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監獄惑星  作者: 猫文
タイガー
9/28

初戦

ブリッジは研究所の最も高い位置に造られている。前方180度はすべて外観モニターによって外の映像が映りだされていた。

外観モニターとは、擬似的な窓を作り出す装置で窓枠に似た形のモニターには常に外の映像が映し出され、そこには透明なガラスがあると思わせる造りになっていた。

ブリッジ中央には船長、前方に操舵手、左右に通信手とデータ解析手が仕事をしていた。



外を眺めていた博士が隣にいるスノーに声をかけた。

「初の実戦になるけど、大丈夫かい」

「問題ありません」


相手を気遣い心配してかけた声ではない。まるでパソコンの電源ランプが点灯しているのを確認しているようなトーンだった。返事もまた電子合成音声のような体温の無い響きだった。


「光学映像、出ます。最大望遠です」データ解析手の報告と同時に正面上部のモニターに追手のMSが表示された。

まだ豆粒大の大きさで形状は判断できなかった。


「行っておいで」

「はい」

スノーは慌てた様子もなくハンガーへ降りて行った。


博士はマイクを手にすると

「追手が現れました。皆さん速やかに所定の位置へ移動してください。タイガー君、今回は君が搭乗してください」


ハンガーで放送を聞いたタイガーが

「うおおお、まかせとけ~」と雄叫びをあげた。



Gのコックピットは複座式で奥がスノー、搭乗口に近い操縦席が適合者だ。


スノーのパイロットスーツには操縦席と連結するユニットが両肘、両膝、両手足の甲に装着されていており、微細な体の動きを電気信号に変換し操縦する方式であった。


さらに、この研究所が取り組んでいるのが、スノーの持つ《他人と分かり合える力》を最大限引き出すために考案されたNTノントークリンクシステムである。適合者の思考を読み取り最適な戦術パターンを選択するという試みであった。


スノーのかぶるヘルメットには、適合者の思考を増幅し伝達するための発信機が装着されており後頭部には操縦席と連結するユニットが装着されていた。


過去にもスノーと同様の能力を持つパイロットは存在していたが、戦闘中に敵側のパイロットと精神をリンクさせ暴走事故を起こしたり離反するケースがあり、今回のプランでは物理的に近い位置にいる適合者とのリンクに限定し、外部と隔離、さらに感情を抑制するよう薬物投与がされていた。



先に操縦席に座るスノー。カシッカシッとスーツが固定されていく。


ぬうっと搭乗口から現れたのはタイガー。

「よう、お姫様~、よろしくな」


今まで博士の隣にいたため、彼女がここまで囚人と接近したのは初めてである。

舐め回すように見るとはよく言ったもので、触れないものの顔を極限まで寄せてくる。


「はあ~たまらんぜ~メスの匂い。ご無沙汰だからよお、この星を脱出するまでは我慢してやる、契約だからな」

クックックックと厭らしい笑いを発しながら遠ざかる。


スノーは微動だにしなかった。足元にいる蟻のように、意識して注意しなければその存在すらも感じ取れない程に、囚人たちに関心が沸いていないのである。



職員からヘルメットを渡され窮屈そうにかぶるタイガー。

何とか頭を押し込み操縦席と接続をする。

適合者のヘルメットには受信機が装着されており思考を効率的に引き出す作りとなっていた。


「シートベルトをしてください」と職員に言われたが体のサイズが合わずロックができない。

後部座席と違い操縦する必要がないため固定装置はシートベルトのみ。


「あ~構わない。体は丈夫なんだ、いらねえ」と職員を追い払ってしまった。


静かにコックピットハッチが閉じ、スノーが囁く。



「レディ……リンケージ……」



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