俺は声を落として皇に、今までのことを相談することにした。



「実は......」



 俺が今まで起きた出来事(もちろんほのかや俺のことはうまく隠してだが)を説明すると、皇は真剣な表情にで話を聞いてくれる。



「なるほどな。状況はわかった。ほのかちゃんがその犯人から外れてるってことは......まあ、2人の間で、かたが付いてるなら俺が言うことはないか。俺も、ほのかちゃんは犯人から除外して考えよう。神宮寺からは本心を隠しているような印象も受けなかったからな」


 まさか。


 隠していた積もりなのだが、俺とほのかの間に何かがあったということは何となく察してしまったか。


 本当に、勘がいいと言うかなんと言うか......本当に何者なんだろうか、この男は。


 俺が黙っていると、皇は一息ついた後に話を続ける。


「それで、今、春翔が一番困ってて、知りたいとと思ってることは、なんなんだ?」


 

「それは......俺の部屋に監視カメラをつけたのが誰なのか、それが知りたい」




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