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監獄惑星  作者: 猫文
博士
7/28

合格

大男の心温まる説得により全囚人が適正テストを受けさせられた。流血が数名で済んだのは幸いだったと細目の彼は安堵していた。


「改めて自己紹介します、この研究所の所長を務めています。博士と呼ばれていますので皆さんもそう呼んで下さい」と白衣の男は学校の先生風に立ち話しを始めた。


ここはブリーフィングルームで、簡単な椅子と机が並び正面には大型のモニターが設置されている。

適正テストに合格した囚人が集められていた。


「そしてこの子はスノー、開発中MSの専属パイロットです」と博士の隣に立つ少女を紹介した。


「決してこの子には手を出さないように。脱獄プランが失敗して荒野を彷徨いたければ止めはしませんが」と改めて念を押してきた。実は適正テスト中にも同じ注意を全囚人にしていたのだ。

博士はスノーを椅子に座るよう促した。


――仕方ない俺たちは囚人だ、中には婦女暴行犯もいるかもしれない。

と二枚目の彼は納得していた。


「適正テストに合格した皆さんをこれから適合者と呼ばせて頂きます」


一同を見渡した後、

「皆さんにも自己紹介をして頂きたいのですが……、本名が知れると喜ばしくない人もいると思います。なので私がニックネームを付けようと思います」


――ああ、この人ニックネーム付けるの好きなんだ。

今まで表に出したことの無い笑みを浮かべる博士を見て二枚目の彼はちょっと可愛い所もあるんだと感じていた。


「代表のあなた目が細いですね。キツネでどうでしょう」

思わず噴出してしまう二枚目。

「ああキツネでいいさ」と細目の彼は了承した。


「次――」

「俺はタイガーだ」と博士が言う前に大男が発言した。

「肩に縞模様の傷がある、以前からそう呼ばれていた」


――変なニックネームを付けられ笑われるのを未然に阻止するとはやるな。

と関心する二枚目だった。


お株を奪われた博士は若干不機嫌気味に

「次はあなた、眼鏡の片方にレンズが嵌っていませんね。モノクルでどうでしょう」

以外とまともなので安心したのか

「それでいいです」と眼鏡の彼が返答した。


「次に、あなたは何か華がありますね。スターはどうでしょう」

「そ、それは恥ずか――」

「いいじゃねえか、す、た、あ」

ガハガハと笑うタイガーに再考願いは遮られ、呆れつつもハズレではないだろうと諦めた二枚目だった。


「次はあなた、ひょろ長いですね、ネギで」


刈り上げられた短髪は暗めの赤色、ぎょろりとした目はガイコツを思わせる、体には肉が付いていないのではないかと思うほど痩せこけていた。

ネギと呼ばれた男は若く、びくびくと怯える姿は小動物を連想させる。


「おまえ、良かったぜ」

またガハガハと笑うタイガーに軽蔑の眼差しを送るスター。

何かされたのでろう、さらに萎縮し震えるネギ。


そんなタイガーを気にしない博士はネーミングを続けた。


「あなたの、それは十字架ですか」


たずねられた男はこの部屋の中で一番の年長者で、頭髪の頂上部は無毛であった。残った髪はロマンスグレー、若干背中の曲がり始めた姿勢と細い手足は老いを感じさせた。

首から下げられた十字架はいづれかの宗派の信徒であることを表していた。


「それでは神父でいかがでしょう」

少し間があった後「はい」と了承した神父を見て、


――今の間は何だろう。

一瞬暗い表情になった神父を見てスターは少し気になった。


「最後のあなたは……」


――おや、今までノータイムで名付けていた博士が戸惑っている。

振り返りその男を見たスターは納得した。特徴と言える外見が無かったのである。


頭髪は黒、小奇麗にカットされている。背丈も体格も顔も標準的、年齢も判断しかねた。


「リーマンと呼ばせてもらいましょう」

その男は無言で頷いた。



「全員ネーミング終わりましたね、それでは今後について話し合いましょう」





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